第二十六話(上)
本日三話目の投稿ですっ!!
間に合った!
リアが水浴びに行った後ガルスがカインに話しかけた。
「よお、竜の兄ちゃん。名前は…」
「カインだ。呼び捨てで構わない。」
「そうか。カイン、聞きたいことがあるんだがいいか?」
カインが頷くと、ガルスは背を向け歩き出したのでそれについていった。
湖から離れ森へと入っていく。
「話だけでこんなところまで来る必要があるのか?」
湖からかなり離れたことを不審に思ったカインは足を止め声を掛けた。
ガルスは立ち止まるが振り返らず黙ったままだ。
「遅くなればリアが戻った時心配するぞ?」
「……カイン。お前たちはどうして嬢ちゃんに近づいた?」
ガルスの表情は背を向けたままなので見えないが、どこか不安そうな声だった。
質問の意図が分からず、カインは眉を寄せた。
「どういう意味だ?」
「リアに、嬢ちゃんについていく理由はわかった。嬢ちゃんは優しい。なんでも疑わずに許しちまうんだ。だから不安になるんだよ。だから、利用するだけ利用して、最終的に切り捨てられたら、嬢ちゃんは確実に心が壊れる。
嬢ちゃんとの付き合いは短いけどな、俺ぁ昔から人の素が見えるんだよ。嬢ちゃんに昔何があったかは知らねぇが、既に壊れかけてる。なんで壊れてねぇのか不思議なくらいだ。
なぁ、カイン。お前は、どうして嬢ちゃんを選んだんだ?チュートリアルの件は聞いた。でも普通はレベルが離れすぎてるやつとは行動しねぇだろ?お前らぐれぇの奴らは、同じぐれぇの奴と組んで連携しながら切磋琢磨するもんだ。劣っていると自覚しながら、学ぼうとしてる奴と対等であろうとする理由は何だ?」
これが、ガルスの不安の根源であった。
リアがカインらの話をするたび、嬉しそうな顔をする。
ガルスの方が付き合いが長いと言っても、ほんの僅かな差だ。カインはそれを当たり前のように越えた。
それもリアの気づかぬうちに。
その理由は、ガルス自身わかっていた。
リアは初めから壁を作らない。だからこそ、越えにくくなる境界線を他者に作らせるのだ。
それを、壁を作らない事を、カインは当たり前のようにやってのけた。
それが出来るのは、端から利用するつもりの奴か、素直なやつだけだ。だが素直なやつなんて数えるほどしか存在しない。
ガルスはわかっていた。カインが後者であることを。
でも聞きたかったのだ。カインの言葉で。
そうでないと、諦めることができないから。
「ちょっと前に言った通りだよ。
切磋琢磨したところで強くなる最善の方法を見つけるのには時間がかかる。だったらその答えを知ってる奴に教わった方が効率がいいんだ。そして追い付く。追い付いた上で追い越せば、あいつはそれを越えようとする。
だから対等でなくちゃいけねえんだ。将来、切磋琢磨する仲間なんだからな。
と、まあこれはこじつけの理由で、
一番はやっぱあいつが好きだからだよ。あいつがいると楽しいし、一緒にいたいんだ。学ぶとか追いつくとかはただ一緒にいるための理由だよ。
もちろんさっきの言葉も嘘じゃねーけど、こっちがガルスの聞きたい答えだろ?」
「…そうだな。」
ガルスは振り返り、嬉しそうに笑った。だが、ガルスの目から流れたのは悲しみの涙だった。
「聞きたかったのはそれだけだ。すまねえが、先に帰ってるぜ。」
そう言って去っていくガルスの後を、カインが追うことはなかった。
カイン「泣きてぇ奴を泣かせねぇようなへまはしねぇよ」
ちなみにカインの言った好きはライクです。
レインもライク。リアもライク。仲間。
読んでくださりありがとうございます。
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