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幼狼


狼になりたくてなったんじゃない。ならないと殺されていたからなっただけだ。


毎回毎回、次は死ぬ、と思ってた。だがまだ僕は生きている。

学校の帰り、2−3日に一度は、クラスの奴らを中心にした奴らに集団暴行を受けている。


今日こそは見つからないように、と、トイレの窓から上履きのままカバンも持たずに校舎を出た。

そして、細い路地ばかり選んで駅の方に向かう。

そのとき、クラスのやつの声がこの細い路地の向こうの大きめの路地の方角から聞こえてきた。僕のことを話しているようだ。どうやっていじめるか?を話しているのか?と気になって、壁に張り付きながら近づく。


「なぁ、あいつ、まだ死なねぇなぁ、、加減が難しいんじゃねぇか?ホントかよ、あの、家に帰って寝てそのまま死ぬって話はよう。」

「ああ、俺も嘘臭ぇと思うけど、伊集院クンに逆らえるか?」

「・・・・でもよぉ、、、」


その後、奴らが何を言っているのか、全く聞こえなくなった。

殺すつもりでやっていたのか、、しかも実験みたいに?試しに?伊集院、が、、黒幕で?

しかし聞いたことがある、過労で家に帰って寝てそのまま起きなかったとか、事故で病院行ったが、検査しても何もないので返され、家で寝てそのまま起きなかったとか。それを狙ったのか?そんなことを故意にできると?その実験に?



伊集院高嗣いじゅういんたかつぐ、G学園中等部1年2組のクラス委員長。生徒会にも属している。2年から生徒会長に立候補できるので、来年は生徒会長だと伊集院の周囲はおだてている。巨大資本家の一族の御曹司。

この、G学園中等部でもっとも家族が力を持っている子供だ。

初等科から権力を振り回すことが好きで、しかも自分でやらずに周囲にやらせるのだ。

誰も逆らわない。生徒は、皆その親たちから「逆らうな」と厳命されているから。

今そのいじめという虐待を受けている少年の両親も、少年に「伊集院に逆らうな」と厳命している。G学園は皇室の子女も通うハイソと呼ばれる学園だった。

この学園に入るには、身分という資格が必要だった。



少年の名は、小島巌こじまいわお。父はそれなりの資産家で地方の名士の跡取りだ。父は自分でビジネスを起こし、首都に出てきている。当然父はイワオを首都のG学園に入れた。


イワオは思う。

僕のいじめには伊集院が関わっている素振りなど僅かにも見せず、逆にいじめる者達を注意するほどだった。

全て芝居か、、

初等科の時は、周囲にわかっても気にせずに他の者を使ってやっていた。

中等部になると、今度は自分が黒幕だとわからないようにやっていく、という訓練を、している、のだろう。その訓練のために僕が殺されるのだ。それも事故死か病死扱いにされ、決して誰も罪に問われることは、無い。

そういうことか、、


ーー

駅から離れた街道沿いのひなびたショッピングモールにあるネットカフェ。

そこでPCを使い、イワオは調べた。調べまくった。

夜になると親に電話を入れ、近くあるという抜き打ちテストに備えて友人宅で徹夜で勉強会をすると言った。

夜通し調べまくった。

翻訳サイトを経由することも多く、手間、時間が掛かってしまった。


翌朝早くに、職員室の連絡用メール宛に「昨日クラスの者達から受けた暴行で体調が優れず、今日は学校を休みます」と送る。教師も下手にうちに連絡できないだろう。

伊集院達も「今頃結果がでてきたか?」と期待するだろう。させておけばいい。


流石向こうの人たちは仕事が速い。

向こうから帰ってきたメールを開けていく。


イワオが調べたのは、アメリカで日本の中学と同等の扱いを日本で受けることができる、つまり、向こうでその学校を卒業すれば日本の中学を卒業した資格になる、という学校。

そして、寮がある所。更に調べていくうちに、卒業生達のことも学校のHPに書いてあったので、どのような卒業生がいるのか?も、学校を選ぶ基準になった。

「血統」よりも「成り上がり」が多いところが良い。


そしてエージェント。手続きを全てやってもらえるのか?評判に言及しているサイトを見つけ、評判の確認をして選び、そこを使うと最も早くていつから編入できるのか?までもメールを送り訊いた。外国語の実用性向上は数をこなすしか無い。チャンスがあれば使え。チャンスがなければ作って使え。と小学生の時から受けている家庭教師に聞いていた。


イワオは、英語に関しては少し心配だが、それほど心配してなかった。

小学校の低学年からパソコンにかじりついて、ゲームよりもSNSなどを好んだ。

そして、外人達と英語でやり取りをしはじめていた。

いつの間にか、ニュースは日本の新聞やテレビよりもネットの英文記事を好んで読むようになっていた。

会社にもよるが、イワオのよく見るニュースサイトはそれらの記事が論理的文章になっており、ソースもしっかり明かしているのが好感持てた。そのような記事の文章は読みやすく整っている。それに慣れてしまうとどうしても普通の新聞とかテレビとか見る気がなくなる。


そして、イワオの学力は、好き嫌いによって差が大きいが、よほど学力が高い学校でなければ入学できるレベルではないか?と自分で思っている。

更に、

現地の者たちの多いSNSで訊いて見ると、イワオが見つけた学校やエージェントに対しては客観的で肯定的なレスをくれる者が多かった。


日本人生徒のほとんどいない、寄宿制中高、そして大学まである、海軍基地の街の学校を選んだ。次候補は西海岸の似たような学校。だが少し日本人がいる。その分評価を下げたわけだ。イワオは完全アウェイが望みなのだ。


学校側は受け入れ可能だという返事。

エージェントからは、日本側で出す書類だけ送ってくれと。原本が来るのに日数かかるので、先に書類の写真を撮って送ってくれれば、原本が着いたらほぼ終わっているくらいにしたいとのこと。見事に合理的である。当然、ビザを取るのに必要な書類も全て含まれている。それらのメールでわからなくて調べた単語は無かった。知らなくても見当が付き、そのまま読んでいくとその見当であっていたのが判る。


海軍基地の街。米兵も多いだろう。昔の敵、日本人に思うところが在る年寄りも多いかもしれない。勿論、そういうところだからこそ、選んだ。

この、今の腐り切ったゴミしかいないところよりも、わかりやすい敵のほうがよほど好ましい。そうゆう所で、自分を鍛えたい。とイワオは心底思った。


その晩、イワオは父の書斎に行き、直談判した。

伊集院に逆らうことはしない。だから、学校を辞める。日本では伊集院が何かしてくるかも知れないので、いっそのことアメリカに渡る。学校も書類も全て手配した。

あとは、お父様の許可をいただければ、全て丸く収まります。と。


イワオの父はバカではない。それがイワオに幸いした。

イワオの言う事が事実であろうがなかろうが、イワオを強制的に今の学校に行かせても良いことはないことくらい理解できる。しかもイワオは転入先まで自分で見つけ、手続きもほぼ準備万端になっている。少しでも脳がある者であれば行かせることを選ぶ。子供が自分で大きく伸びるチャンスなのだから。


翌日からイワオはG学園を休み続け、その間にビザ取りに行った。急な転校なのでできれば早くしてもらえれば大変嬉しい。と、大使館の米人にお願いした。

この場合、現地採用の日本人ではなく余裕がありそうな顔つきの米人にいうのが良い。

そういうこともSNSでレクチャーを受けていた。長い付き合いの者が多く、中にはホントに米人もいる。彼らは、幼く、素直な、でも論理的思考ができるイワオを好ましく暖かく見守ってくれているのだ。


向こうのSNSを使い始めた時、最初はイワオのほうが警戒しまくりだった。それまでは日本のSNSのみだったので、どんな一言を悪意に取られるかわからないから、と。

そういう者も向こうにもいることはいるが、タイプが違う。自分の考えと違う場合にそうやられると次第にわかった。向こうのサイトで、理解不能な感情(衝動)でいきなり悪意をぶつけて来る者は今まで見たことがない。


更に、被害に遭ってる者を援護する者が多いのに驚いた。更にまた、被害者ヅラする者には容赦ない、ということも知った。何もかもが全く逆の様相で、イワオにとっては信じられないほど正しさが活きている空間だった。


そして、ひと月後、イワオは試験を受けに一人でアメリカに渡った。


ーー

イワオの入った学園には確かに日本人生徒はイワオ一人であった。

が、教師に日本人がいた。元日本人というべきか。

面接の時に見た顔だった。だが、そのときは彼は何も喋らなかった。彼を日本人だと思わなかったイワオはさほど気にしなかった。

試験は難しくなかった。この学校の授業についていける程度を確認するための試験なのが見て取れた。

試験の翌日、イワオの編入学が認められた。すぐさま制服や教科書等を学校の購買に注文し、入寮の手続きを取った。合格したので正式に就学ビザになる。それに関しては、エージェントが全てやってくれるのでイワオはパスポートをUPSでエージェントに送った。


その翌日に寮に入れたイワオ。2人1部屋の寮だが、同室の者はいない。明日からクラスに入る。そしたら知人くらい作れるだろう。ほとんど物の無い、安ホテルからの引っ越しもすぐ終わり、イワオは学校の購買に注文していた制服以外のものを受け取りに行く。制服は数日かかるが、その間は今までの制服もしくは普通のブレザーでよいとのことだ。


購買で教科書などを受け取っていると、買い物に来ていたほかの生徒に声を書けられた。

勿論英語だ。

「よう、君は編入生か?どっから来た?」高校生に見えるが、、米人だからどうだろう?

「日本から来た。中学1年に入った。イワオ・コジマ、だ」

「俺は高校1年のサミュエル・マクマソンだ。サムでいいぜ!」

「うんサム、僕のことは、、なんて呼ぶのが呼びやすいかな?」

「いわーお、、IWAO、ワオ、だな」

「・・・・じゃ、ワオと呼んでくれ」ワオキツネザルっていたよな?

「OK.昼飯食べたか?まだなら食堂行こうぜ?案内するよ」

こういうふうに声かけてくれる者がいるんだな。

これだけでも、来てよかった。と思うイワオだった。


イワオは人付き合いが得意ではない。だからネットや趣味にハマった。ネットでも日本語のネットは悪意が多いと感じた。なので自分でもわかりそうな英語のサイトを読み始めた。

英語は翻訳サイトがあるので、そこそこの文意はわかる。

ただ、文法や慣用句の使い方などがわからないと、相手の意志はわからない。

なので、英語の映画で日本語の字幕があるものをネットでよく見た。

更に、短い文節のニュース記事などを読んだ。

都合よかったのは、父がイワオに家庭教師を付けてくれていた、英語の。小学校に入ってからずっとだ。「大学くらいは世界から選べ」と父に言われたことがあった。

父のビジネスは外国との付き合いも少なくない。そこらで苦労したのだろうか?。

皮肉にもそれは中学からになってしまった。


食堂でサムは友人を紹介してくれた。やはり高1のマックスとコナンが男子。そして女子のキャリー。

「俺達はクラブを作っているんだ。面白いぜ?」とマックス。


射撃部だそうだ。地域の大会にも出場しているとのこと。

クラブとしては前回が初めてだと言う。

「クラブもできたばかりだからな。俺達が作った。」サム

「中学の子も入れていいんだっけ?」キャリー

「あー、フットボールのほうには中等の子が居たとおもったけどな?」マックス

マッチョなマックスにはフットボールの部に友人がいるのでたまに行っているそうだ。

「いんじゃないか?中等の頃から教えれば、高等に来たら上手くなってるぜ?」コナン


「それじゃあ、ワオ、もし興味があったら少しやってみないか?」サム

「何遠慮がちにいってんのよ!ワオ、あんたまだ友人いないんだから、ここで4人、親友ができるのよ?どーするの?!」キャリー

「は、ひあ、はい、、お願いします、、」イワオ


あーあ、ワオ、怖がっちゃってるよ、、。

トラウマになるんじゃねーか?

大丈夫だろ?日本から一人で来たって先生言ってたぜ?

まじか?そんなガッツあるんならキャリーがいても大丈夫だな。

あ?何だって?

・・・・・。


クラスに入る前にクラブが先に決まった。

日本では中学生には不可能な射撃クラブ入部。

射撃大会では大口径の部もあるそうな。


翌日、イワオはG学園の制服で登校し、職員室に行き、教師と一緒にクラスに入った。

自己紹介をし、席が決まり、授業を受け、休み時間には周囲の者達が話しかけてくれた。

昨日のことがあったからイワオもかなりリラックスして話せた。

昼休みにはサムが来て部員名簿に名前などを書かされた。親の住所や連絡先も。

「銃を扱うからな、もし事故があったら連絡先が無いと困るだろう?」サム

それはそうだと納得した。クラスの者達は、イワオがもう部に入っているのか、と驚いた。

「俺達の部が魅力的だからな!」とサム

皆上級生のサムにもかる口を叩く。

「んじゃ、借りてくぜー、」と、イワオはサムに誘われて皆が待っているという食堂に向かった。


転校初日から数日は何かと忙しいのかな?とおもっていたが、何も無く下校時。

何も無かったら食堂に来てなー、と昼の時にサムに言われていたので、行く。

「んじゃイワオが来たし、いこうぜ」サム

皆で外に出て、バスに乗る。イワオはそのままついていく。


シューティングレンジ。

へぇ、、始めてきた。というか、見るのも初めてだ。イワオは皆にくっついて中に入る。

皆が受付の人と話している、それぞれバックを受け取っていた。それと、サムがイヤマフとゴグルを受け取っていた。「じゃ、いこう!」とサム。


奥に入ると射撃場所。

「今日はあまり時間がないからざっとね。土曜にしっかり教えるからね」とキャリー。

最も重要な銃の扱い方。

リボルバーでもオートマチックでも、弾倉に弾を込めるもしくは弾が入った弾倉を銃にセットするのはレンジ(ブース)に立ってから。それまでは絶対に込めない。

また、ブースでは銃口は常に的の方向に向ける。

引き金に指を駆けるのは撃つ準備が全て整って銃を的に向けてから。

ミスファイア(不発)があった場合、そのままの姿勢で10秒は待つ。その後、ゆっくりと落ち着いてスライドを引き、弾丸を抜く。何があっても銃口を覗かない。分解し銃身だけになれば覗いても良い。

持ち歩く時は、オートの場合は必ずスライドを引きロックしておく。当然マガジンは刺さず、銃口は下に向ける。

リボルバーの場合、弾倉から弾を抜き、その弾倉を横に出したまま、そのフレームの空いた場所に指を掛けて持つ。

ボルトアクションライフルの場合、弾倉を抜きボルトをひいておくこと。

オーマチックライフルの場合、弾倉を抜きボルトを後ろにひいたままロックしておく。


いつでもどこでものルール。

銃口を人に向けない。その瞬間に自分が撃たれると思いなさい。銃口をひとに向ける時は相手を撃つときだけ。

すぐに戦闘に入る時以外に、薬室に弾を込めておかない。安全装置は絶対ではない。毎年安全装置の不具合で何人も死んでいる。その何百倍も不具合があるということ。

シューティングレンジ外に持ち出す場合、必ずケースに入れること。ハンドガンでもケースに入れること。特にハンドガンはケースに入れずに持ち歩くと逮捕される。許可証が必要だから、探偵業などの。


キャリーはそれらの事を、実銃を使って教えてくれた。

それから、ケースから取り出し、弾を込め、ブースに持ち込み、セットし、構え、撃つまでの一通りを見せてくれた。撃ってから標的を呼び寄せ、取り替え、戻す事まで。

そしてしまう時、銃からマガジンを抜き、スライドを引き、チャンバーから弾丸を抜き、スライドストップを掛け、銃口を下に向け、キャリーは銃把ではなくボディを持って後ろのケースを置いてある場所に戻り、ケースに詰める。そのとき、マガジンから弾を全て抜いていた。

「バネが弱くなるとか、ジャムしやすく成ると言われているので、念の為、ね」

とキャリー。


パタンとケースの蓋を閉め、「おわり。んじゃ、ワオ、はじめからやりましょう」と。

僕はゆっくり思い出しながら、はじめた。

まずマガジンを取り出し、弾込め。

次に本体取り出しスライドを引いてロック。

ボデイを持って、左手にはマガジンを持って、ブースに。ブースの台に拳銃とマガジンを起き、イヤマフをする。ゴグルは最初からしたまま。

標的を確認し、OK。右手に銃を銃口を標的側にして持ち、左手にマガジンを持って銃の握の下から差し込む。カチッ、と音がした。念の為にマガジンの尻を叩き、右腕をあげて左手を添えて銃口を標的側のまま、スライドロックを外す。ガチャリ、、これで装填されているはず。そしてロックはセーフティにもなっているので、安全装置も解除されている。


銃口を標的に向け、スライド上部の照門と照星を合わせる。

引き金に指をのせ、照準確認後に引き金を引く。

ガン!

音はそれほどしない。イヤマフのおかげか。けど、拳銃の先を下から金槌で軽く叩かれた衝撃。

また照門と照星を合わせる。

引き金を引く。

10回繰り返した。


RUGER LCPⅡ

22ロングライフル弾10発、弾倉に入る。撃ち終わるとスライドは後ろで停まる。

弾倉が入っていないと引き金が引けない。

3インチ無い銃身なので基本護身用の銃だ。これだけ付いて、新品で369米ドル。

弾も安いので、競技に使うのでなければとても”お得”な銃である。

ただ、銃が小さいのでグリップも小さく、小さめの手でなければ小指ははみ出る。両手でがっちり掴まないと、銃身が短いのとあいまって近くでも当たりにくい。


もう少し狙いを確かにしたいのであれば、同じスタームルガー社のマーク4が良いだろう、とサム達は言う。5インチ弱の銃身。スライドではなくボルトタイプ。ボルトを引くのに親指と人差し指で引くので少し握力が必要。こちらはグリップは大きめなのでしっかり握れる。スタームルガー社の、今の2つ。その両方共初期型は撃ち終わってもスライドが止まらならなかったり、セーフティがなかったり、など不都合なモノが多い。幾度か改良されて良くなっていっているという。


基本的に銃身が短いほうが発射音が手前に響く、射手に煩く聞こえる。

キャリーは手が小さめなので4本の指がグリップにかかるので「これでいいのよ」だそうだ。


標的をコントロールするスイッチを押し、手前に引き寄せる。

散々な結果だ。一つ穴が開いていた、左端下ぎりぎりに。

「この銃で最初であたっただけましね!」とキャリー。

「ワオ、お前はマーク4買うのを勧めるぞ?」とサム。

うん、そうしよう、銃身は長めでないと面白くない、と僕は思った。


皆撃たなかった。

僕が銃を買う気になったので、見に行くと言う。ただ、

「今日は変えない。未成年者は保証人というか代理購入者が必要だ。誰か大人に代わりに買ってもらわないとな。」とサム。

「うーん、、アメリカには一人で来たからなぁ、、、入学したてだし、、、」

「まぁ、そう焦らずに行こうぜ!買うまでは俺のを貸してやるから。」

サムは幾つか持っているという。最近は22口径を使わないので、それをここに預けておくから、俺らと来た時に使うようにすればいい。と言ってくれた。


皆、拳銃は父親に買って貰っていた。使うのはこの射撃場のみ。ここに預けておいて、使い終わったら必ずここにまた預ける。という約束を父としているという。約束を破ったら?と訊くと、皆怪訝な顔。「破る必要ないだろ?自分の信頼を落とすようなことするわけない。」と皆が言った。いろいろ訊くと、安易に約束はしないが、一度しっかりした約束をしたら破らない。あたりまえだろう?という。ここも向こうとは全く違う様だ。この様子じゃ嘘も簡単にはつかないんじゃなかろうか?

俺、生まれる場所間違えたんだろうな、とさえその時思った。


それから22口径のライフルを使ってみる。皆やはりライフルも預けてあるという。

「俺のは安いやつ。でも入門用には充分で、、、見てろ?」とコナンが銃を、、、真ん中から2つにばらした。

「これは、そういうライフルなんだよ。しかも、持ってみな。」

前の部分と後ろの部分を持つ。軽い!

「だろう?だから、、このオマケの安っぽいケースにしまうと、こんなに小さくなってしかも軽いんだよ。」

信じられなくて声が出なかった。ルガーのオートマチックライフルだという。


コナンのルガーが気に入ったのでライフルを買う時は同じのにしょうとおもった。が、どーせなら違うのにしなよと皆が言うので、んじゃ何が良いか?安いものね、と希望を募った。ブローニングで日本製のがあるという。でも中古でルガーの倍の値段。

ただ、すごく精度が良いという評判だという。

「中古で出ているのはバレルがハズレの場合もあるので、試射してから買うこと」と言われた。どうせ買う時は皆付いてきてくれるんでしょう?と聞くと当然だと答える。


その日部屋に帰ってから家計簿とにらめっこで計画を建てた。ハンドガンはルガーとして、ライフルは900ドルとする。それを使ってしまったら、今後の予定をどうすればいいか?。で、年間計画建ててたら、父が余裕を持ってくれていたことがわかった。贅沢などしなければ、まぁ無理せず暮らせていけそうだということがわかった。



それから週末はサムと一緒にレンジに通った。サムが付き合えない時は、キャリーかコナンかマックスが付き合ってくれた。キャリーと来た時は、キャリーは自分の銃を使わず、主にサムの22口径を使っていた。

「だって私の銃は当たらないんだもの!」

買い替えなさいよ、、。


結局後日イワオが銃を買う時にキャリーも買い替えた。キャリーはワルサーPPKs。3.3インチ銃身。弾倉は10発装填。新品で349米ドル。スタームルガーより安い。

他にも小さいハンドガンはあった。22以外に32ACPとかまで。でも同じボディでも22を使っておけば間違いなく長持ちすると皆言った。

スタームルガーは22口径専用。PPKsは32ACP用を22口径にしたものだから、ワルサーのほうが丈夫で長持ちするというわけ。だが、スタームルガーで長く使ってクラック入ったとかまだ聞いたことがないという。

「どんなガンでも必ず壊れるときが来る。避けようがないことだ」とサムは言う。

なのでできれば新しい方がおすすめだね、と。


イワオの選んだスタームルガーは4.75インチ銃身。6インチもあったが、持った感じは短いほうが良かった。PPKsのようにスライド式ではなく、銃の後尾のボルトを引っ張りって装填するボルト式。メンテナンスはPPKsのほうが楽そうだ。


アメリカでは販売店は子供に拳銃を売ってはいけない。なので親が買って子供にあげる形になる。ライフルは15歳から買える。(州によって法は違う場合もある)


結局イワオの代理購入者になってくれるものが現れ、イワオは拳銃とライフルを買えた。

代理購入者になってくれたのは、学校の、イワオ以外の唯一の日本人の教師だった。

面識はない。


銃の購入時にはじめて彼と話をした。

「勝手にだが君の父上と話した。代理購入者になってもよいが、何かあったら全て負ってくれるか?と聞いた。彼から書面が送られてきた。お父さんに感謝しておけ。」

イワオはそのことを了承し、また、見知らぬ自分に過分な協力をしてくれたことに感謝をした。

「・・・・流石に、自分一人で全てを行い、ここに来てしまうだけあるんだな」

と教師は感心していた。また更に、「他になにかあったら言ってこい」とも言ってくれた。


自分の銃を手に入れたイワオは、更に頻繁にレンジに通うようになった。

イワオに合ったのはライフル。ブローニングのTボルト。日本製。


ーー

夏休み近くまで何事もなく経過した。勿論レンジに通って腕を上げていた。


放課後、クラブの皆に会いに食堂に向かう時にたまたま代理購入してくれた日本人教諭に会った。

「おう、どうだ?クラブ」

「はい!おかげさまで凄く楽しいです!」

「楽しい、か、、、よかったな。日本じゃとても楽しめるスポーツじゃない、ここに居る間は存分に楽しめ。」

「はい!ありがとうございます!!」

教諭の言い方に少し何かを感じたが、そのなにかはイワオに対するなにかではなく、それは教諭自身の中に在るなにかに思えた。

個人のことだ、詮索するのはよくないだろう、とイワオは思った。


食堂にはもう皆が集まっていた。

「今度の大会、ワオも出るか?おまえなら充分入賞の可能性あるぞ」とサム。

「やっぱりあのライフルを買ってよかったな!」とマックス。マックスも自分の銃が自分に合っていると言っている。実際良いスコアを出している。

キャリーは新しいハンドガンは良いのだが、ライフルのほうが今一つの様子。

コナンも同様に、「ボルトアクションのほうが良かったかなぁ、、」と言っている。

ライフルを選定するときにいろいろ動画を見たが、ルガーの10/22と同系統のボルトアクションもあるが、ほぼ同じスコアを出すようだ。なのでライフル自体が合わないか、練習が足りないか、ハズレの銃身ではないのかな?と思った。

22口径の最も良いところは、弾の値段がものすごく安いので、練習し放題だということだ。次に反動が少ないので狙いやすい。でもハンドガンだと銃によって結構違う。あと、安い銃だと、銃身の当たりハズレが大きい様子だ。


大会は、22口径ライフルは100ヤード。90mくらいか。大きい標的から少しずつ小さくなり、どこまで当てられるか?をやり、残った者達で次に点数のついた標的でスコアを競う。


なので

「そろそろ100ヤードレンジに行くか、、」とサム。

屋外のレンジだという。バスで行くか、誰かの家の人に載せていってもらうか。

「うちの兄貴が、休みの日なら連れてってやる、どうせ俺もやりたいし、、と言ってた」とコナン。コナンが電話で聞くと、次の土日は空いているので2日間いくか、となった。


土曜日、100ヤードレンジのある射撃場。

「音が大きいね!」と僕が言うと、

「ああ、大口径の人も多いからな」とサム。

なかなか楽しそうだ!

指定されたブースに来て各自用意する。と、、「あれ?」。奥のブースに見たこと在るような、、、。

「あれ、先生じゃないか?」と側に居たマックスに訊く。

「え?、、、あ、ホントだ。日本人の先生だ。大口径みたいだなあの銃身、、」


見に行こうぜ、と歩き出すマックスについていく。

側で見ていると、

「うまいわ、、よく狩りとかに行くのかな?」と感想を漏らすマックス。

そうなんだ?でも、スタンス(立ち姿勢)を見る限り、カッコいい。

「スタンスがカッコイイな」と言うと、

「ああ、上手い者のスタンスはかっこよかったり美しいんだ」とマックス。

「ワオのライフルの立射もかっこよくなってきているぞ」とも言ってくれた。

うれしいな!。マックスはかなり良いスコアを出すので、上手い射手なのだ。


かなり撃ったあと、先生は銃をひらき(ボルトを下げたままにする)マガジンを抜いて後ろに戻って来て僕たちに気がついた。

「おう、お前たちも来ていたのか。」

「はい、大会が近いのでそろそろ始めようかと思って」

マックスがそういうと、先生は僕を見る。

「はい、僕も出る予定です。22口径ライフルで」

「そうか、、頑張れ」

「はい!」

それからマックスは先生と話した。話を聞いていると、なんだか先生は良いライフルを使っているらしい。交換された何枚かの穴の空いた標的を見ても、ベテランだと僕でもわかった。最初のらしい、ばらばらに穴の空いた1枚を除けばだいたい黒丸に集まっている。

マックスを見ると、尊敬の眼差しで先生をみている。

先生は苦笑いをし、そんなもんじゃない、、大したこと無いロートルだと言った。


先生と別れて自分たちのブースに戻ってから、

「ありゃ、プロレベルじゃないかな。」マックス

「どういう意味?」

「プロは失敗してはならないんだよ。失敗を、いかにゼロにするか?がプロなんだ。」

ああ、あの最初の標的で、自分と銃を調整をした、ということか。それ以降は全て本番を想定して、、、。


「マックス、君はガタイいいじゃないか。やはりそれも射撃に良い影響を与えるのかい?」と聞いてみる。

「まぁ、、良い姿勢を固定できるからな。撃った反動は流すが、その後次の射撃までが安定しやすい。速射競技だとコンマ以下の挙動の速さの差は大きいよ。また、立射とか支えがない場合、長距離なんかもっと差が出るんじゃないかなぁ、銃も軽くないからね。」

よし、明日朝から少し走り込みを始めよう。と決めた。


その日のスコアは、100ヤードに慣れるまで時間が掛かったが、慣れたら50ヤードと変わらないスコアを出せるようになった。スコープを使わないオープンサイトで、だ。

標的の黒丸が点にしか見えないが、うまく照星の上に乗っかってくれるのだ。目も良い。



翌朝、ランニングは学校の運動場を使った。僕が行った時にはもう走っている人が居た。

先生だった、日本人の。

「またおまえか、、、というか、俺が、か、、」

なんのことだろう?とおもったが、、先生が手振りで走れというので走り始めた。

先生が僕の前に出て、付いてこいという手振りをする。

2周緩めに走ったあと、速度を上げ始めた。

僕には結構早いスピードだ、へばりそうになると、なぜか前を走る先生が「頑張れ、耐えろ!」と励ましてくれた。目が後ろに在るのか?

どうにかそのかなり広い運動場を20周し、その後軽く流して1周して終わった。

その後ストレッチを2人でやった。その後、腕立て伏せ、スクワット。で、軽くストレッチをして上がった。


「ほれ、ギリギリだぞ?走って帰ってメシ食べてシャワーあびて着替えて来い」と先生に言われて時間に気がついた。


授業にぎりぎりだった。

「どうしたんだ?今朝は」と隣の席のクラスメイトに訊かれ、

「大会に向けてトレーニング始めたら、ぎりぎりになってしまった、、」

「え?射撃の?大会に出るの?」

「ああ、出る。」

アメリカじゃ子供の大会もあるくらいなので、さほど珍しいことでもないんだろうと思ったが、結構男子が集まってきた。射撃好きもやはり多いようだな。

何人かは同じ大会に出ると言っていた。


次の週はコナンの兄貴は土曜はデートらしいので、日曜日だけレンジに連れて行って貰える事になった。それまでも平日朝はトレーニング。一週間もするとかなり慣れてきた。

「やっぱり若いっていいなぁ、、」と先生。そんなに違うものなのだろうか?

ストレッチは2人いるとかなりよい。一人だとできることが限られる。

「先生も大会に出るんですか?」とストレッチの合間に聞いてみた。

「まぁ、エントリーはしたけど、、どうするかなぁ、、とな」

なんか理由があるらしいが、、訊くのは失礼かな?こっちでは。

「お前は、あれだな、もともとがこっちに風だな。居心地いいんじゃないか?」

「・・・そうですね、、言われてみるまで気が付かなかったですけど、、こっちが自分にとって普通に感じますね。なので居心地良いんだと思います。」

いいことだ、、と先生はポツリと言って、腕立てを始めた。



週末。100ヤードレンジ。

スコアは少し伸びていた。自分でも狙いの安定度が違う気がしていた。

下半身が安定してきてるんじゃないか?とマックスが僕の姿勢を見て言った。

トレーニングをし始めたことを言うと、それはよい、と言ってくれた。やはり嬉しい。

皆は、トレーニングはいいもんなんだなぁと言っているが、やるとは言わない。マックスは当然毎日欠かさずにやっているらしいけど。

「ストレッチとスクワットだけでもやるとかなり良くなると思うんだがな」とマックスは皆に言ってた。コナンが、んじゃそれだけならやってみようかなと返事していた。


先生の姿を探したが見えなかった。土曜にしか来ないのかな。


キャリーは100ヤードのレンジには来ない。

「私はハンドガンのみでいくわ!」と、PPKsに頼るようだ。ハンドガンの20ヤード競技、参加者が最も多くなる部門らしい。


ーー

学校は夏休みに入った。つまり、3年生が卒業した。僕は9月から中2になる。皆は高2になる。そして夏休みにここの大会がある。


大会にはエントリー数がかなり多くなっているようだが、ふるいにかけるようなことはしないという。

「お祭りだからな!皆が楽しむための大会なんだ。だから主催者達はどうにか参加した皆が楽しくできるようにと、あれこれ頑張るわけだ。」とサム。

ああ、こういうの、、主催者側の都合を押し付けるやつじゃないんだ、、はじめてそういうイベントを見た。いいな、、、

実際は参加者達にも節度が在るからこそ、できることなのだ。我儘や身勝手が多けりゃできないことだろう。



大会当日。晴天だ。毎年夏は天気はいいがたまに夕立が在るという。が、大会の日に夕立があったことはないらしい。

キャリーとコナンはハンドガンの部なのでそっちに行った。僕とサムとマックスは一緒に22口径ライフルの部。


僕ら3人は予選を抜けた。が、屋外の100ヤード、22口径は風に弱い。僕は10発中、2つミスり黒点から僅かにずれた。サムは1つ。マックスは全て黒点に当て、決勝に進んだ。決勝はサドンデス。ミスしたら抜ける。マックスは3位になった。

その頃にはキャリーとコナンが戻ってきていた。

「おいおい、、もう戻って来ているということは、、」残念そうな顔のサム。

「言わないでくれ、、」とコナン

「酷いわよ、何あの人数!!マッチモデルとか皆持っているし!!」怒るキャリー。

「大会なんだ、競技用を使うのは当然だろう?」とマックス。

でも、とかまだぶつぶつ言うキャリー。


「お!大口径が始まるぞ!」

大口径ライフルの部だ。先生が出るかも知れない。

全部で50人はいるだろうか、後ろに審査員を付けて、横に10人並んでそれぞれの標的を撃つ。外したものから抜けていく。5人ほどになると、次の10人に代わる。

そして二回戦目。標的の円が小さくなっている。

また外したものから抜けていく。10点の標的で5点より外したらハズレ認定だな、とサムが言った。


「あ、先生だ、、」

3回戦目にしてやっと見つけられた。

先生は3回戦目も残った。次が決勝らしい。

「決勝は、外した者から落ちていく、パーフェクトな者が優勝者となる」マックス

「つまり、、」僕

「ああ、プロ級だな」マックスは頷く。


ここまでになると、観衆達も静かになっている。手に汗握っているのだろう。僕もだ。

ダン!ダン!と大口径らしいデカイ音が鳴り響く。ほかの音は、たまに「ミス」という声と後ろに下がる足音、マガジンを交換する音。


どのくらい時間が経ったのだろう、

「ウィナー!33番!!」

先生のゼッケンだった。


一人で来たらしい。僕らが先生のところに行っても他に誰も来なかった。銃はしっかりボルトとを開いている。

表彰式の後、先生とマックスを祝う食事をしようと先生を誘った。先生は断りかけた様子だが、やめ、少し恥ずかしそうに了承してくれた。コナンのお兄さんとその彼女と先生とぼくら5人で、2台に分乗してステーキ屋に行って騒いだ。



9月。

新学期が始まった。

校長に呼ばれた。

先生が辞めたと。銃はそのまま所持していていいとのこと。

どこに行ったのか聞いたら、「元の職場に戻った」とだけ。そして、手紙を渡された。


ーー

何も言わずに去って申し訳ない。君と、君達の好意は嬉しかった。

君には事情を説明しておきたく、この手紙を校長に託した。


俺は日本で射撃のオリンピック選手候補だった。

その合宿に米国に訪れ、自分の銃とその環境に関する無知と無経験に唖然とし、自分の心身を鍛えたいと心底思った。その時の俺と彼らの、特に精神には天と地の差、大人と子供の差があったのだ、それに気付いてしまった。その合宿で知り合ったアメリカの強化選手に自分を鍛え上げたいと相談したら、軍を勧められた。俺のその目的も含め、米国籍を取れるチャンスもあるという。外人の俺が入隊できるのか?と不思議に思い聞いたら、射撃という特技が在るから大丈夫じゃないか?と申請してくれた。彼は米陸軍に在籍していた。

彼の推薦と俺の経歴ですぐに審査を通り、試験を受けた。語学はギリギリだったが、実技の射撃がエクセレンスと評価され合格。俺は五輪選手候補を蹴って一兵隊になった。

2年後、小さな戦場に行った。それから転々と似たような小さな戦場へ。

かなりきつかった。対人戦だ。しかも目の前で撃ち合っているわけではなく狙撃。中には戦闘員ではない場合もある。


戦場に2年ほどいたが、除隊を申請した。上は病気療養にしてくれた。また戻ってこい、と言ってくれたが、当時はその気は全く起きなかった。そのときの俺にはありえなかった。

その上司がここの学校と繋がりが在り、どうにか俺にこの職場を与えてくれた。

体育教官として仕事を得て、子供達相手に平和な毎日を送っていたが、なかなかトラウマは去ってくれない。

そんなとき君が来た。

たった一人で海を越え、手続きなども全て自分でしたと聞いた。中学生が、だ。その前の年まで小学生だった子が、だ。

正直ショックだった。

そして、銃の件。君のお父さんは詳しく君の事情を教えてくれた。ここアメリカでの君の味方を増やしたいという君のお父さんの気持ちがその声によく聞こえたので、そのまま話を聞いた。

よくもまぁ逃げなかったものだ。アメリカに来たのは、一つの闘い方の結果だ。逃げるというのは引きこもったりして闘わないこと。君は奴等の鼻をあかしたのだ。


そして君は銃を買い、仲間たちと射撃を楽しみ、、大会に出ることを決め、トレーニングを始めた。私が君とあのレンジであったのは、私も射撃が楽しかった時に戻れるかどうか、を試してみたくなったからだ。そして体を作り直そうとトレーニングを始めた。そこに君が来た。

もう、君に後ろから煽られているとしか思えなかったね。


あの、君とマックスとレンジであった時、あの日の調子が良ければ元の職場に連絡してみようと思っていた。

そしてあの結果。君もよくわかったろう?

元上司はもっと偉くなっていた。そして俺に「とりあえず教官見習いで入れ、慣れたら射撃教官でいかせてやる」と約束を貰った。


その時の雑談に大会の話が出て、手土産に優勝が欲しい、と言われて、ああなった。本当は途中でリタイアしようと思っていた。市民が楽しく遊んでるところにプロが乱入するのはどうかと思ったのだ。


君は中学でもうアメリカに来た。このまま高校、大学と、アメリカで過ごせば、永住権も取りやすくなるだろう。君の可能性は更に広がる。

君にはセンスが在る。射撃を磨け。この国ではそれは大きい。州の大会、州をまたいだ大会などで名を馳せば、それだけで一つの位置を確立したのと同じだ。この国はそういう国だ。更に可能性を広げろ。

今でも、この国の人々は、体一つでできることを成し遂げる者を尊重するのだから。


あと、余談だが、もし、君が何らかしらの武道をやっていたなら続けるべきだ。この国の者を相手にするは、ガタイの差を考えれば柔道か合気道がいいだろう。


君の人生に幸い大きことを祈っている。



まったく、、

勝手なことばかり。


僕はその日部屋に帰ってから、ネットで道場を検索した。LAまで行けば合気道も柔道も道場があった。両方共日本人有段者のようだ。

車の免許が取れるようになったら通うことにしよう。


その後は日々問題もなく、ぼくらは週末にはレンジに通った。

高校生4人組はバイクの免許を取っていた。

で、バイクも買っていた。キャリーは小さめのスクーター。サムとコナンとマックスは中くらいのスクーターだ。マックスのは少々大きめの排気量の様子。

「親父が、おまえは重いからでかめのほうがいいだろう、とコレを選んだんだが、、」と大きすぎて学校のバイク置き場には置きにくそうだ。


ほれ、とマックスがヘルメットを渡してきた。

「んじゃ、いくぞー!」サム。

皆で街のたまに寄るカフェに行った。ハンバーガーとソフトドリンク。


その日、なんか、アメリカしている!という感じがものすごくした。



ーー

それからあっという間に2年が経っていた。

サムもキャリーもマックスもコナンも、大学進学が決まった。

卒業式。ボクは泣いた。これ以上無いというほど泣いた。

あの、楽しかった2年半、彼らによって作ってもらった2年半。とても幸せだった。


4人共、泣いているボクに寄り添ってくれている。

この街の外の大学に行く者はいない。皆この街の大学に入れた。学年どころか高等と中等と違うので知らなかった、皆賢かったのだ。

「ワオ、お前、射撃クラブは今は一人だが、お前の戦績は素晴らしい。なので仲間を集めろ。皆で大会に出ろ。俺らは大学でまたサークル作って大会に出るから。そこで会おう。」とサム。

「・・・うん、、わかった。」ただ寂しいだけだったから泣いただけだったが、次を与えてくれたサム。



9月。新学期は始まった。新しいクラス。

「よお!同じクラスか!」

大会で何度か会った同級生。彼も真面目でトレーニングもし、常に僕とぎりぎりの接戦だった。銃の差で僕が勝てているだけだ。

「大口径、いくのか?」彼は訊いてきた。

「うん、行きたい。」

「308か?」

「やるなら30−06で」

「・・・弾、高いだろ?」

「うん、、安くて箱40ドル、、20発」

22LRだと500発の箱で250ドルくらいだ。2発1ドル。30−06だと1発2ドル。223(ほぼ現NATO弾と同じ)だと1000発で600ドルくらいからある。安すぎるのは練習に向かないけど。


「俺は223だよなぁ、、ワオは大物狩りをしたいのか?」

「いや、まだ狩りは行こうと思っていない。が、鹿以上だよな」

「ああ、だよなぁ、、」

「鹿だと、1マイルくらいできるほうがいんじゃないか?」

「だと聞くけどな。」

・・・・・・


1マイル、ざっくり1.5キロ。勿論スコープ無しでは見えやしない。

弾速のある重い弾でなければずれやすい。

鹿狩りのチャンスは初弾のみだ。ミスると音で逃げられてしまう。


「自分で狩った鹿の干し肉、食ってみたい、、」とぼそっと言うワオ。

「あっはっはっは!実は俺もだ!」


彼はジョージ・マクマホン、皆はなぜかマックと皆呼んでいる。

「ワオ、射撃クラブ、どうするんだ?」

「オレ一人になったから、部員探す。マック、どうだ?」

「ああ、特に何やってるってわけじゃねーしな、、お前とつるむだけみたいな感じなら、気楽でいいな。いいぞ」

「おお!ありがとう!大会、上位を俺らで奪おうな!」

「ああ、大口径は、俺もいい銃買って貰うから、今度は負けねーぞ!」マック。

「う、、やべぇ、おれは、、予算があまりない、、、」

「あっはっは!俺の時代だな!!」

30−06は先生が使っていた。あの音は223と違う。もっと重く強い音だった。

闘う銃の音だと思った。


マックの勧めでバイクの免許を取った。僕もマックももう16歳になっている。

ライフルは自分の名義でAB3の中古を買った。ブローニングAB3、22口径Tボルトと同じミロク製造のもの。ボルトアクション。マックも「値段の割に良いものを上手く選んだな、」と認めた。

先生が「お前のより安い」と言っていたから気になっていた銃だ。そして優勝した銃。


大会では大口径の部は300ヤードのスコープ無しと、500ヤードのスコープ在りに別れている。

僕はスコープ無しに出たいと言うと、マックは、じゃ俺はスコープ在りで出るから、2人して賞を取ろうぜ!と。


それから2人して郊外の500ヤードのあるシューティングレンジに通った。この程度の距離ならば、バイクでもさほど疲れず問題もない距離だ。

この街は、僕が思っていたのと逆だった。兵隊の街だと、結構荒んでいるのかと思っていた。しかし海兵隊の街だからろくでなしは住みにくいという。兵士だろうと思われる者達でだらしない者はまだ見たことがないほどだ。


あれ?んじゃ、、と思ってマックに訊いた。

「兵隊って、大会に出ないの?」

「出てるぜ?でもマリーンは出ないだろ、基本、素人が楽しむ大会にプロは出ない。当然だろう?」

こっち(米国)ならば、規定に無くともそう思うのが当たり前なんだろうな。

「ここには海兵隊のキャンプと練兵場がある。1割でも出てきたらもう終わりだぞ?」

「ほう、、でも、そういうプロの射撃見てみたいな」

「・・・だな、、」


数日後、

「内緒だけどな」とマックが始めた。

放課後、ファーストフードの隅のテーブル。

「俺の叔父さんに、海兵隊の教官がいるんだ。海兵隊の訓練は、普通外部の者にあまり見せないんだが、、、叔父さんに用事があって行くだけなら入れるんだと。そんときたまたま叔父さんは射撃場に居るんだってさ。」

「おお!ありがたい!!ありがとうだよマックの叔父さん!!」僕は本気で吃驚だった。


叔父さんに、平日休む許可もらうんで校長だけには言わねば、と説明し、叔父さんの許可を貰い、2人で校長に会いに行った。

叔父さんに面会行く日は来週の水曜日。特に何もなかった日のはず。

校長は困りながらも許可した。そして「ようく見て学んで来なさい」と。


校長とあの日本人の先生の上司と繋がりが在る。つまり校長は軍と関係在るので、多分、軍と一般の差を知っているんじゃないか?それを僕達が見ることが大切だと思ったんじゃないかな。校長が許可しなかったら、大したこと無い事なんだ、と思うつもりだった。


当日。アイロンかけてパリッとした学校の制服を着て制帽も冠って、でもバイクでゲートに行き、叔父さんに面会に来たと言うと、申請は出ているとのこと。すんなり入れた。

まず、叔父さんの執務室に行き、秘書がここには居ないので居る場所に言ってくださいと言う。そしてそれに従って射撃場に行く。という手はずになっている。

で、

今射撃場、、、、だが、、なんで先生が他の兵士と一緒になって訓練してるんだ?


マックの叔父さんが「何か気になることが在るのかね?」と訊いてくれた。

「質問よろしいでしょうか?」と訊いて許可貰い、あの人は僕が中学の時体育の教官だった人で、以前陸軍に居たはずです。なぜここで新兵に混じってるのでしょうか?と訊いた。


「海兵隊で訓練を受けたものは、他の軍に入ると新兵訓練は免除される。だが、逆はない。それほどなんだよ。」と、マックの叔父さんは教えてくれた。

「射撃教官だったほどなのに、、、」と僕がつぶやくと、

「ああ、たしかに彼の射撃の成績は抜きん出ているね、陸軍時代、世界を転々とした記録を見た。かなり戦績を残している。訓練に残れたら、うちとしてもありがたい人材になるだろう」

訓練に、残れたら、、か、、、

2時間ほど見て、僕らは帰された。


部屋に帰って着替えして、外に出た。もう学校も下校時間なので僕らが私服で外に出ても問題ない。


ファーストフードでマックと待ち合わせ。また隅の席。

「・・すごかったな、、」

「ああ、、僕らが、、ちんけな素人だって、よくわかった、、、」

「トレーニング、倍に増やすわ、、」

「ワオ、やってるんだ?」

「ああ、じゃなきゃお前のライバルになんかなれなかったぞ?」

へへっ、と喜ぶマック。

「んじゃ、俺も一緒にやるかな、、」

「やろうぜ!でもそしたらマックに勝てなくなるかなぁ」

「お前にはAB3があるじゃないか!アレすげー精度だって言うぜ?」

そうなのか?


「それより、うちの学校の先生だった人がいたのか?」

「ああ、中学の時、いろいろ助けてもらった。」

「陸軍に居たって?」

「うん、以前に居たらしい。」

「で、今、訓練こなせたら、叔父さんの期待の星か、、」

「でも、、訓練に残れたら、って言ってたからな、、」

「ああ、かなり厳しい、、結構脱落するようだ。」

・・・・・・

それから僕らは長距離レンジに行って2時間ほど丁寧に練習した。



一ヶ月持っ経った頃、先生から手紙が来た。

「おまえにまた背中を押してもらった。ありがとう。

なぜお前があそこに居たのかは知らないが、あの頃はもうぎりぎりだった。いつ切り捨てられてもおかしくない位置に居た。が、お前らが来たことで奮起できたのだろう。それから全体の半ば程度まで登り、どうにか訓練を終えきることができた。

ありがとう。


今度会う時はマリーンとして会える。」


という短い手紙だった。

状況はどう見ても偶然でしか無い。それ以外在りえない。雑談から、なのだ。しかもマックの親戚なぞ知らなかったし。それがおエライさんだと知るわけない。しかも先生が新兵になっているなんて。なんで?だよ。まぁ、海兵隊というのは軍兵士の中でも特別、ホンモノの兵士だと皆言う。だから兵士は海兵隊兵士になることに憧れる、とマックの叔父さんは言っていたが、、、それほどまでに?だって先生いい年だし、、

歳のことを言うと、マックの叔父さんは、彼は今年で最後、ぎりぎりだった。と。吃驚して叔父さんを見ると、全員の経歴を知っているよ、と自分のおつむをこつこつと指でたたいた。

すごい人が親戚に居るんだ。マックは。


僕はその手紙を内緒だと念を押しマックに見せた。勿論英語。僕と先生とは日本語を使ったことがない。

マックは僕の背をポンと叩いて、よかったな、と言ってくれた。

「それほど、成りたいものなのか?!」僕は訊く

「ああ、兵士に成りたい者なら、戦闘機乗り以外は全員なれるものなら成りたいだろう、それが海兵隊員だ」マックが断定する。


「マック、マックは?どうなんだ?」

「俺か、、俺は、、まだそれほど軍に行きたいとは思っていない。でも、でもだ、もし行くとしたら、海兵隊を目指す。それ以外無い。」

「ああ、、そうだな、、凄い見本が身内にいるんだもんな」

「そういうことだ。」


「だがな、海兵隊上がりで、ビジネスを起こして成功した者も少なくないんだぜ?」

とマック。

「つまり、潰しがきくような、特殊な人間になるんじゃねーかな?あそこにいると」

と、いまいち理解に苦しむような、、でもなんとなく感覚的にわかるような、、


もし、僕が海兵隊に入ったら、父は悲しむだろうか?

どうだろう、、期限付けて、それが過ぎたら帰ってこいとか言うかもな、、



それからは、トレーニング量を倍に増やし、週末の射撃練習でも丁寧に、しかしより難しいやり方をし始めた。固定台無し。自分の体のみでのホールド。しかもオープンサイト(スコープを使わない)。

マックはそんなイワオを修行僧みたいだなと呆れ、しかしトレーニングにはついてきてくれた。ワオだけ強くなっても困る!と、ライバルであることを選んでくれた。


30−06弾を使った300ヤード射撃。勿論オープンサイト。立射、座射、伏射、全てで黒丸の中に入るようになった。

マックがいつも不思議そうに訊くが、黒点がサイトの上に座ってくれるのだ、としか言えない。実際そうなのだ、その時に引き金を絞ると、約半秒後に標的に当たっている。

ただ、スコープを使うとそこまで上手くない。慣れ、なのか?

500ヤードでも1−2割は外れる。1マイル(1.76キロヤード)になると、黒点に当たるのは僅かになる。勿論標的の外円の中には全て入るが。流石に1マイルになると立射は無理。伏射が良い。

それでも「すげーな、マイルで、、これだけって、、いくら30−06だって、、、」と驚いているが、イワオとしては不満だ。的が座ってくれないのだからしっくり来ないでの射撃となっているからだ。

狙撃では二脚も三脚も使えるとは限らない。得物は森の中や岩山の上だ。だからイワオは使わない。練習でそれを使って当てられても実際に使う場面では意味がない。



高校1年が終わり、大会のある夏休み。

大会に向けてイワオとマックは頻繁にレンジに通っていた。

ある日、

「なぁ、叔父さんが今度の土日で狩りに行かないか?って言うんだが、行くか?」とマックが誘ってきた。

「ぜひ行きたい!狩りはやったことがないんだ!」

「自分で捌くんだぜ?こう、、ナイフを、ザクッと毛に刺して、、」

マックが嫌そうに言う。

「でも、そこで食べるんだろ?」

「まぁそこで野営するんだったらな、、」

「今回は?」

「野営するって、、」と、マックは嫌そうに言う。

「でも水は?獲物捌くには大量の水が必要だろう?」そう聞いたことがある。

「ああ、川の近くに野営するって。野宿だぞ?テントも無いぞ?」

「、、やったことないからわからないけど、いいよ?」

「・・・・しかたねーなー、、、んじゃOKって言っとくよ、、」


土曜日。マックの叔父さんの車の中に居た。ジープの4枚ドア。僕とマックは後席。マックに前に座れよと言ったのがだ、後ろでいいと。

昼前には狩場の近くに車を停めた。

2時間ほど少しずつ登っていく。

「なるほど、これじゃテントなんか持ってきたらえらい目に会うな」

「だろ?」マックは口数が少なくなっている。

叔父さんは最初から一定のペース。登りがきつくても変わらない。

もう道も僅かにしか道と見えないくらいになった所で、藪に分け入る。そのまま先に進む。そして、向こうに岩場。500ヤード位先か?でも、、、、レンジよりもはっきり見えそうだ。

叔父さんがしゃがめと手で合図する。僕らはクチをつぐみしゃがむ。おじさんの手に従って見ると、岩場の中腹に鹿が居る。こっちを見ていない。

僕を指差す。そして僕の銃を。

僕はそっと銃を出して、マガジンを入れ、ボルトをそっと引いて戻す。勿論銃口は岩場の方で、人が居る方には向けていない。

伏せる。何度か位置を直し、、、叔父さんは僕の耳の側で、「仰角が在る、標的の10センチほど上を狙ってみろ」と。

上向き射撃だとそれほど差が出るのか、、、

サイトの上に標的、、、なかなか座ってくれない、、、ん、クイッ、ダーン!!

1秒弱、標的の頸の後ろの毛が跳ね、飛沫が上がったように見えた、見える距離ではないのに。

双眼鏡で覗いていた叔父さんは、「おしい、当たったが致命傷ではないな、、、」と。

あと5センチ上、左に5センチだった、と言ってくれた。

あのくらいの距離であのくらいの高さの場合、15センチ上、わずかに左を狙う。よし。


もうここらの鹿は逃げたろう、場所を変えよう。と、また歩き始める。それほど下草は茂っていない。道の両脇が最も茂っていたようだ。

その後、300ヤードほどでマックが小さい鹿を仕留めた。腹に一発。30−06なので小さい鹿には致命傷だ。「これより小さいと狩ってはいけない。ルールだ」叔父さん。

「そしてこれが我々の晩メシだ、ごちそうさんマック」と叔父さん。僕も言う。

叔父さんが担ぎ、少し歩いて川に出て、捌き方を教えてもらいながら捌いてみた。皮は全てを肉にする時に剥ぐので、家に帰ったらだ、と。内臓は食べられるもの以外は穴を掘って埋めた。簡易スコップは小さいが使いやすかった。手入れさている。勿論使用後は川で綺麗に洗った。

河原の石を使い河原の端の土手になった上でかまどを作り、火を熾し、枝に差した肉を遠火で焼く。残った部分は川に浸けておく。時間がかかったが美味かった。叔父さんは僕らに一口だけウイスキーをくれた。バーボンだった。


翌朝、日の出の光で目が覚めた。

朝飯は、叔父さんがジャーキーをくれた。数本食べ、水を飲んで出発。


小一時間、昨日の岩場?

叔父さんの手の指示に従い、また僕。

距離、昨日とさほど変わらず。位置、昨日より少し高い位置。ただ、まだ日が高くなく日陰。伏せて、すぐに具合が悪いと気付き、座って撃つことにした。叔父さんは何も言わない。点にしか見えんなかった標的が、サイトの上でどんどん形になってくる、、サイトに座った、クイッ、ダーン!・・獲物の頭が弾かれたようになった直後、岩場から転げ落ちた。「ヒット」。双眼鏡を離さず、叔父さんはつぶやいた。マックはポンと僕の背を叩く。

そしてマックと拳をぶつけ合う。

叔父さんは、銃を出し、岩場を12時としたら10時の方角に銃を向ける。森の中。何も見えない。マックはおとなしくしろとボクに手振り。叔父さんの照準の先を見続ける。

ダーンンンン、、、「ヒット」叔父さん。叔父さんの銃にもスコープは付いていない。


いくぞ、と叔父さんに従って岩場に行き、僕の獲物を拾い、叔父さんが担ぎ、森の中に入り、、、、でっかい鹿。頭の横からど真ん中に。

「ワオ、ここからは君の得物は君が、マック、君の得物も君が持つこと」

川まで少しあった。えらく重かったが、、僕が倒した得物だ。絶対持って帰る。


川で捌いて内蔵を出した。かなり軽くなった気がする。そこから川沿いを少し歩き、ほとんど道だとわからないような道を登り、、最初に来た道?に出た。膝がガクガクするが、歩け。歩くんだ僕!一歩づつ足を出せ。背負うように担ぐ得物が重い、「獲物が重いと思えるようなら、まだ一日は歩ける」。僕らの考えがわかるように、見透かしたように言う叔父さん。

何時間歩いたのか全くわからなくなったとき、目の前に車があった。

車に乗り込んだ後は覚えていない。気がつくとマックの家だった。マックはそのまま寝ると言って部屋に行ってしまった。叔父さんは僕の得物は捌いてマックの家に預けておくと言い、僕を車で寮まで送ってくれた。

寮の前で車を降りる時、

「君は大学はこっち(アメリカ)かね?」

「はい。そのつもりです」

「そうか、、卒業したら海兵を受けなさい。・・・君達は、面白い。」


君達・・。僕にはわかった。僕と、先生のことを言っているのだ。


後日

大会は散々だった。

僕もマックも本気になれなかった。

それでも二人共、僕が2位でマックが3位だった。スコープ有りは激戦区だったようだ。


帰りのファーストフードの店の隅。

「だめだ、、本気になれねぇ、、緊張感が無いんだよ、、」マック

うん、と頷く僕。

ベテラン達があまり大会に出ないのは、そういうことなんだろうなぁ、、と少し思った。

「状況が良すぎるんだよな。」と僕。

「ああ、もう射ってくださいって全部用意されている、、機械で撃てばいいじゃん。」とマック。

「ウチのクラブ、狩猟クラブ、って名前に変えようか?」僕

あっはっはっはっは!と2人で笑いあった。


僕は思う。

軍には、あの訓練にはこれほどの緊張感あるのだろうか。訓練で動く的も在るかも知れない。でも、、

そして、

もし、、、もし戦場に行ったら、あの的の先は人間だ。食うための的ではない。それでも撃てるのか。

あの激しい訓練を全てこなした後は、撃てるようになるという。


大学を終えた後、僕は川を渡る決心をつけられるだろうか。



狼になる日 幼狼 完


主人公たちの、これから、を書いて行こうと思います。

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