第四十五話
「つ!ぎ!こ!そ!は!みゃーが倒すにゃ。」
三十八階層手前。リアは狐に何度目かも分からない宣言をしていた。
リアが倒させて貰えなかった事を気にしている訳では無い。だが、どうしてもリアは自分の存在意義を見出したいのだ。
実際は、ガルスもカインもレインも、狐だって自分が戦えるのだというのをアピールしたくてリアの前でああいった行動をしたのだが、リアは知る由もない。それに、皆はわかっているのだが、リアも自分が戦える必要不可欠な存在だとアピールしたいのだ。皆が知っているのをリアが知らないだけなのだが、承認欲求とでも言うべきだろうか、リアは認めて貰いたかったのである。
「もうわかったゆーてるやろ。自分でも戦える事がわかったし十分やて。」
狐は苦笑いである。
リアは頬を膨らませてじーっと狐を見つめた。
そんな空気の中三十八階層へと到達する。と、
「ならいいのにゃ。早く進みたいし一撃で終わらせるにゃ。」
それを言い残してリアは地面を一蹴り。懐へ入り、回し蹴りの一撃で玄武を光の粒子へと変えた。
狐は言葉を失って立ち尽くす。
「終わったのにゃ。」
「いや見ればわかるて」
そうつっこんでしまったのは仕方の無い事だろう。
リアはというと自分の仕事を出来たと意気揚々としていた。
「満足したか?」と問えば、
「ま、満足も何もみゃーの仕事にゃ!」と帰ってくる。
「リアは何に焦っているんかねぇ」
狐は誰に言うでもなく呟いた。
キョトンとしているリアが面白くて、狐は左手で口を抑え笑いを堪えて、誤魔化すようにリアの頭を撫でた。
「ほら、次の階層行くんやろ?」
「うん!」
次の階層へ歩いていった狐を追ってリアは走る。
それから二人は笑いながら階段を降りていくのだった。
三十九、四十、四十一。着々と攻略を進めること3時間。無休で走ったリア達は四十六階層までたどり着いた。六十階層までまだまだあるのだが、休まなくてはさすがにリアでも支障が出る。まだ夕食も取っていなかったことから、遅くなったが休むことになったのだ。
「はいこれ。」
リアが渡したのはお馴染みのサンドイッチ。野菜の鮮度は抜群で、狐にも好評のようだった。
リアは自身のアイテムボックスの機能を説明する。
「すごい便利なんやな。生物とかも新鮮なままやしかなりええな!」
「そうなのにゃ!出来たてのご飯がいつでも食べれるのは特にありがたかったにゃあ。」
リアは目をキラキラさせながら話していた。
その後ものんびり会話をしていると、疲れが出てきていたようで、だんだんとリアの目がトロンとしてきていた。
それに気づいた狐は微笑んでリアの目じりをそっと親指で撫でる。
「疲れたやろ?時間もあるしゆっくり休んでからまた攻略しようや」
「うん。ちょっとだけ眠りたいから見張っててもらってもいいかにゃ?」
話し声もだんだんとゆっくりになっており、睡魔が限界に達しているのだと誰が見てもわかるほどだ。
狐はあやす様に優しく話す。
「それは全然構わんで。おやすみ、リア。」
狐がそっとリアの頭を押して自らの膝にのせる。限界だったリアは何も言わず、完全に意識をシャットダウンさせるのだった。
こんなお兄ちゃん欲しかった()
読んでくださりありがとうございます。
今日はもう1話投稿するかも??




