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瑞輝が帰宅し、また四人の食卓に戻った。
瑞輝ひとり増えるだけで賑やかさも倍になる。
「…悔しいなぁ!」
本気で悔しがる瑞輝を光輝は宥めた。
「今回は仕方がないよ。
そのうち売却先が判明するかもしれないし、他の絵も探さないといけないからね。
また瑞輝には動いてもらうことになるよ。」
「とりあえず、できるだけの情報を集めますから。」
玲も言う。
焼酎を呑みながら、びとーが口を開いた。
「まぁ、焦っても仕方ない。
…それより理事長先生、何か変わったこと無いか?」
光輝は口ごもった。あまり心配を掛けるようなことは言いたくない。
「う、ん…。最近、ちょっと疲れている、かも…。」
「疲れている、か。何か、これまでとは違った波動を感じるもんでね。
まぁ、何かの時は呼んでくれ。それが単なる体調不良でもな。」
あまり納得のいかないような表情を見せるびとーだが、その場はそれで引き下がった。
「ちょっと伺っても良いですか?」
そんなびとーに玲が問いかける。
「びとーさんの前のご主人は、そんなに精霊を集めて、何をなさりたかったのですか?」
「そういや、そうだな。炎、雷、水、風、土。それだけの力を集めていたのに、
世界征服を目論んだ訳でもないだろ?
もしそうだったら、歴史が変わっていた筈だもんなぁ。」
瑞輝も首を捻った。
「おやっさん…、前の主人の望みはささやかな、だけど実現の難しいものだった。
…家族が欲しかったのさ。」
答えるびとーは、懐かしむように遠い瞳になる。
「天涯孤独の身だった彼は、事業には成功したが、いつも孤独と隣り合わせだった。
孤児を拾って養子にしたりもしたようだが、下手に財産が有りすぎて、
盗み取られた挙げ句に逃げられたり、命さえ狙われたりっていうのを繰り返してな。
財産に目が眩むことがない精霊を手元に置くことにしたんだ。」
「そう、だったんですか…。」
「俺達が本当に家族になれたか、家族らしくいられたかは判らない。
だが彼は、一度も自分の為に属性の力を使えとは言わなかった。
最後に封印される時は、涙を流して謝っていたよ。
元の世界に戻せなくて悪かったってな。」
「ということは、だ。」
瑞輝が口を挟んだ。
「前のご主人の為にも、びとーはこの世界で幸せになる必要があるってことだな。」
意外な発想に、びとーは目を見開いた。
そんな風に考えたことは無かったのだ。
「それはそうだよ。でも、桃ちゃんと一緒なら大丈夫だね。毎日が楽しそうだし。」
びとーはフッと笑った。自分に向かって手を伸ばす桃の天真爛漫な笑顔が浮かんだ。
「ああ。楽しいよ。」




