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―はじまりの泉-

 ステータスとアイテムインベントリについてのチュートリアル。やはり別に要らないかもしれない。この回は面倒であれば読まなくても多分大丈夫です。

 先程までの無機質な白い空間は、見る影もなくなり、森に囲まれた大きな泉へとその姿を変えてしまった。森の木々や踏みしめる大地を覆う雑草や落ち葉は、現実のものと判別がつかない。そして俺と泉の間には、透き通るような白い肌を月明かりに照らされた美しい女が立っていた。正体は分からないが服装や雰囲気から判断して“精霊”と呼ぶことにしよう。


「ようこそエデンへ、異世界の住人よ。歓迎いたします」

「……どうも」


 精霊は礼儀だたしく、テンプレな言葉で歓迎してくれた。プレイヤーはこの世界では異世界の住人という設定になるらしい。


「わたくしはこの“はじまりの泉”のうつし身、あなたのような異世界からの客人をもてなすために創られた存在です。エデン、すなわちこの世界の法則は、大筋ではあなたの世界と変わりありませんが、いくつかの大きく異なる点について最初にご説明させていただきます」

「お願いします」

「ご不明な点がございましたら遠慮なさらずにお聞きください」

「わかりました」


 NPC相手に意味のない返事を適当に返す。これはVRゲーマー特有の癖のようなものなのであまり気にしてはいけない。



「それではまず、この世界でのあなたの状態をチェックしてみましょう。私の動きを真似して、この世界の創造神の力、"ステータスパネル"を呼び出してみてください」


 そう言うと精霊は額・胸・右肩・左肩の順に右手を動かして十字を描いた。いつの間にか上半身は自由が利くようになっていたので、精霊の動きを見よう見まねで手を動かす。動作を終えると青い半透明のホログラムパネルが目の前に浮かび上がった。パネルには名前、種族、職業、レベル、スキルなどが表示されているようだ。


「言うまでもなくステータスパネルを呼び出す動作はゲームを進行する上で非常に重要なものとなります、よく覚えておいてください」

「はい」


「ではパネルに記された内容について簡単に説明していきましょう。あなたの種族はヒューマン、職業は傭兵ですね。ヒューマンは非常にバランスの取れた種族で、戦闘においては攻防、遠近、実魔のいずれにおいてもそれなりの力を発揮することができます」

「ふむふむ」

「しかし魔力と敏捷性ではエルフやダークエルフに劣り、体力ではドラゴニュートとドワーフには決して敵いません。相手の弱点を穿ち、味方の弱点を補うことによってあなたの能力は真価を発揮するのです」

「なるほど、テンプレな種族設定ですね」

「次は職業の傭兵についてご説明しましょう。傭兵はあらゆる武器の扱いに長け、一般的な職業である剣士や騎士、弓士に比べると少々特殊な職業です」

「ほう」


 だんだんと話を聞くのに飽きてきた俺の相槌(?)に反応することもなく、精霊は淡々と説明を続ける。


「それぞれの技術を極めるのには向きませんが、自由に武器を選択できるということは戦術上の大きなアドバンテージとなりえます」

「なるほど」


「ではスキルについての説明に移ります。この世界には条件を満たすことによって得られるスキルが数え切れないほど存在します。また、あなたの行動によっては、未知のスキルが生み出されることもあります。ぜひ様々なスキルを身につけていってください。習得したスキルはスキルタブに触れる事によって確認することができます。一度ステータスパネルに表示されているスキルタブに触れ、スキルパネルを呼び出し、あなたのスキルを確認してみてください。あなたは既に傭兵の初期スキル『投擲』を習得しているはずです」


 指示に従ってスキルタブに指先で触れてみる。すると大きな枠の左上の隅に『投擲』とだけ表示された新たなパネルが表示された。


「表示されたスキルに触れることにより、その詳細情報を知ることができます。試してください」


 《投擲》【石や武器など、あらゆるモノを投げた際の威力が向上します。】


 という説明文が浮かび上がった。


「ステータスパネルにはこの他にも様々な機能がありまが、すべてを解説すると非常に長くなりますのでヘルプタブを参照して下さい。以上でステータスパネルの説明を終わります。あぁ、ひとつ言い忘れていました。スキルパネルやステータスパネルを閉じる際にはパネル右上端のバツ印に触れてくださいね」


 言われた通りにバツ印に触れると、スキルパネルは引き伸ばされるように線となり、プツリと姿を消した。



「これまでのことで何か質問はございますか?」

「ありません」

「では次にアイテムインベントリについてご説明いたしましょう。アイテムインベントリは魔法の入れ物で、かさばるアイテムを邪魔にならないように収納することができます。ベルトについている革袋に手を入れてみてください」


 自分の腰に目をやると、ベルトに茶色い革袋がぶら下がっているのが見えた。革袋に手を入れてみると、四×四のセルに仕切られたパネルが表示された。x5と書かれたポーションらしきアイコンがあるセルを除いて他はすべて空のようだ。


「ご覧の通りその革袋の中には最大で一六種類のアイテムを収納することができ、現在はポーションが五つ、同種のアイテムとしてまとめてスタックされています。一度ポーションを取り出してから、もう一度袋の中に収納してみてください。取り出す時はインベントリに表示されたアイコンを直接つかみ、戻すときは袋に入れるか入れたい枠にアイテムを触れさせてください」


 インベントリに手をやり、セルに収納されたポーションを掴みだす。ポーションは透明のフラスコのようなビンに入っており、実体化すると少しサイズが大きくなるようだ。


「アイテムインベントリは財布としての機能も備えています。枠の右下にあるコインのマークに触れることでお金を引き出すことができます。アイテムインベントリの機能を果たすアイテムは様々な方法で入手することができますが、一人のプレイヤーにつき一つしか身につけることができません。また持ち主の身体から離れることによってすべての中身を実体化してしまいます。では一度すべてのパネルを閉じてください」


 基本システムはこれだけか、他のVRMMOと比べるとかなりシンプルな作りだな。可能な限りゲームっぽさを排除したいという作り手の意図がうかがえる。



「これまでのことやその他に何かご質問はございませんか?」

「ありません」

「この世界での重要事項についてのご説明は以上です。あなたがこの世界で何をするのも、しないのも、すべてはあなた自身の自由です。どうぞ心ゆくまでこの世界での生活を満喫してください」


 そう言って精霊がニッコリと微笑むと、この空間が姿を現したときと同じように景色が塗り変わっていった。

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