第二話
「それじゃあ適性試験を行うぜ。」
人がギリギリ10人入れるくらいの狭い闘技場で、試験監督と思われる男は告げた。
堅苦しそうな見た目だが、話し方はフランクだ。
「今回適性試験の監督を務めるギルド長のグレンだ。よろしくな。」
「リアです。よろしくお願いします。」
そうして二人は握手を交わす。
グレンの話によると、適正とは、剣、魔法、体術のどれに優れているかを見るものだとか。
才能がなくても訓練すれば大抵はできるようになるので、適性試験と言っても本当に形式だけのようだ。
最初は剣。
木刀を持って向かい合い、かるく指導を受けつつ打ち合いをして終わった。
次に魔法だ。
と言っても、魔法はレベルが上がることによって習得できるらしい。
稀に、初めから魔法を使える魔法使いというスキルを持った人用の試験なのだとか。
「魔法使いのスキルはないがが魔剣召喚のスキルを持っているんだろう?それを試したらどうだ?」
グレンの提案に有難く承諾する。
(どうやって出すんだろう。)
それを思っても聞きづらい。
何故か、最初からできて当たり前みたいな態度をとられていて出来ないと言えない。
少し悩んで、まずは念じてみることにした。
目を瞑り心の中で叫ぶ。
(氷の魔剣!!!)
驚いた。目を開けると手の中には、氷でできたいびつな形の短剣が収まっていたのだ。
リアの想像よりも小さくて、少し脱力感を覚える。
グレンに使ってみろと促され、的に向かって切りつける。
すると魔剣から尖った氷がいくつも飛び出し、的を真っ二つに切り裂いた。
純粋な驚きにより、お互い顔を見合わせたまま固まる。
沈黙を破ったのはグレンだった。
「すげぇな嬢ちゃん。魔剣召喚なんて初めて見たが普通の魔剣より数倍もの威力じゃねぇか。こりゃあ武器いらねぇな。」
「…そう、ですね。」
リアは本気で驚いた。まさかこんな威力が出るとは思わなかったのだから。
(いや、そりゃぁね?自分Tueeeeとかなったら楽しそうだなとは思ったけど、これはレベル1の威力とは思えないよ。基準がわからないけど多分私のスキルTueeeeよ。やめだ。これ考えちゃいけないやつだ。)
そうリアは現実逃避をする。
気を取り直して体術試験だ。
目の前にサンドバックのようなものが用意され、「お手本だ。」と、見せるようにグレンは拳や蹴りを打ち込んだ。
それを見てリアも真似して打ち込む。思ったよりも力強く殴れた。
実際の殴り方は猫パンチだったが…
ステータスが関係しているのか、本人でも驚いたほど動きが早い。
「いい動きするな。よし、軽く対人戦やろうか。もちろん手加減するぜ。」
「え、でも私喧嘩とかも一度もやった事ない…」
「大丈夫だ。体が勝手に動くさ。」
リアの心配をよそにグレンは突っ込むと拳を振りかぶる。
慌てて右によけるとリアは体制を整える。
「できるじゃねえか。」
本当に思い通りに体が動く。拳をよけながら自分の攻撃の機会を探る。
今だ。
そう思って一気に距離を詰めると下から思いっきり拳を振り上げた。
「あぶねっ。だが惜しいな。」
慌ててグレンは後ろにのけぞると、その体制から回し蹴りを繰り出した。
「~~~っ!!」
「あ、しまっ!」
気づいた時にはもう遅く、グレンの足がリアの意識を刈り取った。
~~~
話し声が聞こえ、段々と意識が浮上する。
目の前でグレンがミラに怒られている。
「お!!」
「大丈夫でしたか?一応この世界でも戦闘不能にはなりますから気を付けてくださいね。」
その言葉に、ここはゲームの中なのだと再認識する。
痛みも感じない。疲労もない。
ただ五感や空腹感はあるようだ。
「そうだ。適性試験が終わりましたのでリアさんはEランクになりました。これでクエストを受けられますよ。それとこちら」
差し出されたのは大きめのリング状の何か。
受け取ると、とたんに左腕に吸い込まれ、輪の大きさが小さくなり腕の太さにフィットした。
「こちらは冒険者の腕輪と言って、これを付けることによってステータス魔法や収納魔法が使えるようになります。身分証明にも使えるのと、お金の取引は全てこの腕輪でになるので壊さないでくださいね。壊したらペナルティがございますのでお忘れなく。」
ステータスが自由に見えるのはありがたい。
そう思ってステータスを確認して、リアは違和感を覚えた。
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【リア】(ランク.E)
BP:0
所属:なし
種族:猫人族
LV:3 (次のレベルアップまで 1478/3000)
力:210
耐久:90
体力:195
敏捷:300
魔力:500
器用:240
スキル
主導者…自分及び仲間のステータスが1.5倍になる。また、自身の経験値の増加量が1.5倍になる。
だだし、ソロの場合は発動しない。
魔剣召喚…自分の魔法属性の魔剣が召喚できる。ステータスに応じて性能も変化する。
コール…運営と連絡できる。また、緊急事態と判断したときのみシステムに関与する権限を持つ
魔法属性
氷属性、風属性
所持品
冒険者の腕輪
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(Lv3…?)
二つも一気にレベルが上がっていたのだ。
しかも新しくスキルが追加されていた。
読んでくださりありがとうございます。