<8>
<8>
食事が済みびとーも桃の元へ帰った後、光輝は自分の部屋に戻った。
部屋に入った途端にぐるりと世界が回る。何とか堪えてベッドまで進み、倒れ込んだ。
不思議だった。学校では、理事長室にいようが校内を巡回していようが、
眩暈に襲われることはない。気分が悪くなるのは、いつも決まって自分の部屋なのだ。
びとーが妙な波動を感じると言っていた。
そう言われると、単なる体調不良ではなく、
もしかして原因は幽霊かもしれない、と考えるのは安直だろうか。
瑞輝はいわくありげな物を集めるトレジャーハンターだ。
彼は手に入れた物を、物によってはお祓いするが、大抵そのまま持ち帰ってくる。
そして、塔の上階に保管しているのだ。
この塔は、周りを校舎で囲んでおり、
その学校に通ってくる子供達はとても純粋で綺麗なオーラを纏っている。
それが一人や二人ではなく大勢いる為、純粋無垢な力は強大になり、
塔に大きく作用して、
余程強い物以外は呪いの効果を打ち消してしまうのだ。
場の力というのは、それほど影響力があるといえる。
また、保管に当てている部屋によっては、
負の力を制限する為の結界のような魔法陣が施されているところもある。
故に、これまでは異常な事態というのは、殆ど起こった試しが無かった。
ごく最近の瑞輝の戦利品は、炎の精霊が封印されていた絵くらいだ。
しかし、積極的に除霊やお祓いのような行動を取ってはいない為、
過去の物の中には浄化されることなく、時間をかけて、
力をつけてきている呪いや幽霊が存在していてもおかしくはない。
更に、あまり他人には言っていないが、
若くしてこの世を去った母親も、実は瑞輝と同じようなことをしていた。
瑞輝のこれまでの戦利品は全て見せて貰ったが、
母親の戦利品は、これまで敢えて見ようとはしてこなかった。
そしてそれらは光輝の部屋のちょうど真上の部屋、
亡き母親の私室にその殆どが保管されているのだ。
だが、たんなる体調不良を幽霊の仕業にでっち上げているのかもしれないとも思う。
度重なる眩暈によって思考回路まで混乱している自覚もあるからだ。
どれだけ時間が経ったのだろうか。ふと気付くと、ベッドの脇に誰か立っている。男だ。瑞輝かと思ったが、背がもっと高い。玲でもない。枕元で光輝に向かって何か言っている。だが、聞こえない。聞こえない。聞こえない…。
気が付くと、部屋は明るくなっていた。世の中は朝を迎えていた。




