森の中で……(2)
しばらくして、アリサが落ち着きを取り戻した。その目は赤く腫れているものの、どうやらマリアのおかげで落ち着く事が出来たようだ。
そんな中、アリサに近づく影があった。それはゼオ。纏う黒いローブは血に染まり、そのローブの裾から覗く血に濡れた真っ黒な剣身がその存在を見せる。
「悪かった。怖がらせて」
そう告げた。顔はフードに隠れて見えないが、その声は申し訳なさそうにしぼんでいた。
「い、いいえ……」
アリサは目を真っ赤にしながらも首を横に振る。ゼオは振り返った。
「ホーリースライム」
その呼び掛けに茂みからスライムの上位種、ホーリースライムが姿を現す。
「頼むな」
全員の言葉に頷くかのように体を震わせる。そして、“浄化”を使った。
ホーリースライムの体が淡い光に包まれると同時に、血に染まっていた広場が徐々に血が薄れていくように消えていき、血に染まっていたゼオやアリサ、マリア達の服も血だけを消し去るように薄れていく。
「!」
その様子を見届けていたデュークは驚愕する。地に倒れ、絶命している《赤き盗賊》の体が光に包まれ、空気に溶けるかの様に消えていく。幻想的な光景にデューク達は唖然とするしかなかった。
ホーリースライムの体を包んでいた光が消えた時、その広場には血などなく、服が血に濡れていないゼオとデューク達の姿があった。
「ありがとう」
唖然とするデューク達をよそに、ゼオはホーリースライムの元へと歩みより、礼を述べながら撫でる。嬉しそうにホーリースライムはぷるる、と体を揺らして答えた。
未だに呆然とするデューク達の耳にバサッと羽ばたく音が届く。
『主、奴らはどうする?』
羽ばたく音の主はデュークが姿を見せるまでいたC級モンスター“大鴉”。恐らく隠れていたのだろう。空から舞い降り、ゼオの右肩に止まった。一度見たことのあるデューク達はともかく、初めて見るアリサやマリア、執事の男は言葉を話す“大鴉”に驚き、思わず凝視する。
「とりあえずは家に招待する。傷つけてしまった、それの償いだ」
ゼオはそう答えると、今なお唖然とするデューク達に告げる。
「そういう訳だ。来るのなら来い。ただ、俺はお前らを信用した訳じゃないから、余計なことはするな」
淡々と告げ、ゼオはホーリースライム、大鴉と一緒に森の奥へと歩き出す。デュークはハッとなり、戸惑う皆に告げた。
「皆、せっかくだし行こう」
「かしこまりました」
「うん」
執事の男が了承し、一番精神的ダメージの大きかったアリサが頷く。デューク達は森の奥へと消えていくゼオの背を追いかけたのだった。




