生駒莉緒、現代社会を精一杯生きております 〜 壊れ配信者の前日譚 〜
生駒莉緒、22歳。普通に大学生活を送り、ウェブデザイン関係の会社に何とか就職した、ごくごく普通の社会人。
莉緒の日常は、絵に描いたような「ありふれた」毎日の連続だった。朝は満員電車に揺られて会社へ向かい、事務仕事や作業をこなし、仕事終わりに職場の同僚と立ち飲み屋で愚痴をこぼす程度。
そこには希望や野心といった言葉は微塵もなく、目の前の現実をやり過ごすための乾いた諦念だけが漂っていた。
時には夜の公園でブランコに揺られ、子供の頃の無邪気さを思い出そうと試みるも、すぐに現実の重みに引き戻される。
「あの頃のように無邪気に笑えたらいいのにな⋯⋯」
淡い願望は、常に社会の冷たい現実に打ち消されていた。
自宅に戻れば、ビール片手にパソコンを立ち上げ、趣味のゲーム配信を始め視聴者不在だろうとはしゃぐ。彼女にとって、重苦しい現実へのちょっとした抵抗なのか。
ここでは現実の自分とは違う。もう少しだけ自由で‥‥もう少しだけ本音を語れる自分がいた。しかしその配信も、いつしか「日常」の一部となって、新鮮味と熱狂も薄れていく。
莉緒は、画面越しの小さな承認欲求を満たすだけの行為が、いつしか虚しく感じられるようになっていた。 酒と配信。それは莉緒にとっては現実の退屈さから逃れるための、ささやかな避難場所だったに過ぎなかった。
この物語はそんな生駒莉緒が、ありふれた日常の中で「自分だけの特別」を見つけ出すまでの、ささやかで⋯⋯そして少しだけ心騒がす物語。
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