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謎の少年

とりあえず私の状況について、前例の無い話で教皇様も戸惑いを隠せない様子でした。

神殿にある文献をもう一度探してみると仰り、お祖父様も王宮の知り合いに問い合わせてみると仰いました。



結局、魔道具クラッシャーの原因は解らないまま、さらには魔力は無いのに、魔力庫だけ人一倍という訳の解らない事実だけを引っ提げ、ウィンドミル領に帰る事になりました。



「お祖父様?魔力が無いのは大変なのでしょうか?」



ウィンドミル家の馬車に揺られながら、私はお祖父様に尋ねました。



「うーん、そうだな。職によっては、難しいこともあるが、特には問題ないかもな。ワシも、魔力量は少ないが、特に困ったことはないからなぁ。」



「えっ?お祖父様は魔力量が少ないのに将軍になれたのですか?」



お祖父様の魔力量が少ないとは、全く知りませんでした。



「将軍は魔力が強くないとなれないわけじゃない。皆を纏めて、率いる力があれば、種類は何であれ問題ないものだ。ワシはそれが剣術だっただけよ。」



「そうなのですね……。では、サリーは?サリーは水魔法が得意よね?やはり魔法が使えるのと使えないのでは全然違うのかしら?」



ちなみに今回の旅には、侍女のサリーも同行しています。

ウィンドミル領と王都までは距離があるので、私の身の回りのお世話をしてもらう為です。



「そうですね。侍女としては、魔法が使えるのはとても便利です。例えば、湯浴みの時のお湯を準備するのも、水魔法が使えればすぐですが、もし水魔法が使えなければ、お湯を沸かし、湯船に運びいれるのを何度も繰り返さないといけません。

料理人に、火魔法を使えるものが多いのも同様かと……。ですが、お嬢様の場合、周りに使用人がおりますので、ご自身で何かしなくてはならない状況は少ないかと思われます。」



私の境遇はとても恵まれています。

そのお陰で、魔力無しでもそれほど問題はなさそうだと思いますが、将来絶対大丈夫という保証はありません。



「エマ、一人で悩むんじゃない。これは家族皆で考えよう。きっといい解決案が出るから安心しなさい。」



お祖父様は私が暗い顔をしていたのに気付き、優しく頭を撫でてくれました。



そうですよね。私には強い見方が沢山います。

魔力無しで魔道具も使えない私でも、何かきっと出来ることがあると思いたいです。



ーーーーーーー



「………お祖父様、この腕輪は何の魔道具だったのでしょうか?」



私は青ざめながら、自分が壊してしまった腕輪を見ます。

腕輪についていた紫の石も真っ二つに割れていました。



そう訪ねると、お祖父様がかなり険しい顔をしている事に気付きました。



「うむ。ワシも同じものを見たわけではないが、似たものを知っておる。しかしなぁ……。こんな子どもに着けるとは思えんし……。」



そう言うとお祖父様は、セバスにレリック様を呼ぶように言いました。

ちなみにレリック様は、ウィンドミル軍の筆頭魔術師です。



少しすると、レリック様と一緒にお父様もやって来ました。



「忙しいところすまんな、レリック。ちょっとこれを調べてくれるか?ワシの見立てだと魔力抑制器かと思うのだが……。」



お祖父様はそう言うと、割れた紫の石と腕輪を、レリック様へ渡しました。



レリック様は、鑑定魔法を使って調べているようです。お父様が小声で教えてくれました。

レリック様のお邪魔をしたくないので、私も小声でお父様に質問します。



「お祖父様が、子どもに着けるとは思えないと言ってました。何故ですか?」

「うーん、そうだね……。魔力抑制器とは名前の通り、魔力を抑えて使えなくする魔道具なんだよ。生活用魔道具とは全く違う使い方で使われる魔道具だからね。そんな魔道具を子どもに使う事は普通では考えられないから、お祖父様はびっくりしたのではないかな。」



お父様の説明は曖昧で、核心をつく答えは頂けませんでした。

おそらく、私には知られたくない事があるのかもしれません。



「ちなみにあの腕輪は、何処かで買えますか?私が壊してしまったので弁償しないと、あの子が目が覚めた時に困ってしまうかもしれません。」



生活用魔道具ではないとの事なので、簡単に手に入るものではない可能性があります。私はもしかすると、とんでもないことを仕出かしたのかもしれません。



「うーん、必ずしも困るとは言いきれないかもしれないね。まずは、彼が目を覚ましてからかな。」



お父様と話をしていたら、レリック様の鑑定が終わったようです。



「先代様の仰るとおり、これは魔力抑制器で間違いありませんね。罪人……とは考えにくいですが、もしかすると誘拐されたか、何かしらの犯罪に巻き込まれた可能性もあるかと……。」



罪人!?

お父様が分かり辛い説明をしてきたのは、そういうことだったのですね。



「誘拐……か。まずは、本人から事情を聞くのが早いな。仕方ない、目が覚めるまで待つとするか。レリック、念の為にこの部屋全体に結界を張ってくれ。ルーカス、話があるから執務室へ。」



そう言うと、お祖父様とお父様は一緒に部屋を出ていきました。

私はセバスに促され、客間を退出しようとしたところ、「うっ……」と聞き覚えのない声が後ろより聞こえました。



私は振り替えると、ベッドで寝ていた少年が丁度目を覚ましたようで、ゆっくりと上半身を起こそうとしていました。



「あっ、目が覚めたみたい!!」



私はテテテッとベッドサイドへ小走りで近付きました。

後ろからセバスが、お嬢様お待ち下さいと追いかけてきましたが、気にしません。

少年はまだ意識が完全に覚醒しきっていないのか、頭をブルブルと振って、眉間に皺を寄せています。



「お嬢様、危険です。下がってください。」



レリック様がベッド手前で、私と少年の間に割って入り、邪魔をされました。

そして後ろから追いかけてきたセバスに捕まってしまいました。



「ちょっとお話しするだけよ?危険なんて無いと思うわ。それに、万が一の場合でも、レリック様がいらっしゃるんですもの。これ以上の護りはないでしょう?」



こてんと、首をかしげて上目遣いでお願いすれば、だいたい邸の大人は許してくれます。

ふふふっ、私は悪い子どもなのです。



案の定、レリック様もセバスも、仕方ないですね。と折れてくれました。そして、セバスはおそらくお祖父様達に彼が目を覚ましたことを伝えに行くのでしょう。部屋からそそくさと出ていきました。



そんな私達のやり取りの間に、彼は覚醒したのか、辺りをキョロキョロと見回していました。



「お加減はどうですか?身体で痛いところとかありませんか?」



私の問いに、ベッドの上の少年は私を見ました。



うわぁ、素敵な瞳ね。まるで黒曜石のようだわ。



眠っているときは解りませんでしたが、彼の目は黒曜石のような艶のある黒色をしています。

ウェーブのかかった少し長い前髪が、素敵な瞳を隠してしまいます。


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