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第1章 第14話 「エクスランチャー」

20201019公開




 僕の『エクスランチャー』は現在、改良を重ねて『エクスアロ』とは別物の威力になっている。

 切っ掛けは発想の転換だった。

 色々な試行錯誤をしている中で、夢の中で知った『周波数』という概念を思い出したんだ。

 そこで、鏃に『エクスランチャー』の圏外魔術(アウタムマギア)を掛ける時に『周波数』を思い浮かべるという実験をすると、威力が変動することに気付いた。

 低い周波数を思い浮かべれば威力は下がり、高い周波数なら威力は増大する。

 1番厳しい設定なら、着弾点からまっすぐ3千爪(カク)(約45㍍)内は生身で居るのは危険だ。かなりの確率で衝撃波で引き飛ばされる。魔術(マギア)の効果が残っている鏃の金属片に当たればかすっただけで重傷を負う。左右15度以内に居ても危険だ。左右30度で『エクスアロ』相当だろう。

 殺傷範囲の実証の為に人体に見立てて立てていた丸太の列がなぎ倒された光景は、我ながらぞっとした。

 影響する数値(データ)を調べる為に更に数百発の試射を追加で行って、現在は1番効率の良い周波数に設定した上で圏外魔術(アウタムマギア)を掛けている。

 まあ、それでも着弾点から左右合わせて30度の角度で2千爪(カク)(約30㍍)は危害域だ。

 そうそう。『エクスランチャー』とは別に、『エクスモーター』もこの時に開発している。

 2番目の夢で見た『迫撃砲(モーター)』を参考にしたけど、『エクスランチャー』と基本的には大した違いは無い。

 初速を思いっきり遅くして、爆風の分布を調整しただけだ。

 大きな仰角で撃つことで、防壁で守られた敵や広範囲の面を攻撃する時には効果的な圏外魔術(アウタムマギア)になる。いつか必要になるとにらんで開発したんだ。



 3発も撃つ頃にはチャイン帝国側も何か異常な被害が発生していることにやっと気付いたようだ。

 気付くのに遅れた理由は、まず第1に『エクスランチャー』の鏃(やじり)が高速過ぎるという点。

 『エクスアロ』ははっきりと言えば弓矢だ。飛んで来るのが見える。

 対して『エクスランチャー』は見えない。

 気が付いたら被害が発生している状態だ。 

 次に、『エクスアロ』が楕円形に危害域が発生するの対して、僕の『エクスランチャー』は高威力ながら狭い角度の危害域を持つという特徴を持つ。

 具体的に言うと、最前列の騎兵の1人が文字通り四散したかと思うと、最後列を駆けている5列目の騎兵5人くらいまでが扇状に吹き飛んでいるのだから一種の怪奇現象のようなものだ。

 人間は理解していないモノに対しての対処を迅速にできない。

 まずは『何が起こっているのか?』ということを知ろうとする。

 でも、分からない。

 当然、対処できるはずが無い。

 最後に、最後列の被害に対して最前列の被害の方が少ないことが挙げられる。

 最前列を駆ける者からしたら飛び飛びに欠けていくのだから被害に気付きにくい。だから、とにかく前に進む意識のままだ。

 後列になればなるほど、前から衝撃波、まあ爆風と高速の破片なんだけど、とにかく危険が襲って来るのが分かる。

 そんな状態で発生するのは、後列の脚だけが鈍るという現象だった。



「『エクストン』投てき用意! 放て! 『アロ』及び『ハイアロ』放て!」



 チャイン帝国騎兵の状況に関係なく、ラッセ・ヨンセン/JN隊長の命令が矢継ぎ早やに下された。

 この段階に至って、やっとチャイン帝国の最前列を無事に駆けて来た騎兵は違和感を感じたようだ。

 左右を見たり、後ろを振り返った騎兵が居た。

 多分だけど、こういうことなんだろう。

 いつも感じている後列の気配が無いことに気付いたことが1つ。

 いつもと違って目の前の敵が次々と迎撃の手を打っていることが1つ。

 自分たちの突撃に対して大きな恐怖を感じていないことに気付いたことが1つ。

 自分たちに向かって何か投げて来たことへの対処を思い付かなかったことが1つ。

 上り坂に差し掛かろうとするので、周りの状況を確認しようとしたことが1つ。


 夢の世界で言う『手榴弾(グレネード)』に相当する『エクストン』が放物線を描いて、チャイン帝国騎兵最前列を襲った。

 破壊力だけなら『エクスアロ』を上回る『エクストン』が次々と爆発した。

 真正面からやって来ていたチャイン帝国騎兵最前列は穴だらけで、突破力はかなり落ちたように見える。



「槍壁用意! 槍、上げろ! 『アロ』と『ハイアロ』は続けて放て!」


 更にラッセ・ヨンセン/JN隊長の命令が続く。

 密度も無く、勢いも失ったチャイン帝国の騎兵最前列だけど、30人ほどが意地だけで突撃を続けて来た。

 騎槍(ランス)が届くところまで到達できれば、なんとかこちらの守りを破れるだろうという気迫は認めるが、多勢に無勢だ。上り坂で失った速度(いきおい)を回復できずに突っ込んで来る騎兵に対して、2本3本4本5本と槍が集中する。狙いはガッグの首前面だ。息が上がっているせいか、無防備に晒しているから狙いやすい。遂には槍を嫌って後ろに下がってしまう。

 『槍衾』に完全に勢いを止められた上に、至近距離で放たれた45人分の『アロ』と『ハイアロ』が騎兵に集中して次々と命中していく。

 


 その間、僕はひたすら『エクスランチャー』を放っていた。

 狙いは他の士家隊の円陣に向かうチャイン帝国の騎兵部隊だ。

 味方の損害が少なければ少ない程、今後の戦いが有利になることも有るけど、なんとしてでも、ここでチャイン帝国の騎兵の数を削っておかなければ、次の戦いでは対応策を考えて来るかもしれない。

 初見で後手に回っている今のうちに削っておきたい。

 


 最終的に、僕が放った『エクスランチャー』は18発に及んだ。




お読み頂き、有り難うございます。

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