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第二の人生はゲーム世界で  作者: 一 咲也
転生先はオンラインゲーム
53/67

第四十六話

五十三階層___水の都。そう評するのが妥当だろう。

その階層のほぼ全域が海で占めており、唯一と言ってもいい通路はすれ違う事すら困難なほどに狭かった。水中には大きな城のような建物に、無邪気に笑いながら泳ぐ人魚達。

そこは、何かに比喩するのがおこがましいほどに美しかった。


「綺麗…」


自然とそんな感想が口から洩れる。

リアと狐は、一人がギリギリ通れるほどの通路を進んだ。進んだと言ってもほとんど進めていない。

階層へ下りて二メートルも進まないうちに次の階層への階段が姿を現したのだ。


「この階層はセーフティーポイントなんか?」


狐は誰に問うでもなくそんな疑問を口にした。

セーフティポイント。そう思ってしまうほどに、その階層には何もなかった。広い階層にあるのは海とたった二メートル弱の通路だけ。かと言って、幅の狭すぎる通路は休むのにはむかないだろう。

唯一のモンスターと思われる人魚は、襲ってくる気配すらない。それどころか、ほとんどの人魚のレベルが10以下だった。


何より問題なのが、五十四階層への階段が水の中にある事だろう。

下に降りる方法がない。


「どうする?」

「どうするかにゃあ…」


頭を悩ませても方法など思い浮かぶわけがなく、ただ時間だけが過ぎていく。

階層内では風も吹かないため波がない。波がないということは音がないということ。ぴちゃん。という水が滴る音以外は_


『キャハハ』

『誰カ来タヨ?』

『陸ノ生キ物ヲ見ルノハ始メテダ』

『救世主カナ?』

『キャハハハハ』


音の聞き取れない。頭に響いてくるような会話がリア達の鼓膜を叩く。周囲を見渡せば、いつの間にか人魚達に囲まれていた。

慌てて身構える狐を、リアは手を上げ視線でやめさせた。


人魚達に敵意はない。あるのはリア達への好奇心。


「だれ?」


リアは恐る恐る人魚達へ尋ねた。


『フフ。私タチノ事ハ知ッテイルデショ?』

『同胞ダカラ助ケニ来テクレタノ?』

『下ヘ来テ。巫女様ガ待ッテル』


リア達は顔を見合わせた。


「行くのか?」

「…行けたらにゃ、、」


下へ行こうにも行く手段がない。

来いと言われても行けないのだ。どうすることもできない。


『道ハ作ルヨ』

『階段ヲ降リテ』

『通路ヲ進ンデ、オ城マデ来テ。』


人魚達はそれだけ伝えてトプンと海へ潜って行った。

気がつけば水に浸かっていた階段は、トンネルのように空いていた。


「なんか水族館によくある水中回路みたいやな。」

「……。」


狐が面白そうに笑って共感を求めたが、リアは共感することも否定することも出来なかった。

返事をしないリアが心配になったのか、狐は体をかがめて覗き込む。


「リア?」


リアは生まれてからずっと入院していた。

あの世界では水族館どころか、海や魚すら見たことがなかった。点滴を常に打っており、食べ物ですら、初めて口にしたのはこちらへ来てからだ。魚は三十階層の湖で初めて見たが、水族館というものはどうしても分からないのだ。


「…水族館って場所、行った事がないのにゃ」


寂しそうに言ったリアを見て何かを察したのか、狐は笑ってリアの頭に手を乗せる。


「じゃ、ここが初めて来る水族館やな。」


その言葉にハッとリアは顔を上げ、たちまち笑顔になった。

水族館というには、ダンジョンという物騒な場所で魚も少ないので心もとないが、遠くで人魚が泳いでいるのが見えてとても神秘的な空間だった。

[初めて]の水族館。それが本物かなどリアには関係がなかった。「水族館のような場所」というだけで、リアにとってはかけがえのない[初めて]なのだから。


「そうにゃ。初めて見るけどすっごく綺麗にゃ。」


リアは見上げて微笑んだ。

読んでくださりありがとうございます。


なんかグダグダしててなかなか先に進まないのすごく申し訳ない…

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