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木苺摘みへ出発

お祖父様の馬は、ブラックって言う、名前のまんま真っ黒なお馬さん。

軍馬って言うんだって。すっごく大きいのよ。

私が練習で乗っているロシナンテと比べたら、足の太さも、体の大きさもぜーんぜん違うの。



私はそんなブラックが大好き。

だってとっても背が高いから、いつもは見えない遠くの方まで、よーく見えるもの。



ブラックは大きな馬だから、私一人では絶対乗れなくて、いつもお祖父様に抱っこされて乗るの。

その後はお祖父様の股の間に挟まれて座るのが私の定位置。



今日も後ろから抱き抱えられながら、要塞都市の石畳を駆け抜ける。



私の住んでいるザイオンは、高い壁に囲まれた街なの。

戦いのときに街の皆が助かるように、街ごと壁の中に造ったんだってお祖父様が言ってました。

真ん中に建ってるのが、私達の住むウィンドミル邸。街の皆はザイオン城って呼んでます。

絵本に出てくるような、とんがり屋根のある素敵なお城とは全然違うけど、いろんな仕掛けとかあって、楽しいし私は大好き。



そして、ウィンドミル邸を中心に、十字に伸びる石畳の道。

それは、馬や馬車がいつでも出動出来るように整備されてるんだって。

石畳の道に区切られた東西南北の区画に、街の皆が住むお家があったり、お店や市場があったりするの。

私のおすすめは、南地区のマリーベルのお店。

お菓子がとっても美味しいの。あとフレッドさんのお花屋さんも大好き。



今日は残念だけど、街に行く時間は無さそう。

南東の森で木苺を摘んだら、すぐ家に帰らなきゃいけないからね。



ブラックは颯爽と城壁の門戸をくぐり抜け、南東の森を目指す。



「お祖父様、王都のお兄様の様子はいかがでしたか?」



お祖父様は年に2回程、王都で武術指南をしています。

それは、王家をお守りする近衛であったり、国軍であったり、相手はいろいろらしいけど、大人気なんだってお父様が言ってました。

毎年何人かお祖父様に惚れ込んで、王都から辺境軍に志願する人もいるぐらい、皆から尊敬されているの。




そして、合間をみては、王都のアカデミーに通うジェームズ兄様の様子も見てきてくれるの。

私は今回、お手紙とまだまだ下手くそだけど、一生懸命ハンカチに刺繍をして、お兄様に届けてもらうよう、お祖父様に託したわ。

喜んで貰えたら嬉しいな。



「ジェームズには、ちゃんと渡したぞ。ハンカチも喜んでたなぁ。その場で封を開いて見せびらかしてきたわ。あれは、蛙だったかな?」



「……………………四つ葉のクローバーです。」



うぅぅぅ。

お祖父様には蛙に見えたのね。悲しいです。

あれでも何回も何回もやり直しして、やっと渾身の出来だと思ってたのに……。



私のあまりのションボリ具合にお祖父様は焦ったみたいで、あれだよあれ、ちょうどジェームズに会う前に目の前をぴょんと蛙が横切ってな。それが頭に残像として残ってたからだ。うん、きっとそうだ。なんて言い訳しながら謝られた。

何ですかそれ。目の前を蛙が横切るなんて、そうそうありませんよ。

お祖父様の必死の言い訳に、思わず吹き出してしまいました。



ブラックはとても早い馬なので、お喋りしてたら南東の森へはあっという間でした。

私はお祖父様に抱えられながらブラックから降りて、木苺を探します。



実は、今日の木苺摘みには、重大な任務があるのです。

なんとっ!!今日は、私の専属侍女の、サリーの誕生日なんです。

サリーには内緒で木苺のパイを作ろうと、うちの専属シェフのマイクと一緒に計画したの。

私は木苺探してくる係だから、急いで見つけて帰らなきゃ!



お祖父様はブラックの手綱をひきながら、私の後をゆっくりついてきてくれている。

私はトゲに気を付けながら、丁寧に木苺を摘んでは、袋に入れるを繰り返します。





「…………これぐらいあれば、いいかしら。」



袋には結構な量の木苺が溜まりました。

お祖父様も手伝ってくれたので、いつもの倍の早さで予定していた量が集まりました。

あとはこれを持って家に帰るだけです。



袋から視線をあげた時、私の目に馴染みの薬草が視界に入りました。



「あっ、ゲリゾン草。」



それは、一般的な回復ポーションを作るための薬草です。

私は薬学の勉強もしているので、薬草の事も少しは知ってます。まだまだ初歩の初歩だけど…。



私は、見つけたゲリゾン草を根っこから引き抜きます。

根っこもポーションの材料になるので、とても大事なの。

ゲリゾン草は1本見つければ、周囲2メートル以内に群生して生える特色があるので、周辺に生えていたゲリゾン草も根っこから引き抜き、土をはらう。



丁度、近くから川の音が聞こえたので、お祖父様に声をかけ、川で根っこを洗うことにしました。



ここは下流なので、水の流れも穏やかですが、昨日の雨でいつもより川の水が増量しているように感じます。



「おい、エマ。勝手に行くな。なにかあったらどうするんだ。」



お祖父様は駆け足で駆け寄ってきます。

私はお祖父様に謝りつつも、心の中で心配症だなぁと思います。でもこれはお祖父様には内緒。



採取した薬草の根を綺麗に洗い、木苺とは別の袋へ入れて、立ち上がりました。

すると対岸から、太陽に反射してキラッと何かが光りました。

眩しいっと目を細めて見てみると、なんと!




「お、お祖父様!!あれは人ではありませんか?」


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