第五十一話
本日三話目の投稿です。
「そういやぁ、ケットはプレイヤーなんだろ?このゲームは一応なんでもありだとは言え、ほとんどのプレイヤーが冒険者をやってんのにどうして商人をやろうと思ったんや?」
道中、暇を持て余した狐がケットに向かって話題をふった。
なお、本来外で護衛するはずの二人がなぜ一緒になって乗っていること言うと、リアが探知スキルで近くの魔物を全て氷漬けにして進んでいるため問題ないからだ。
「そうですねぇ。私は元々ラノベが好きでよく読んでいたのですが、その影響でどうしても商人というものをやってみたかったんですよ。ですがね?現実だとそんな職業は全てAIがやってるし、なれるわけがなかったんですよ。」
そうしみじみと言うケットのような人はこのゲーム内に多くいる事だろう。ケットと全く同じ理由の者は少ないだろうが、働き口がないのは確かなのだ。
リアも狐もそう思いながらケットの話を聞いていた。
「このご時世やもんな。ほんと、このゲームに救われてる奴は数えきれないくらいいるんやろうな。」
リアは別の意味であるが、リアもケットも共感して頷いた。
と、突然リア達を乗せた馬車が停止する。
「どうした?」
ケットが馬車のテントから顔を出し馭者に尋ねる。リアと狐もそれに便乗して外へ出る。
外には漫画かとツッコミたくなるような盗賊の六人組がニヤニヤしながら立っていた。
「「漫画か!!」」
我慢できなかったようで狐もケットと大きくズッコケてツッコミを入れた。
だが仕方ない。このゲームは『まるで異世界』がキャッチコピーなのだ。異世界定番を出さなくてはまず成り立たない。ゲーム世界なのだから盗賊は当たり前。それが分かっていても、実際に見てしまえば受け入れ難いのだ。
「おうおう。可愛い嬢ちゃんも連れてるしゃねぇか。命が欲しけりゃ、おとなしく全ての財産と嬢ちゃんを差し出しな。」
またまたセリフもド定番すぎて草すぎる。
このセリフにはこられきれなかったようで、狐もケットも笑い転げた。可哀想なのは馭者である。盗賊に怯えながらも二人の状態困惑してオロオロしている。
リアは必死に笑いを堪えて前へ出る。
「つ、捕まりたくなきゃっw…今なら見逃しwてwあげるwからwwさっさと去るのにゃ(笑)」
「何笑ってんだ!ああ?!」
「笑ってwwwないにゃwww」
盗賊はイラついたようにリアを睨みつけるので、リアは慌てて弁解した。だが笑っている。弁解など無駄だ。笑っているのだから。
「ちっ、ふざけた真似しやがって。お前らァ!一気に片付けろ!」
盗賊のリーダーと思われる男が叫ぶも、誰一人としてその場を動かない。いや、動けない。
なぜなら初めからリアが足の裏を氷で地面と固定しておいたのだから。
狐とケットはさらに大爆笑する。
「おとなしくwお縄につくのにゃwwwもうw逃げられないにゃwwww」
リアは必死にあるあるのセリフを絞り出したが、笑いすぎていて雰囲気は全く出ていない。
今まで現実離れしていても馴染めていたリアでさえ、この定番は馴染むことが出来なかったのであった。
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「よろしく頼むにゃ。」
王都に着き、すぐさま治安兵を呼び出したリア達は、盗賊六人を突き出していた。
治安兵は驚きつつも同僚や巡回兵を呼び出して連れていくように指示を出す。
「ありがとうございました。本来、私達の仕事であり、私達がやらなくてはいけない事なのに任務を怠り、お手数お掛けしてすみませんでした。すぐに調べた後、相応の報酬をお支払い致します。」
それだけ伝え、治安兵はその場を去って行った。
盗賊はそう簡単に捕まえられる訳では無い。責任感の強い治安兵だったのだろう。
そう結論付けたリアは三人に進むよう促して自分も歩き始めた。
少し進んだところで馬車が停車する。ここが目的なのだろう。
「ありがとうございました。おかげで安全な運搬が出来て助かりましたよ。これからは私はここで店を出す予定ですから、よろしければ遊びに来てください。おまけしますよ。」
そうにこやかに言うケットと別れ、リア達は街中へと歩いた。
「観光だにゃ!これぞ異世界だにゃ!」
中世ヨーロッパのような街並みにリアは興奮を抑えきれずにはしゃぎだす。
「落ち着くんや。聞き込みするのを忘れてるんやないか?」
「忘れてないにゃ!」
「そかそか。じゃ、予定通りここで手分けして情報集めでもするか。」
「じゃ、2時間後ここで合流にゃ!」
呆れるように言った狐を置いてリアは走り出す。
リアは人の多い場所にそこまで慣れている訳では無い。だからこそ人一倍に興奮してはしゃいでしまうのだ。
それでも目的を忘れた訳ではなく、近くの酒場に入るとさっそく情報収集を始めるのだった。
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次話は17時に投稿します。




