第二十七話
遅くなりました!
湖へと戻ると、ガルスたちが心配そうに駆け寄ってきた。
遅くなり心配させたのだろう。
リアは謝罪して、今度こそ四人は休むことになった。
話し声が聞こえてリアは目を覚ました。あれからまだ二時間しか経っていない。
体を起こし周りを見渡せば、カインとレインは起きていたようで何か話し合っていた。
「寝ないのかにゃ?」
「「っ!!」」
声を掛けるまで二人は気が付かなかったのか、二人は反応するのに遅れていた。
「起きたのか?」
「見ればわかるにゃ。」
「まぁ、そうだな。」
「それで、何してたのにゃ?」
二人の反応が気になったリアは、尋ねながら首を傾げる。
二人は何か話し合った後、何を言うのか決まったのかリアの方に向きかえった。
「ずっと気になってたんだけどよ、この世界の住人って自然すぎると思わねーか?」
「どういう事にゃ?」
その問いの意図が分からずリアは目を細める。
「なんていえばいいんだ?えーっと、」
「誰がプレイヤーで誰がNPCかわからないって事ですよ。」
その核心の説いた言葉に、リアは目を見開いた。
それはリア自身も感じていた事。ガルスやギルド職員、冒険者、街にいる人々。全ての人がプログラムされていると思えないくらい生きているようだった。
「それすっごくわかるにゃ!この世界の住民は動きが自然すぎるし、人それぞれ考え方の違いもあるにゃ。それに極めつけは、みんながみんなここで生まれ育ったかのようだにゃ。」
その言葉に、リアが共感しはしゃいでいる事に二人は驚き固まってしまった。
そのことに不安を覚えたリアは眉を下げる。
「どうかしたかにゃ?」
「あ、いや…その、」
「リアってプレイヤーだったのか?」
その言葉に今度はリアが固まってしまった。
リアは別にNPCとして振る舞っているつもりなどない。なぜプレイヤーだという事に驚かれているかわからなかったのだ。
「いやいや、逆ににゃんでプレイヤーじゃにゃいと思われてたのにゃ!?」
「え、だって発売日当日から他のNPCと顔見知りに見えたし、普通に世界に溶け込んでたから。」
恐らく二人と初めて会った時の事だろう。
リアがやっていた案内代理人はリア以外NPCだった。それに二人を紹介したのはミラだ。NPCと顔見知りなプレイヤーなど発売初日にいないだろう。
「それは、わけあって発売前日からログインしてたのにゃ。だけど別にNPCだなんて一言も言って無いにゃ」
「「…なるほど、」」
二人は呆けた顔で頷くだけだ。
「あ、そうだ、言うの忘れてたんだけどフレンド登録しないかにゃ?フレンドならログインしているかわかるし、チャットもできるにゃ。」
「どうかにゃ?」と聞いても二人からの反応はない。
「カイン?レイン?」
恐る恐る声を掛けると、二人は慌てて承諾した。
リアはメニューを開き、フレンド登録の画面を表示し二人に見せる。そこに相手が手を乗せれば登録は完了だ。
フレンドリストに初めて名前が並んだ事が嬉しくて、リアから笑みが零れる。二人もどこか嬉しそうだ。
「そういえば、ガルスはプレイヤーなのか?」
「いや、ガルスは王都で生まれ育って今もあっちで働いてるって言ってたから多分この世界の住民にゃ。」
「そうなのか。リアと行動してるからてっきりガルスもプレイヤーだと思ったんだけどな」
「みゃーも最初はNPCだと思ってたけど、今はもう思わにゃいようにしてるにゃ」
リアの言葉に二人は首を傾げる。
「それはどういう意味ですか?」
「みゃーも初めは、NPCが生きているみたいだと思ってたのにゃ。だけど考えてて、やっぱり違うと思ったにゃ。」
リアはNPCについての自身の考えを全て二人に話した。
この世界に存在するNPCの基準は曖昧だ。普通にプレイヤーでないキャラクターである説明が妥当だろう。だが、その考え方にはズレが生じる。
NPCを説明する際、中身のないキャラクターと言うよりは、プログラムされて動くキャラクターという方が正しいように思える。
それに対してこのゲーム世界ではプレイヤーでなくとも中身があるのだ。まるでこの世界で一から生まれ育ったかのように。リアの精神転生とは違い、記憶を持たず転生した人間と思う方が説明が付く。
リアが精神転生の実験台だとして、他の人々が転生によるゲームへの誕生ならば、プログラムをせずともこの世界の住民となり行動できる。データ上にある異世界とでも言うべきか。
リアが考え至ったのは、輪廻転生の科学化。実際に、リアの魂はデータ化に成功していた。
記憶を宿したままの精神転生が可能なら、ただ魂だけをデータ化した転生など容易いことだろう。
仮想世界を作り出し、そこへ、科学化された輪廻転生を実行する。それならば、プログラムなどしなくとも勝手に生きていくだろう。
それにこのプログラムが完成したのが4年前というのは、実際に関わっていたリアがどのプレイヤーよりも一番よく知っている。完成したのが四年前ならば、プロジェクトが始まったのはかなり前だろう。
少しずつ転生で送り込んだとして、現実世界で10年経てばこの世界では30年。しかも、時間経過に差があるのだから、それを早めて一日で10年や100年経たせるのも不可能ではないだろう。
リアの仮説に、二人は真剣に耳を傾けていた。
「と、まあここまでが、みゃーの考えた仮説、妄想にゃ。真相は不明。だけど、これなら一体一体プログラムせずとも自然に自分の意思で動くこの世界の住民が生まれるのにゃ。」
「なるほど…。ですが、そうなればこのゲーム世界にも存在する『案内人』はどうなるのですか?チュートリアルという単語もそうですし、何か不自然です。」
「それこそ、世界自体に干渉すればいいのにゃ。例えば、案内人という職業があるという常識を世界自体に存在させれば、職業を探した住民がそれを受ける。あとはマニュアルを渡しておけば勝手に実行してくれるにゃ。他の仮説としては、運営職員がこの世界にログインしてその職業をこなしている可能性か、みゃー以外にも精神転生をした人がいてそれを実行してる可能性にゃ。」
実際、リアは全部ありえると思っていた。特に他の仮説として出した運営職員がこの世界にログインしている可能性。これはほぼ確信していた。なぜなら、リアが冒険者になった日、ミラが「一応この世界でも」と言ったからだ。この世界の住民でその言葉を使うはずがない。
リアの説明を聞く二人は、驚きが隠せないと言わんばかりに口をポカンと開けていた。
毎話大体2000字前後で書いているのですが、今回オーバーしてまだ終わらなさそうだったので中途半端に切りました!すみません!
少しずーつこの世界のプログラムが出てきます。リアの過去もね!
あと、ついにリアがNPCでないことを説明できた…!
読んでくださりありがとうございます。
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