第三十九話
遅い。
全員がそう思っていた。狐達三人が下の階層へ向かったのはこちらの世界の時間の深夜一時頃。二十六階層はモンスターより隠しルームなどの要素が多いため、攻略自体は簡単だ。
しかも、隠しルームの解放条件は幸運値の所有。入るか入らないかも選べる特別待遇。
あの三人はまず入っていないはずだ。
現在の時刻は明け方の4時。みんなが待つのに疲れてだらけていた。キラー曰く、パーティーの名前が消えていないのでデスしたわけでは無いと言う。
だからおかしすぎるのだ。
どれだけ時間がかかっても戻ってくる気配はない。
まさか二十七階層に行ったのだろうが?そう考えもしたが、あそこで戦えるのは狐のみ。黒羽と瀬人は足でまといだ。それに狐も、1体1が限界だろう。
そんな無謀な事をするとはリアには思えなかった。自称攻略組はたしかに爪が甘いが、リーダー格の三人はまともだ。と、そう願いたかったのかもしれない。
暇で、何も無くて、つまらない。
そんな感情は、次の瞬間には許されなかった。
ルーム全体が泣き叫ぶ。踏ん張っていないと立ってはいられないほどの揺れに襲われ、大半の者がバランスを崩して座り込んだ。
あの時とはまた違うイレギュラーだろうか?
何が起こったのかもわからず、皆ただ警戒している。揺れは収まるどころかどんどん激しくなっていく。そして、壁が割れて、揺れの元凶であったであろうモンスターが姿を現した。
それはゴロンゴロンと転がって移動し、ルームの中央で停止する。
[ªð℘]
Lv40 HP???
名前は文字化けしており読むことができない。それに、HPがぼやけて表示されるのもおかしかった。
(ししゃ…死者?)
アンデットとは違うのだろうか?
ルームの中心にいるモンスターは、岩のような丸い物体でしかなく、アンデットとは思えない。階層主でもなさそうだし、そもそも、普段名前の横に表示されてたのは階層主だけだった。
幸いレベルはリアよりも低いため倒すのは容易である。リアとしてはもう少し観察したかったのだが、ほかの者達が怯えすぎていて騒ぎになっては面倒だと判断し、氷漬けにして破壊する。
[レベルが上がりました]
[ステータスポイントを分配してください(残りポイント460)]
正直、今のリアにとってはどうでもいいことが視界に映る。
「何だったんだ?今の」
「突然現れていきなり砕けたな…」
「岩…みたいだったがモンスターなのか?消える時光になってったよな?」
口々にそう言っている攻略組を無視してリアはアイテムボックスのリストを開く。
そこには今まで入ってなかった物が一つだけあり、リアはためらうことなく取り出した。
手元に現れるのは、古そうな小紙の赤いぶ厚い本。
アイテム名の文字も本の表紙の文字もリアの見たことのない文字で書かれており読むことができない。本の内容も同様にだ。
結局読めるページは見つからず、リアは諦めて本をしまった。
その時、ピコンという音と共にリアの視界に通知が表示される。
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『突然悪い。リアに戦い方を教わりたいって奴がいたんだが、頼めないか?』04:37
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カインからのメッセージにリアは頭を抱えた。
今は依頼を受けている最中でいつ帰れるかもわからない。カインたちは気にしないだろうが、戦い方を教える時間が取れるのかもわからないのに承諾するわけにはいかない。カインたちのように一緒にダンジョンに潜ることも考えたが、それをする事でスキルの存在が知られてしまう可能性もある為難しいのだ。
受けられないことと謝罪を入力してチャットを閉じる。
時間はもう四時半過ぎ。リアの睡魔は限界に達していた。
「すみませんキラーさん。少々眠ってもよろしいでしょうか?」
「ん?あぁ、なんか予定でもあったのか?この調子だとまだ戻らないだろうが、早めに戻れよ。」
「はい。」
恐らくキラーが言うのはダンジョン内ログアウトの事だろう。
壁際まで移動し、三十分後に起きるようセットした。念の為ルームの入口への通路を氷で塞ぐぎ、もう大丈夫だろうと判断したリアは目を瞑り、意識をシャットダウンさせて眠るのだった。
おはようございます。投稿遅くなりましたすみません。
目が覚めたら夜だったと誰が予測できようか…言い訳ですね。すみません。
今夜は、徹夜で、書こうかな…




