ニセモノの流れ星
さぁ、今日も夜空を見上げると星屑が尾を引き、流れ星となって空をかけます。
消え行く前に願いごとを言えたら、きっと叶うかな?
「ないない、だって流れ星じゃなくて私だもの」
フカフカの雲に横たわり、輝く青いワンピースを来た女の子。
目を閉じて、これからも寝入りそうでした。
時々、風にのっては漂うものだから、アレは流れ星だと言う人も居ます。
けれど、あまりにもゆったりとした動きに目を細める人もいました。
「こうして眠ってるだけなのに、どうして願いを託すのかしら?」
でもね。
どうせなら、願いごとを言ってみようかと皆が言葉を重ねます。
どうか、世界が平和になりますように。
武器を持った男がそう願いました。
「私には手に負えないわ」
どうか、我が子がすくすと育ちますように。
赤子の頬を撫でる女がそう願いました。
「頑張って」
どうか、手術が上手くいきますように。
ベッドの上で横たわる少女がそう願いました。
「お医者様に頼んでね」
どうか、失くしたものを乗り越えられるように。
家族と離別した少年がそう願いました。
「応援するわ」
気ままで勝手、冷たく雲の上で願いごとを突き放します。
だって、女の子には彼らの願いごとを叶える力なんて有りません。
ただ空の上をたゆたうだけ。ゆっくりと、ゆっくりと。
今日も平和な空。
そのはずでしたが、何だか様子がおかしいみたいです。
いつもよりも騒がしく、空がキラめいていました。
それは目を閉じていても、変わりません。
その眩い光は、瞼一つでは防げそうにはありませんでした。
「あら、本物のおでましね」
夜空が隠れるほどの、数えきれない流れ星。
皆が一応に目を輝かせます。
いくつもの願いが流れ星にのって飛んでいく。
さぁ、もう練習は充分でしょう。
どうか、あなた達の願いが叶いますように。
女の子はそう小さく呟くと、深い眠りにつきました。