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学校の玄関を出ると、隣にプールがある。
檸檬と桃とびとーの三人がプールの横を校門に向かって歩いていると、
桃が檸檬を見上げて言った。
「おにいちゃん、今日もプールあったんだよ!
おかおにお水がかかってくるしかったけど、いっぱいあるいたの!」
「頑張ったね、桃。偉いよ。」
と檸檬が笑顔を見せた時、突然びとーが目の前に立った。
横から覗くと、正面に金髪の少年が立っている。
「フェル兄さん。考え直す気は無い?」
檸檬が思うより高い声で少年は言う。
だが、その美しさも纏う空気も、人間のものではない。
これが雷の精なのか、と檸檬は思った。
「ある訳ないだろう。」
びとーは一言の元に切り捨てる。
「なら、やっぱり実力行使させて貰うよ」
少年の人差し指から電撃が飛んだ。
だが、びとーの作り出す炎の幕にかき消されてしまう。
何度やっても結果は同じ。力の差は歴然としていた。
その時。
「びとー!桃ちゃん!檸檬くん!」
音を聞きつけた光輝と玲が飛び出してきた。
「来るな!」
叫んだびとー。その一瞬が命取りとなる。
プールの水が竜のように立ち上り、三人に襲いかかった。
桃も檸檬も、そして勿論びとーもずぶ濡れになる。
驚きで泣き叫ぶ桃。
庇うびとーは炎の力を失い、髪も瞳の色も、限りなく白に近い灰色になった。
そこに女が姿を現した。
「良い格好ね、フェル。」
「マセリィ。」
雷の精霊は悪戯っぽく笑った。
「僕だけだと思って油断したね、兄さん。」
びとーは灰色に変わってしまった瞳を細めた。
「…そうか、お前等グルだったんだな。」
「まぁね。だって僕独りでフェル兄さんに敵う訳ないだろ?」
雷の精が電気の光を指先からチラチラ出している。
「兄さんは精霊だから死ぬことはないけど、その子達のことは諦めてね。」
「水って電気を通しやすいのよね。」
水の精は自慢げに嗤う。
力と色を失っていてもびとーは笑顔を見せた。
窮地にありながら、相対する二人よりも爽やかだった。
「目の前で桃と檸檬を失うくらいなら、俺も一緒に消滅するぜ。」
雷の精は顔を強張らせた。
水の精も唇を噛む。檸檬が引かれるように顔を上げた。
「…僕達よりその子達を取るのか…。
なら良いよ。兄さんの望み通り、消滅させてあげるから。」
雷の精の指から電撃が飛んだ。
びとーは桃と檸檬を抱きしめた。
「桃ちゃん!」
光輝が叫ぶ。
とその瞬間、人影が割って入った。掌で電撃を軽く受け止めて言う。
「おいたも行き過ぎるとお仕置きだぞ、マク。」
黒髪、黒い瞳のその男は、水の精にも向き直る。
「お前もだ、マセリィ。女の我が儘も、度が過ぎると可愛いのを通り越してえげつない。」
その男の瞳は据わっていた。
「お前等うるさいんだよ!!!人の安眠を邪魔するな!!!」
「「キャデ、兄さん…。」」
雷の精と水の精の声が重なる。
土の精霊だった。
「フェル!お前も同罪だ!
年長でありながら、下の者を静かにさせることも出来ないのか!」
抱きしめられていた檸檬には聞こえてしまった。顔を上げたびとーが
「まずい。寝起きだ。」
と言うのを。
その後、延々とびとーが説教されている間に、雷と水の精は姿を消した。
更に付け加えるなら、水をかぶって大泣きしていた筈の桃は、
いつの間にか土の精に抱っこしてもらって喜んでいた。




