異世界なのに気付かない!
「つまんね〜〜」
流行のゲームは一通り遊んだ。全部飽きた。
特撮を撮っていた俺だったが、上手くいかず、ズルズルと26歳になった。
カレンダーを見ると、今日は5月5日。こどもの日だ。通りで外が騒がしいわけだ。
そういえば、今日で引きこもり生活6周年だな。
謎にある行動力だけ一丁前の俺は、すぐに外へ出た。
ケーキとクラッカーだったな。
引きこもり6周年祝いをするため、ケーキとクラッカーを買った。
帰り道、山道を歩き、車道に出た。
「ケーキいくつも買っちゃったなー」
そんな事を呟いていると
キキィー!!!
アスファルトを擦る音、鉄の塊、光が俺を包んだ………
「だ……れ?」
金髪の女の子が俺を覗き込んでいる。
どうやら、しばらく寝ていたらしい。
体に痛みはない。
「確か車に轢かれて…って君こそ誰?」
「私は上級剣士のルミィ・レガダ!!」
「剣士…??」
確かに物騒な大剣を背負っている。
「で、あなたは?」
「俺は歴木シュウ」
「シュウ?聞かない名前ね。味方じゃないわね。切り捨てごめん!」
ルミィはそう言って、突然俺を切りつけた。
しかし刃は通らず、俺の首で止まった。
「危ないだろ。こんなもん振り回して〜」
大剣を手で払いのける。
「なにー!?何故通らない!」
慌てるルミィ。宙返りをし、後ずさる。
「あのな、大人を馬鹿にするなよ」
「あなたさては上級魔族ね。これでも涼しい顔をしていられるかしら」
青白く発光するルミィ。辺りに風が吹き、草木がざわめいている。
「蒼天・白」
轟音と共に、斬撃がシュウ目掛けて飛んだ。
「すごい風だ。涼しいね。」
「は…??」
目を点にするルミィ、膝から崩れ落ちる。
「そうだ。俺が持ってたレジ袋知らない?」
「レジブクロ?」
「ぐちゃぐちゃになってなきゃいいけど…」
「魔族の武器など誰が教えるものか!」
「どこにあるか知ってるんだね」
ルミィがチラッと見た木にレジ袋がぶら下がっていた。
「あ」
「あ」
「かけてくれたんだな。ありがとうよ」
レジ袋の中を確認する俺。
ルミィは剣を構えている。
「武器とかじゃないって」
箱を開けると、ケーキが崩れていた。
家まで持たないなこれ…
これ以上崩れるのも勿体ないので、ショートケーキを食べた。
ルミィがとろけるような顔でこちらを見ている。
「いる?」
「魔族の食べ物なんているか!」
「ほんとに?」
ルミィがよだれを垂らしている。
「まだあるけど、要らないなら食べちゃおっかな〜。美味しそうなチョコケーキだな〜」
「よこせ!魔族の食べ物まで熟知するのが私の仕事だ!」
「はい」
ルミィがチョコケーキを頬張る。
「欲しかったんでしょ。」
「べ、べふに!?」
俺は純粋な疑問をぶつけた。
「その格好、映画の撮影か何かか?」
「そうだ!エイガに囲まれてるんだった!」
「エイガ?囲まれてる…?」
木陰から緑色で筋骨隆々の化物が出てくる。
「シュウ、下がってなさい!」
さっきまで俺に斬りかかってたのに…
エイガが勢いよくルミィに飛びかかる。
ルミィは大剣で爪による斬撃を防いだが、勢いに押される。
「力が強すぎる!」
「へぇ〜よくできたコスチュームだな」
「見てんじゃないわよ!逃げて!」
「やっぱルミィって女優だったんだな。」
「は?」
吹き飛ばされるルミィ。
「このエイガ…一筋縄ではいかないようね」
「俺も手を貸そうか?」
「シュウ、魔法も知らないんでしょう!?」
「魔法ぐらい知ってるよ〜。火とか出すやつでしょ?」
「もしかして、紅蓮が使えるの?」
エイガが咆哮する。
「このままだとまずいわ…2人とも…」
シュウはレジ袋からクラッカーを取り出し、エイガに向けて放つ。
エイガが少し怯む。
「シュウ、もしかしてあなた…噂でしか聞いたことなかったわ…」
「こんなんでいいのか?確かライターが…」
シュウは続けて、ロウソクにライターで火をつけ、エイガ目掛けて走る。
エイガが鳴き声をあげ、溶けていく。
「私たちが探し求めていた勇者…」
異世界に転生したのに、勘違いに勘違いを重ね、成り上がるのはまた先の話‥…
読んでいただき、ありがとうございます。
ラノベ?を一話も読んだことないまま書いてみました。
何か反応があれば、続きを書いてみようかなと思います。