第五十九話
控え室についたリアは見るからに高級そうなふかふかなソファに腰をおろし、先程までの事をガルスに説明した。
「それはつまりヨシュアが知っているって意味じゃねーか?」
「それはどういうことにゃ?」
「ヨシュアは王族だが、騎士団にも所属しているだろ?だからその影響で、各地へ遠征に行くことがあるんだ。これは俺からの提案でな、俺はダンジョンに潜るようになって強くなれただろ?だから全員がその方法なら強くなれるって思って遠征と称して各領土にある迷宮やダンジョンに潜らせたんだ。」
「そこでヨシュアが水地のある迷宮へ潜った可能性がある。と?」
「そういう事だな。」
ガルスの肯定を聞いたリアは、顎に手を当て思考を巡らせた。
ヨシュアがその迷宮を知っているのであれば話は早い。ガルス曰く迷宮に入るには領主の許可が必要との事だし、王族であるヨシュアが頼めば簡単に入る事ができるだろう。それに水地まで案内を頼めば時間はさらに短縮できる。もし知っていなかったとしても、ヨシュアの協力はかなりの力になるだろう。
「それはかなり楽に事を運べる可能性があるにゃあ。だけど、にゃんでそれを先に教えてくれなかったのかにゃ?」
夜会に出る必要などなかったじゃないからと怒るリアに、ガルスは仕方ないじゃないかと答えた。
「俺がそれを聞いたのは王妃サマに説明してる時だったし、口を挟む訳にはいかねぇからよぉ。しかもその場ですぐに話をつけちまうし、言う暇がなかったじゃねーか」
「それは、申し訳ないにゃ。ガルスには先に言うべきだったのにゃ。」
ガルスには論されてばかりだとリアは落ち込む。
「ま、ヨシュアの行動は気になるが、今はもう気にするなよ。」
「わかったにゃ。」
その後、二人は他愛のない話をして、その日を終えた。
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翌日。
狐にそのことを伝えたリアは、そのまま騎士団の訓練場へ足を運んだ。
「ガルス!」
そう言って手を振って駆け寄るリアの先にいるガルスを狐とヨシュアがムッと睨む。
昨日の事を気にしているのだろう。そう察したリアとガルスは、顔を向き合わせると苦笑いをこぼした。
仕方なく狐とヨシュアも呼び寄せて、リアはヨシュアに水地のある迷宮について尋ねた。
「ええ。私の遠征先に、確かにそのような場所がありました。中では人面魚が泳いでいましたから、間違いないと思われます。」
「案内をお願いすることはできるかにゃ?」
「昨日、お任せ下さいと伝えたではありませんか、レミリア嬢。」
どうやらリアのフルネームだと思っているらしいヨシュアは笑顔でそう答えた。
その後、予定などを話し合った結果、メンバーはリアと狐に付け加え、ガルスとヨシュアも付き添うことになったので、出発は四日後という事になった。
ちなみに迷宮のある領土までは馬車で三日かかるのだそう。
走った方がかなり速いのだが、ガルス曰く礼儀としてはあまり良くないということで馬車である。
その後も細かく予定を話し合い、リアと狐は王城を後にした。
「最初っから言っときゃあ良かったんやな」
「それにゃ。ガルスと話してて反省したのにゃ。
それと、その、夜会では助けてくれてありがとにゃ。狐は三回踊る意味、知ってたんだにゃ。」
「あー。まあ知らなかったんやろうなあとは思ってたで、もっと早く助けられなくてすまんな。」
お互い様だと笑いながら二人は城下町を歩いた。
お昼時で街は賑わっており、昼間からお酒を飲んでいる人もいる。そんな光景が新鮮で面白い。
二人はオススメされた宿に入ると、別々に部屋をとって体を休めるのだった。
読んでくださりありがとうございます。
報告なのですが、この話を三人称から一人称に変更しようと思うのでお引越しをすることにいたしました。
話が追いつくまではこちらでも一日一話投稿しますが、追いついてからはそちらで投稿しようと思っています。アカウントは変わらず、新しくそこで作品を投稿していく予定です。
もう既に掲載を開始しているので、よろしければそちらの方もブックマーク、ポイント、レビュー、感想、誤字報告などお願いします。




