第12話
「いいですか?今から言うことをよく聞いてください」
戻って来た彼に手短に作戦を伝える。彼は真剣に聞きながら時々頷いている。
「トレヴァーはここの国の警備隊に顔が割れているので、もし声をかけられても焦らず普通に対応してください。私に言及されたら『この令嬢を国にお送りする』と言ってください。絶対に焦らないこと」
「分かった」
トレヴァーはすでに服を着替えており、2人で手分けしてお金や売れそうな物を鞄に詰めたため最後の確認をしていた。この国を出るまでは気を抜くことは許されない。大きく括れば、トレヴァーに課した最初の課題でもある。
「じゃあいつも通り影に入っているから」
「何か気づいたらまた教えて」
「ああ」
猫の準備も整ったようだ。
2人で窓から外に出て街に出る。
静かな街は物音1つしない。
「このまま東門から国を出ましょう」
「…いや、西門の方がいい。この時間に東門から帰られる招待客がいた気がする」
「分かったわ。じゃあ西門から迂回して東に行きましょう」
「東に何かあるのか?」
「…いや、この前ここから西の国は滅ぼしたから東に行った方が次の仕事が見つけやすいのよ」
「あれもロサがやったのか!?」
驚いた様子のトレヴァーにため息をつく。
「それもきっかけを作っただけだけれどね」
「……何と言うか、とんでもないな」
「この程度、その内何とも思わなくなるわよ」
トレヴァーの言う通り、警備が東門に偏っているのか西門の方にはほとんど人がいなかった。声をかけられた場面もあったが、トレヴァーが上手く言いくるめてくれたため問題なく門を通過する。
「…嘘が上手いのね」
「そうか?俺は言われたことを精一杯遂行しただけだ」
なるほど。国の犬とはよく言ったが、これは良い忠犬を得たのかもしれない。
「このまましばらく歩くけれど大丈夫?」
「これでも警備隊の隊長だったんだ。体力には自信がある」
「そう。じゃあ今日は行けるところまで行きましょう」
朝焼けに染まりつつある空を見ながら、私とトレヴァーは歩き出した。
「お兄さん、ちょっといいですか?」
空に星が煌めく夜、路地裏で1人の少女はある男に声をかけた。豪華とまでは言えないが、所々に高級感を感じさせる服装をしている。さらに少女は可愛らしい顔立ちをしており、綺麗な銀色の長い髪、透き通った紫色の瞳を持っている。
「なんだ?」
男はぶっきらぼうに返事をした。彼が足を止めたことに気を良くしたのか、少女は嬉しそうに微笑む。
「お願い事があるの」
手招きをして近づいてきた男性の耳元に口を寄せる。
「あのね、私が知った秘密を買い取ってくださらない?」
驚いた顔をして固まる男性に少女は優しく微笑んで言葉を続ける。少女の声はとても甘く、まるで砂糖菓子のように溶けてしまいそうだ。男性はゴクリと唾を飲み込んだ。
「それはどういう意味だい?詳しく教えてくれないか?」
少女はその問いを聞いて妖艶な笑みを見せる。そしてゆっくりと口を開いた。
「ここから東に行ったところにある国の、悪い秘密知りたくないですか?」
「ほぉ」
「私そこから逃げてきたの。偉い人が持っていた書類もあるからそれもあげるよ」
折りたたんだ紙を見せながら、少女は小さく首を傾げた。
「お兄さんなら、この秘密いくらで買い取ってくださる?」
男性は少女を見つめて口を開いた。
これにて第1章は完結です!
まずはここまで読んでくださりありがとうございます。
次回から第2章が始まりますので、ブックマークをお忘れなく!
次章では新キャラもいますので乞うご期待!




