第三十一話
本日四話目の投稿です。
キャラクター紹介のリアがカラーになりました!良ければ見てやってください。
中心の部屋に戻ると、その瞬間、四か所の通路が消える。部屋の中心を見れば階層主と思われるモンスターがいた。
頭はライオン、足は鳥、背中に甲羅を背負い尾は蛇の怪物。
それをリアは初めて見た。いや、実際に見たのは全員が初めてだろう。
リアの知らない怪物の存在の総称を、レインが呟いた。
「キメラ。ですね?」
「キメラってなんだにゃ?」
その存在を知らないリアは、レインに説明を求めた。
目の前の存在をリアは知らない。確かに、今まで見たこともないような見た目のモンスターは何度も見てきた。しかし、なぜか既視感を覚えてしまうような恐怖の対象など、これまでのモンスターの中にはいなかった。
「簡単に説明するなら見た目通りとしか言いようがないです。まぁ、あえて言うのであれば合成された生き物とでも言いましょうか。」
「合成された生き物。」
リアはやまびこのようにその言葉を繰り返した。
何故だろうか。リアはその存在が許せなくて、悲しくて仕方がなかった。
キメラのレベルは50。スキルなしのリアでは到底太刀打ちできないであろう存在だった。
リアはうつむいて、ゆっくりゆっくりと近づいていく。
「リア…?大丈夫、ですか?」
レインの言葉も、今のリアにはほとんど聞こえていなかった。
「大丈夫…にゃ、すぐ…終わらせてあげるにゃ。」
リアがその言葉を呟いた次の瞬間には、既にキメラの懐まで潜り込んでおりその姿をオブジェと化した。
三人から見て、凍った怪物は職人が作ったように美しかった。
ピンクレッドダイヤのように輝いた瞳から流れ落ちる涙を無視して、キメラの胴体_ちょうど胸の部分_に手を当て額を寄せる。
「これは救えにゃいのにゃ。だからせめて、血を流さずに綺麗なままで…」
そのセリフを合図とでもいうかのように、その瞬間に全体にひびが入り、光の粒子となって腕輪の中に消えていった。
[レベルが上がりました]
[新たなスキルを獲得しました]
[ステータスポイントを分配してください(残りポイント450)]
キメラが消えてもリアは涙を流したままだった。
それだけではない。それを見ていたカインとレインも、自然と涙を流していた。
「嬢ちゃん。相当疲れたし一旦休もうぜ。昼飯もまだだろ?」
リアは涙も拭かずに笑って、「そうだにゃ。」と答え、腰を下ろした。
昼食を食べ始めた時には三人とも涙は止まっていて、ガルスは何も聞こうとしなかった。
それから四人は三十八階層への階段を無言で降りていく。
三十八階層は一つのルームだけだった。モンスターもいない。
「ここは…どんな階層だ?」
「先程のようにある条件で出る…ということでしょうか?」
ガルスとレインが部屋を見渡しそう呟いた。
リアはコマンドから検索をする。
[二十八階層]
特殊階層の一つ。ワンルームしか存在しないこの階層は、二十七階層で階層主が現れなかった時のみ階層主が出現する。階層主が出現しない場合、階段は初めから出現する。
「いや、この階層はこれだけだにゃ。出来れば階層主と闘って調べたかったけど無理そうだにゃ。」
それだけ言って踵を返すリアに、三人とも不思議そうな顔をした。
「おい、リア?これだけってどういう事だ?」
「……。前の、階層で、階層主が出た場合、この階層には出現しないそうだにゃ。」
「そういう事か。」
納得した三人はリアの後を追って三十八階層を後にした。
それから四人は少し早かったが街へ戻ることとなった。
休憩を挿みつつ、街に戻った時には夜10時頃だった。
その頃にはリアも通常に戻っており、普通に話していた。
「なぁ、予定より早く戻ったし、良かったら四人で飯行かねぇか?」
「お、いいぜ。おススメの店とかあるのか?」
「そうだなぁ」
ガルスとカインが話を進め、それをリアとレインは笑いつつ黙って聞いている。
結局、ギルド内の酒場で食べることになり、報告を終えたリア達は雑談しながら注文した食事を食べて
ルカというこの世界の飲み物を仰ぐ。
ルカとは、ルカの実を溶かして飲む果実水の事だ。
それを好みでアルコールで割って、好きな度数にして飲むのがルカ酒と呼ばれるものだ。ガルスが飲んでいるのはそれ。しかもアルコール度数がかなり高いやつだった。
「お前らは飲まねぇのか?」
「んー、みゃーにはまだ早いかにゃ。」
「俺も。」
「私もです。」
「そうか。」
そう言ったガルスは少し寂しそうだった。
「そういえば、次はいつ戻れそうにゃ?」
「あー…そうだな…」
その問いにガルスはあからさまに暗い顔をした。
「しばらく、戻れねぇだろうよ。」
「え!?なんでにゃ!?」
「ずっと言おうと思ってたんだが、俺、騎士団の見習い兵になることが決まったんだ。だから、しばらくこっち来れねぇと思う。」
ガルスの顔はとても寂しそうだった。だからだろうか、リアはガルスに笑ってほしくて、そのことを喜んだ。
「それって大出世じゃにゃいかにゃ!?すごいにゃガルス!ガルスならすぐに騎士になれそうだにゃ!」
リアの言葉に、ガルスは目を見開いた。
それは家族にも言われたことであり、リアは一番別れを惜しんでくれると思っていたから。
リアは構わず続ける。
「それと、来れにゃいなら今度はみゃーが遊びに行くにゃ。見習い兵が外出られにゃいなら、みゃーが忍び込んでやるのにゃ。だから。だから、早く出世して、また遊びに来て欲しいにゃ。」
リアは泣かなかった。しかし、今にも泣きそうなその顔を必死でこらえているようだった。
「あぁ。必ず、出世してやるよ。」
その言葉を最後に、ガルスは街を後にした。
リアの泊まる宿への道を、レインを先頭にカイン、リアの順に並び歩いていた。
リアの落ち込む様子に、心配になったカインはレインの目を盗んで話し掛ける。
「リア、こんな時でタイミング悪いかもだけどさ、」
「ん??」
「連絡先交換しね?」
ニコッと笑うカインに驚きつつも、リアは頷いて承諾した。
連絡先の中に、家族や先生以外の名前が追加される。
(鮫島海星…)
リアは無言でアドレス欄を眺める。
「なんかあったら、連絡していいから。愚痴でも泣き声でも聞いてやるよ。」
「うゎっっ、」
カインが話しながら頭を撫でてきたことに驚いたリアは、思わず声を上げた。
やった張本人はと言うと、面白そうに人差し指を立てて口元にあてている。
「ありがと。」
それだけ伝えて、リアは宿へ駆け足で戻っていった。
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スキル[同胞愛歌]
同胞へ、悲しみの死を告げる時、痛みを与えず確実にクリティカルを発生させる。
同胞を護る際、ステータスが心に比例して上昇する。
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○○○
カランコロン。カランコロン。
ほとんど人が出歩いていない深夜二時頃、一人の男の独特な足音が街に響いていた。
赤色と黒を基本とした緩い浴衣を身にまとい、狐の面を頭に斜め掛けして履いているのは駒下駄。すらりとした腰に日本刀をさして骨ばった腕を組んでいる姿は様になっていた。
夜に溶け込む黒色の髪に瞳は悪魔を連想させるような赤色だ。
「おい、狐。」
狐と呼ばれた男は優雅に振り返る。
「今度実行予定のダンジョン攻略、お前も参加するのか?」
「ああ。一応あそこが最前線やでな。行く予定だぜ。」
口をニヤッとさせて狐は答えた。
それを見て、話しかけた男は肩をびくりと震わせた。
「そ、そうかそれならよかった。確認はそれだけだ。呼び止めて悪かったな。」
そう言って男は踵を返し、去りながら「ちっ、相変わらず気味悪ぃな。」と、ぼそりとこぼしていった。二人の距離からして聞き取れるはずもない声量だったが、確実に聞き取った狐は目を細めるようにニコッと笑う。
「嫌だねぇ。すごく嫌だ。噂だけで嫌う癖に都合のいい時だけ頼ってくる雑魚も、この後最悪な何かが起こるとはわかってもそれが何かわからない気持ち悪い感覚も。本当に反吐が出る。」
狐は誰に言うでもなくそうつぶやくのだった。
中途半端すぎてカット出来なかった!(笑)
主要人物の一人狐。ようやく、ようやく出せました…!
キャラクター紹介の変更、追加を行いました。(o^―^o)
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