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最近、スマトラ沖で地震が頻発している。

光輝や瑞輝は基本的にあまりテレビは見ないが、

情報収集を日課にしている玲は、テレビは勿論インターネットや新聞、ラジオからでも、様々な情報を集めている。

その玲が、食事中にこの地震のことを口にした。

「最近、スマトラ沖で地震が多発しているんです。

びとーさん。これが土の精霊に関係している可能性はありますか?」

 びとーは勿論、瑞輝も玲を見る。その視線に玲は補足した。

「びとーさんは既に封印が解かれている訳ですから、

びとーさんと同じように封印されていた精霊達も

もう自由になっていて不思議は無いと思いまして。

ですから、絵を探すのと並行して、自然災害の多い場所を当たってみるのも、

ひとつの手ではないか、と…。」

 びとーは頷いた。

「言われてみればそうだな。

他はともかく、キャデは力が強い。

下手したら、封印を自力で解いている可能性も否定できない。

地震が多いってのは、少し気になるな。」

 びとーの言葉に、瑞輝が声を上げた。

「俺、ちょっと行ってくるわ!駄目で元々だ。情報を集めてくるぜ!」

 玲は苦笑した。

「瑞輝さん、急に元気になりましたね。」

「当たり前だ!トレジャーハンターってのは椅子を温めて満足できるもんじゃねぇ。」

「まぁ、もし封印が解かれていて、新たなご主人に付いていたとしても、

その素性を確認しておいて損は無いと思いますし。」

 玲が確かめるように光輝を見る。

が、光輝は頬杖をついたまま、ぼんやりしていた。食事にも手を付けていない。

「…光輝さん?」

 玲に呼ばれても無反応だ。

「光輝さん!」

 再度強く呼ばれて、ようやく光輝は瞳を上げた。

「あ、あぁごめん…。何か言った…?」

「光輝、大丈夫か?」

 兄に問われて、儚げな笑みを浮かべる。

「大丈夫さ。最近ちょっと眠りが浅いというか熟睡できないだけで。」

「体調が悪いのでしたら、一日お休みされては?」

 玲に言われて首を傾げる。

「それも考えたんだけどね。子供達の顔を見ている方が元気になれるもんだから。」

「…無理はなさらないで下さいね。」

「ああ。」

 答える光輝を、びとーは眉をひそめて見ていた。

 その夜。またもや光輝は眩暈で床に座り込む。半ば這うようにしてベッドに向かった。

横になって大きく息をつく。

 夜毎、枕元に立つ男。

禍々しいというよりは、神を前にする時のような畏怖の感情が強い。

だが、その存在が夢で生み出されたものであるとしたら…?

眩暈が見せる幻覚だとしたら…?

自分が何かの病気に掛かっている可能性も否定できない光輝だ。

 瞳を閉じる。暗闇の中にあっても、世界が回る感覚は消えない。

 どれだけそうしていただろうか。また、男が現れた。

姿はよく見えなくても、いつもの男だということは判る。その男が囁いた。

「…。」

 いつもは聞こえないのだが、今日は何かが耳を掠めた。

「…な…。」

 だが、それ以上はやはり掴めない。

夢と現実の境界線さえ見えず、そのまま意識も遠のいていく。



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