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最終章 第3話  「阿鼻叫喚機動」

20210904公開




【‐皇国歴313年「衣月いづき」29日朝‐】



 クロンヘルム大断層をえぐる様にして流れていた川がどうして干上がったかは誰にも分からない。

 いつ干上がったかも分からないので、大昔の事としか言いようがない。

 まあ、俺は3つ目の夢で見た動画受信魔道具テレビで、似た地形が出来る過程を観た覚えが有る。だから想像は出来る。きっと大昔は台地の上にも雨が沢山降っていたのだろう。

 それらの雨が1つにまとまって川となり、台地を南下し、大断層を削って行ったという感じだと思う。

 更に言うなら最初は滝だったと思う。落差3千爪カク(約45㍍)の滝を、ちょっと見てみたかった気もするな。

 出来上がった大溝帯は長さ2セリ(約3㌔)、幅1.5ミチ(約225㍍)という、クロンヘルム大断層を下る大溝帯街道を整備するには十分な大きさを誇っていた。


 待っていた報告は、ダンシャの街の騎兵が最後尾につかせていた荷を積んだ獣車群が、しばらく台地の端で待機していたが、遂に大溝帯街道を降り始めたというものだった。


 チャイン帝国の指揮官は余程焦っていると思える。

 もしくは逆か?

 油断をしているのか? 楽観視をしているのか?

 あまり注意力や危険察知能力が発達していないのか?

 どっちにしろ、敵の敵失は味方にとって最良の援護になる。


 ここから大溝帯街道までは大体20セリ(約30㌔)の道程になる。

 もし士家隊なり補隊なりだったら、徒歩の行軍になるから丸1日は掛かる距離だ。

 だが、走力は高くないが長時間走る事が出来る騎獣のゴッグ2頭が曳く軽装甲兵員輸送獣車は、その距離を4千脈セク弱(約1時間強)で駆け抜ける。

 まさに、統合鎮護中隊にしか出来ない規模スケールの大きな戦場いくさばの描き方と言える。



「さ、さすがに・・揺れるね」

「ええ・・・ 街道として・・整備されていない道を・・・走って、いますから」


 第1機動小隊が選定した道程は、まっさらの荒野を走るものだった。

 当然だが、往復で違う道程を使っている。行きは遠回りになるがタダ村に向かう街道を使った。

 部隊の移動を示す多数のわだちが残らないようにだ。

 今、走っている荒野は最短距離で大溝帯街道に合流出来る道程だ。

 当然だが、荒野を走る獣車は揺れる。

 さすがに小型で重心も低めで、詳しくは知らないが板バネを使って衝撃を吸収している短距離用皇族専用獣車なので、そうそうひっくり返る事は無いだろうが、軽装甲兵員輸送獣車は大変だろう。

 確実に床面に直接寝転んで、身体が転がらない様に固定して、獣車の重心も下げて転倒防止に努めているだろう。

 

 ちょっと第1機動小隊を酷使し過ぎたかもしれないな。

 なんせ、公式行事の時は呼び戻したけど、それ以外ではかなり遠出をさせて来たからな。

 きっと、意趣返しでこんな悪路を選定したんだろう。


 

 隊員の消耗の確認も兼ねて、予定していた待機地点のかなり手前で一旦小休止を入れる事にした。

 目に入る隊員の全てが疲れ果てていた。

 仕方が無いので、給水も許可する。

 急行時の休憩は今後の課題として覚えておこう。


 そんな中、意外とニールス第3皇子殿下は元気だった。

 今も、平気な顔で背を伸ばしている。

 護衛のタリエ・ヘルバリ外重とのえ派遣衛士隊隊長なんかは平気な顔を装っているが、顔色が悪い。

 何というか、彼は結構な悪手札びんぼうくじを引かされている気がする。

 統合鎮護中隊では、他では味わえない様な訓練を受けさせられたし(体力と走破力向上の為の訓練は我が中隊だけが採用している)、獣車を使った路外機動訓練も受けさせられた。

 皇子の親征に護衛として付き従う栄光は大きな魅力だが、それを補って余りある苦労をしょい込んでいる。


 機会が有れば、美味い酒でも奢る事にしよう。

 まあ、俺は飲めないが、装甲擲弾科第2小隊隊長のグンダー・クヌートソン1等士なら美味い酒を知っているだろう。


 



お読み頂き、誠に有難う御座います。

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