―キャラメイク―
仮設定。
「――く――い」
…………。
「――を――下さい」
…………。
「――たの――――名前を――えて下さい」
…………頭の中に直接リフレインするかのような女の声。あたり一面、見渡す限り白一色の無機質な空間で俺は目覚めた。ただ唯一、俺の身体だけが何も存在しない宙空を漂っている。身体を動かしてみようと試みるが、力が入らない。
「あなたのこの世界での名前を教えてください」
女の声を正確に認識した瞬間、朦朧としていた記憶がはっきりとした。ここはVRゲーム、"へヴンズゲート"の初期設定エリアか。まるで金縛りにあっているかのようなリアルな感覚だ。流石はあれだけ大げさにリアリティの高さを宣伝していただけのことはある。そうそう、プレイヤーネームを決めなくては。うーん……。少し迷ったが自分の本名を名乗ることにしよう。
「あなたの名前はゆう、でよろしいですね?」
「はい」
どうやら今は首から下は自由に動かせないようだ。少々もどかしい。
「あなたの種族をヒューマン、エルフ、ダークエルフ、ドラゴニュート、ドワーフ、ホビットの中からお選びください」
「ヒューマン」
他種族の特殊能力も捨てがたいが、あらゆることにおいて制限の少ないヒューマンの方が、飽きっぽい俺には向いてそうだ。
「あなたの適性を戦士系、魔術士系、一般系の中からお選びください」
「戦士系で」
こういうゲームで一般系を選ぶ奴の気が知れない。
「あなたの特徴を教えてください」
主にステータスを振り分ける為の質問だな。持ち点の合計値はシステム上どう答えても同じになるはずだが、必要のないところに割り振られないようにした方が都合がいい。
「うーん、種類を問わず武器の扱いが得意、とか。あと身のこなしが軽くて視力と勘が鋭い。ついでに動物を手懐けるのが得意でタフガイ」
「敏捷性と体力とは両立できません」
「んじゃ体力の方は妥協します」
「かしこまりました」
もっと細かく設定してもよかったかもしれないがさほど変わらないだろうし、まあいいや。
「あなたの適性に合った初期職業を剣士、騎士、弓士、傭兵の中から選んでください」
「うーん……、傭兵で」
事前に目を通してた説明書によると最初に選べる職業は前の質問の答えによって変わるらしい。傭兵ってなんかちょっと珍しそうだし武器も色々と使えそうだしなんとなく選んでしまった。
「髪の毛や肌の色、瞳の色を変更されますか?」
「やめときます」
俺の地味な顔じゃ派手な色は似合わない。普通の黒で十分だ。
「では最後の質問です、あなたのこの世界での使命を教えてください」
「使命? 何ですか、それ」
「あなたがこの世界で為すべき、最も大きな役割です」
「えーっと……、傭兵王に俺はなる!」
よくわかんねーから適当な事を言ってみた。
「質問は以上で終わります。内容を確認、変更なさいますか?」
「以上で結構です」
「かしこまりました、ではいってらっしゃいませ。この世界の新たなる住人に幸あらんことを」
「お疲れ様っす」
よーし、ようやく面倒な初期設定が終わったみたいだ。女の声が消えると同時に、先ほどまで何もなかった空間が、まるでプラズマディスプレイのようにあっという間に景色を塗り変えていく。
この世界でのVRMMOでは初期設定はあまり重視されていない設定。