事態の急変
話数は少ないのですが、終わりが近づいて来ました。
読んでくださる皆様に感謝を…
それでは13話「事態の急変」をどうぞ
アルガイ家一行と謎の少年、ゼオ・アスタロナとの邂逅から5日後。デューク達5人は再び、森の奥に建つゼオの家を訪れた。コンコン、と扉をノックすると扉の奥からゼオが現れる。
「…………………………何の用だ」
不機嫌な声で問うゼオの格好は前と同じ。漆黒のフードつきローブを纏い、顔はフードによって隠されている。
「何にも用はないが、ゼオ君の事が気にかかってな」
「……………………」
その言葉にゼオは無言でデューク達を招き入れた。中は前と変わっている事は見受けられないが、ゼオと行動しているホーリースライム、クリムゾン・レイヴン、フェンリルの姿が見えない。
「フェンリル達は?」
「……関係ない」
そう言ってベッドの上へと移動するゼオ。そんなゼオにデュークは口を開こうとする。だが、耳を塞ぎたくなるほどの大爆発音が遮った。
アリサは悲鳴を上げ、マリアにしがみつく。ミーシャとセバスは驚きに目を見開く。
「な、何!?」
「落ち着け、ミーシャ。とりあえず様子を」
「私が見て参ります」
セバスが扉に向かって歩きだした。その時、
「待て。来る……」
ゼオが呟いた。言葉の真意を聞こうとするが、ゼオの家の外へと続く扉が勢いよく開かれた。
その先にいたのは20代に見える金髪碧眼のモデルのような体型の女性だった。普段なら美しいであろうその顔が疲れと怒りの表情で歪んでいる。
女性は目を動かして、ゼオの姿を確認すると口を開いた。
「いきなり、すまない。部外者がいるようだが、状況を説明してもいいだろうか?」
男勝りな口調でゼオに告げる女性。
部外者といいのはデューク達アルガイ家一行の事なのだろう。ミーシャがムッ、と眉を寄せる。
「あぁ」
そんな事は気にせず、続きを促すゼオ。それに頷いて、女は言葉を続ける。
「ここから《魔の森》を抜けた西の村に竜種が現れ、人々を襲っている。見た者の証言によると、その竜種はS級ランク《ドラゴン・ゾンビ》だ。しかも、そのドラゴン・ゾンビを操っているローブの男がいたらしい。恐らく、《操術》を使っているだろう」
「なっ……………」
デュークは愕然とする。
竜種はS級ランク以上のドラゴンの魔物の総称で、種類もかなり多く、強大な力を持つものばかりだ。人前に滅多に姿を見せる事はない。そんな竜種のモンスターを人間が《操術》を使い、操っている。
そもそも《操術》というのは武器などの命のない物を自ら触れず、思いのままに操る術の名だ。本来のやり方ではなく、命ある生き物に《操術》をかけ、操るなど禁忌とされている行為。そんな事が今、起きている――――デュークは驚くしかなかった。それはマリアも同じなようで、驚きに目を見開いている。
セバスもミーシャも言葉がでないようだった。アリサは意味がわからず、首を傾げている。
ベッドの上にいるゼオは考えるような仕草をする。
「《操術》か………」
ぽつりと呟いたゼオの言葉に、我に返ったデュークは女に問う。
「こんな状況だと言うのは分かっているが、君の名を教えてくれないか? それにゼオ・アスタロナ君に話した理由も」
女はデュークを見、フゥと息を吐き出した。
「まぁいい。私の名はリーゼ・ウィルガ。冒険者ギルド本部長を務める者だ。そもそも相手に名を尋ねる時は、自分から名乗るのが紳士ではないのか? アルガイ家当主、デューク・メージ・アルガイさん」
「それはすまなかった。リーゼ・ウィルガさん」
律儀に頭を下げるデュークにリーゼはクスッ、と笑い、ゼオに向き直る。
「それで、頼めるか? ゼオ」
ゼオは立ち上がり、ローブを纏っていてもはっきりとわかるほど大きく頷いた。
「あぁ、受ける」
その言葉を聞いてホッ、としたように肩の力を抜くリーゼ。
「ありがとう。私が指名した依頼として、ギルドに出しておく。報酬はこれが終わってからでもいいかな?」
「あぁ、問題ない」
呆然とするデューク達をよそに、そんな会話が繰り広げられた。ハッとデュークは扉に手を掛け、出ていこうとするゼオを呼び止める。
「ちょっと待ってくれ!! 身長からみてもまだ子供のゼオ君にそんな危険な依頼を!?」
その言葉にゼオは振り返り、リーゼはハァと深いため息をつく。
「だから部外者がいる前で話すのは嫌だったんだ」
悪態をつくリーゼ。そんな様子を見てか、デュークに告げられたのはゼオの言葉だった。
「お前らに時間を取られている暇はない。この間にも状況は悪くなっているかもしれないからな」
そうして扉を開き、出ていこうとするゼオの背にデュークは声を張り上げる。
「どうしても納得出来ない!! 君はまだ子供だろう!!」
「それがどうした? お前らに止められる筋合いはない。俺の事を知らないお前らが、俺の事を知っているようなふりをするな!!」
吐き出すように叫んだゼオは地を蹴り、駆ける。呆然と立ち尽くすデュークにリーゼはやれやれ、とばかりに肩を竦め、声を掛けた。
「本当にお前らはあいつの事何にも知らないんだな。まぁ、あいつが戻ってくるまで待ってればいいさ」
言い残し、リーゼも同様に出ていこうと扉の方へと歩み出す。その背に幼く、けれど必死な声が掛けられた。
「待って! リーゼさん、待って下さい!!」
足をピタリと止め、僅かに振り返り、声の主をみるリーゼ。その先にいたのはアリサだったら。
「私は彼に助けてもらいました!! 彼が強いっていう事もなんとなく感じます。だから彼の強さを信じてない訳ではありません。ただ、助けてくれた恩を返したいのです!」
言い切ったアリサは肩で息をする。幼いながらも堂々と言い切ったアリサを見て、リーゼは告げた。
「アルガイ家長女、アリサ・メージ・アルガイ。感心したよ。子供で私に堂々と意見してきたのは2人目だ。いいだろう。お前らを連れていってやる」
セバスに支えられながら、ハァハァと肩で息をするアリサは顔を輝かせる。
「但し、私の守る領域から出たら、命がどうなっても知らない。殺されたくなければ私の守る領域内にいろ、という訳だ。これは条件と言うより、忠告だろう。元々私も行くつもりだったし、もののついでだ。それで、行くのか?行かないのか?」
「私は行きます!!」
呼吸を整えたアリサが答える。リーゼは返事を急かすようにデューク達を見た。
「私も行く。ゼオ君に関わって、助ける事が出来るなら助けたいと思ったから」
「私もよ」
「行きます。執事としても、私個人としても彼が気になりますので」
「私は彼を怒らせてしまった事があった。けれど、彼は許してくれた。彼の事も心配だし、行きたい」
デューク、マリア、セバス、ミーシャの順に自らの意思を告げた。
「わかった。じゃあ行くぞ。“異界への扉”」
リーゼが唱えた。するとリーゼの前に突然、扉が現れる。その扉は綺麗な装飾がされていた。
リーゼが唱えたのは時属性“異界への扉”。この世界に存在する四代元素火・水・地・風のどれでもない特殊属性。リーゼはギルド本部長でありながら、S級ランク冒険者“時空の魔女”と呼ばれ、名高い。当主のデューク、妻のマリア、執事でA級ランカーのセバス、魔術師のミーシャはその事は知っていたが、実際に見て唖然とする。まだ子供であるアリサは興味深そうに“異界への扉”を見つめている。
「来るなら、さっさと来い。閉じるぞ」
唖然とするデューク達を尻目にリーゼは扉を開き、奥へと進んでいく。
リーゼの言葉に慌てて扉の奥へと進むデューク達であった。




