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1−1

なんで私は百瀬さんにカラオケルームに連れられてきたのだろう。


いくら考えても答えは見つからず。


かといって百瀬さんに質問するわけにもいかず。


ムスッとしている百瀬さんに緊張しながら永遠にも感じる時間を過ごしていた。


やがて、百瀬さんがため息を吐くと口を開く。


「違う。違うから。違うんだからね!」


身を乗り出してそう言う百瀬さんに戸惑ってしまう。


なにが違うんだろう。


百瀬さんが言っていることがいまいちわからず。


「あーもうバカバカバカ!なんで変装セット外しちゃうの!あたしのバカァー!」


と、叫ぶ百瀬さんにますます混乱してしまう。


そういえばなんであんな格好をしていたんだろう。


そんな疑問が浮かぶけど、やっぱり質問できず。


(うぅ…。かえりたいよぉ…。)


そんなことばかり考えてしまうのだけど。


「あんたそういう漫画好きなの?」


「え、は、はい…。す、好きです…。」


百瀬さんからの突然の質問に素直に答えてしまう。


絶対馬鹿にされる。


普通の漫画ならまだマシだったかもしれない。


だけど陽キャの百瀬さんに百合系の漫画が好きとか絶対馬鹿にされる。


後悔してももう既に遅く。


今すぐにでも消えてなくなりたい。


そんなことを考えていると。


「へ、へぇ〜。そ、そっかぁ〜。」


そう返す百瀬さんをチラッと見てみると口元に手を当てニヤニヤしている様子で。


「で?なんでその漫画を選んだの?」


と、さらに質問をする。


「え、えっと…。さ、最初は絵が上手で手に取ったんですけど…。よ、読んでみたら内容がすごく良くて…。そ、それで毎巻買うように…。」


私が愛読している今瀬もも先生の百合漫画は。


自分に自信がなく暗い主人公の女の子が、同じクラスの明るく自信に満ちたヒロインは共通の趣味を持ち、徐々に仲良くなりお互いに惹かれ合っていくお話で。


前の巻は仲良くなった二人があるきっかけでケンカ別れしてしまったというところで終わるというラストだった。


なんでそんな質問をされたのかわからなかったけど、もうどうにでもなれと考えると素直に答える私。


「わかるー!二人の関係がちょーいいよね!それで前の巻のラストがすっごい気になるとこで終わってさー!あの後どうなるんだろーって!」


「そ、そうなんです!だから今日新刊が発売されるから急いで買いに来たんです!」


お気に入りの漫画に共感してくれる人がいて嬉しくなった私は、思わず早口で答えてしまい恥ずかしくなったのだけど、ふと気になることがあった。


なんで百瀬さんも知ってるの…?と。


百瀬さんの方をチラッと見てみると、すごく嬉しそうな表情だったのだけど。


「うんうん!あたしもそっこーで買いに…。」


そこまで言いかけると、表情は段々と焦りに変わっていき。


「ち、ちちちちちがうから!あたしは別にそういうんじゃないから!」


と、必死に否定したかと思えば。


「そうだよ!あたしは百合漫画が大好きなの!なに!?わるい!?」


と、自分から白状するとなぜか怒られる。


「あーもう!こんなんだからバカって言われるんだよぉ…。」


今度はすごく落ち込み始めると。


「でもでも!あんたも百合漫画好きだし!もうここまで知られたんだからいいよね!」


と、開き直った百瀬さん。


「ねね!もっとさ!百合漫画について語ろーよ!」


身を乗り出した百瀬さんはすごく嬉しそうで。


私も出来たら話してみたい。


でも、話すのが苦手なのに上手く話せるかな…。なんて迷っていると。


「むり!我慢できない!話すわよー!」


そう言うと、百瀬さんはどんどん話し始める。


おすすめの百合漫画の話。


どんなシチュエーションが好きか。


どういうカップリングが良いかなど。


最初は百瀬さんの話に相槌を打つだけだったのだけど。


少しずつ自分でも話し始め。


段々と楽しくなってくると、自分でも驚くくらい饒舌に話せるようになっていた。


それからしばらくして、語り合いは終了する。

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