第三十話
本日三話目の投稿です。
はじめに入るのは一番広い空間。
広さが広さなだけあってモンスターが多かったり巨大な階層主を想像していたのだが、何もない。
モンスターが一匹もいないのだ。
「とりあえず、一部屋一部屋まわってみるのがいいんじゃね?」
カインの提案に三人とも賛同し、入って右側にある部屋へと入った。
そこはモンスタールーム、見渡す限りモンスターで埋め尽くされた部屋だった。
「うおっ、嬢ちゃん。閉じ込められたみてぇだぜ。」
ガルスに言われて振り返れば、確かに入り口は消えていた。
敵のレベルは36から37。リア達が戦えないという事はないだろう。
それにリア達がいる場所とモンスターがいる場所には三メートルほどの段差があって、すぐに襲われるという事もない。
「レイン。ここはほとんど攻めてこにゃいし、レインの最高火力の魔法でやってみてほしいにゃ。」
一部のステータスが三倍になったレインの威力が気になったリアはそう提案した。
「わかりました。念の為シールドを張りますので三人はそこまで下がってください。」
レインの言葉に、三人は頷いて緑の半透明の盾の後ろに身を隠した。
それを確認してからレインが魔法の構築を開始する。と、モンスターの上に青白い塊が出現し、どんどん巨大化を始める。
部屋の三割ほどまで大きくなった時、レインが魔法の名前を唱えた。
「【流星】」
その言葉を合図に青白い塊が落下し、モンスターたちを飲み込んでいく。
一瞬にして部屋にいる全てのモンスターを飲み込んだ光景は、リア達にはスローモーションのように見えて、ただただ茫然としていた。
「終わりましたよ?」
レインの言葉で再起動する。
「にゃにゃにゃ、にゃんで流星にゃんだにゃ!?流星は普通もっと開けた場所で撃つものにゃ!!」
「あ、あなたが最高火力でと言ったのでしょう!?私はリアの指示に従っただけです!」
「最高火力でも限度があるにゃ!!一応洞窟内だと考えてほしいにゃ!!」
実際、レイン自身も最高火力の威力に興味があったことも否めない。しかし、リアが言ったのは確かであるからとそのことは言わず、両者の終わらない言い争いはガルスとカインによって終息したのだった。
「と、とりあえず、入り口も戻ったみたいだし次に行くにゃ。」
続いて入ったのは最初入ってきたところから正面に位置する場所。
そこも、一部屋目と同様に入った途端入り口が消失した。
中にいたのはアンデットのデュラハン一体のみ。レベルは38だ。アンデットと言っても、光魔法が弱点なだけで物理攻撃も効く。ここはガルスがやりたいようで任せることになった。
(あれ、一人ずつ戦う流れになっているような…)
そんなリアの考えを無視して戦闘が開始する。
……結果としては、ガルスの勝ちだ。
戦闘は実にあっけなかったと言うべきか、デュラハンがほんの少し頑張ったというべきか。
ガルスが圧倒的な力の差で叩きのめした。恐らく、今回のデュラハンは鎧を着ていたためスキルの干渉もあったのだろうが…圧倒的すぎてデュラハンがかわいそうなほどだった。
嫌な予感を抱えて最後の部屋へと入っていく。この部屋も、他と同様に入り口が消えてしまった。
中にいたのはオオトカゲと言うべきか、見た目は羽のないドラゴンだった。
それを認識したとたん、後ろにいたカインが飛び出した。
(あー、やっぱりなぁ)
そう思ったのはリアだけじゃないだろう。
カインは一瞬でオオトカゲのもとへと近寄ると、思いっ切り拳を打ち込んだ。剣でなく、拳である。
一撃でトカゲは消え去り、光の粒子となってカインの腕輪へと吸い込まれていった。
ちなみにトカゲの名はキングリザード。レベル42。今までの流れでいえば階層主くらいのレベルである。
「「「…………。」」」
三人はただ圧倒されて、黙ることしか出来なかった。
カインは振り返り頭を掻きながら口を開く。
「あー…。すまん。なんか無性にムカついて…やっちった。」
「「「……………………。」」」
この階層を進むと決めた時の決意はなんだったのだろうか、三人とも何の問題もなく一人で倒してしまうその姿に、リアは何とも言えない気持ちになったのだった。
「それにしても、この部屋にも階段はありませんでしたね。」
「多分中心の部屋にいると思うぜ?それも、とびきり強いモンスターがな。」
「「「なるほど、」」」
ガルスの予想に、リア、カイン、レインは声をハモらせて頷いた。
「じ、じゃあ、今度はみゃーがいきたいにゃ!三部屋ともとられたから、みゃーもカッコよくドカンとしたいにゃ!」
「いや、嬢ちゃんは相手がかわいそうだろ…」
ガルスの辛辣な意見に、リアは両頬をフグのように膨らませる。
「まあまあ、いいんじゃないですか?私達の相手もかわいそうでしたし、変わらないでしょう。」
レインもかなり辛辣だ。倒されたモンスター達に心があってこれを聞いていたとしたら、どう思うのだろう。
「約束にゃ!絶対にみゃーがやるにゃ!」
「わぁったよ。」
「問題ないと思いますが、頑張ってください。」
「トカゲじゃねぇ限り許す。」
最後のカインの言葉に三人とも苦笑いする。
そうして四人は、その部屋を後にしたのだった。
ファンタジー小説あるある。竜は竜モドキを本能的に嫌う。
次話は15時頃投稿します。
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