第四十三話
本日四話目の投稿です。
「ここが三十七回層か?」
初めて来る狐は物珍しそうに階層を見渡した。
「そういえば、どうして狐は攻略組について行かなかったんだにゃ?」
狐が向こうに行っていればこうして合流することもなかった。なぜ最前線を望んでいた狐が三十階層へ残ったのか気になったのだ。
狐は強さにこだわるのをやめた事を説明した。
「リアは、どうしてそんなに強くなったんだ?」
狐の問にリアは頭を悩ませた。特に理由もない。ただいつの間にかレベルが上がっていたのだ。
何を言うか考えて、リアはそのまま伝えることにした。
「みゃーは誰かの助けになりたかったのにゃ。少しでも先に進んで、沢山マップを作っていたらこうなっちゃったにゃ。」
「え、じゃああのマップってリアが作ったのか?」
狐が驚きを隠せずに尋ねる。
「ギルドで貰えるマップならそうにゃ。というか、なんかこの話前にも誰かに話した気がするにゃ。」
誰だったか思い出せずにうーんと唸る。
「すごいと思うで。普通人間は自分を何よりも優先するもんや。なのに真っ先に誰かって、お人好しって言われるやろ?」
「…うん、そう、にゃ。」
狐の言葉に、リアは急に沈んだ気持ちになってしまった。
リアが思い出すのはかなり前の出来事。まだ、リアが実験台になるのが決定する前の事だ。
「あー、褒めたんだからポジティブに受け止めろよ?」
そう言った狐に、リアは笑ってうんと答えるのだった。
別にお人好しと言われるのが辛いわけじゃないのだ。ただ、思い出してしまっただけなのだから。
「さ、じゃあさっさと攻略してみんなの元へ戻るにゃ!」
「そうやな。」
三十七階層へたどり着くまでに、リアは47、狐は30にレベルが上がっていた。かなり有利に立ち回れるだろう。
「狐は帰ったらどうするのにゃ?レベル上げをやめてどこか行くのかにゃ?」
「あぁ、旅行でもしようかなって思ってるんや。…そうだ、リアも一緒に来ないか?良ければやけど、人助けは他の場所でも出来ると思うし、ここだけじゃなくてもいいんやないかなーって…」
狐は照れくさそうに頭をかいた。
ちなみに現在はモンスタールームで戦闘しながら会話をしている。とてもそうは思えない会話の内容だが、二人とも雑談をしながら戦えるほどにそこは一言で言って余裕だった。
「人助けは後付けの理由かにゃ?」
リアはからかうように聞けば、狐はそっぽを向いてしまう。
リアは戦いながら考え込んだ。
たしかに、ここだけに留まっているのでは世界を知らなさすぎるだろう。それでは生前のリアと変わらない。歩けるようになっただけだ。
カインもレインも、もう十分強くなっている。もう残る理由はほとんどないのだ。
それに、旅をしていればガルスにも会えるかもしれない。
「たしかに旅するのもたのしそうだにゃあ、プレイヤーはここだけにリスポーンした訳ではないみたいだし、他の場所に行ってみるのもありだにゃ。」
このゲームにおいて、初期ログインの地点はランダムだ。と言っても、どのランダムリス地にも必ず冒険者ギルドが存在するため、不利なことなどは無い。
追記としてはプレイヤーがリスポーンする地点のみ、移転魔法が使用できるようになっている。何か用があれば、自分のいる近くのリス地から目的地付近のリス地へ飛び、そこから徒歩で移動しなくてはいけないので、リアは1度も使ったことがなかった。
「じゃあ、いつ行く?俺はもう抜ける予定だし、リアはもう仕事は終わりやろ?」
嬉しそうに話す狐が面白く、リアはクスリと笑ってしまった。冷静で表情を変えた事などほとんどなかった狐が、面白いくらいコロコロ表情を変えている。こんな狐を誰が想像しよう。
「そうだにゃあ、旅に出る前に六十階層までは行きたいにゃ。そこまで行けば暫くはみゃーがいなくとも大丈夫だと思うしにゃ。」
そう言うリアに、狐はまたも目を見開いた。
(やっぱり面白い)
「それ相当時間かかるやろ?!今あるのが三十八階層だとして、マッピングするのにもかなりの時間をようするはずや!」
「あー」
リアは自分のマップスキルを伝えていない事に気がついて、それを説明した。
その話が終る頃には、モンスタールームの敵は全て抹殺されていた。
それからも着々とルームを攻略し、三十八階層へ辿り着いた。
「じゃあ、攻略組を抜け次第戦闘を最小限に抑えて六十階層まで降りるんやな?」
「そうなるのにゃ。」
リアは満足げに頷いた。
狐も乗り気だった。なぜなら、六十階層もセーフティポイントだということは、三十階層のように綺麗な景色があるのかもしれないと思ったからだ。
「さ、雑談は一旦やめて、戦闘に集中するのにゃ!」
突然構えたリアを見て、ようやくここがダンジョン内である事を思い出した狐は「はいはい」と言って自分の刀を構えたのだった。
ちなみに狐の戦闘スタイルは日本刀が主体でたまに鬼術を使います。
強化魔法が得意かな!
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