第二十三話
本日三話目の投稿です。
「ここらで一旦休もうぜ。」
ガルスの言葉に、二人は肩をおろした。
そんなにもきつかっただろうか?そんなリアの疑問を読んだのか、ガルスは言葉を続けた。
「あのなぁ、俺や嬢ちゃんと違って二人はまだレベルは低いし走りながらの戦闘にだって慣れてねぇんだ。もうちったぁ手ぇ抜いてやってもいいと思うぜ?」
「そうかにゃぁ、」
「そうだ。それに二人のステータスは敏捷寄りじゃねぇ。嬢ちゃんのように無意識に速く走れねえんだ。手加減してやれ。」
その意見に反論できず、リアは「わかったにゃ…」と呟いた。
アイテムボックスからいつものサンドイッチを四つ取り出して一つずつ分ける。
カインとレインは慣れていないのか、恐る恐るかみつくと目を輝かせた。
「とてもおいしいですね。まさかダンジョン内でこんなものが食べられるとは思いはせんでした。」
「というか飯食ったのも初めてじゃね?それにしてもうまいな。」
二人にも好評のようだ。
現在四人がいるのは十五階層への階段がある部屋。この階層には階層主はいないため、部屋自体はかなり狭い。
狭いと言ってもダンジョン内の中ではの話で、実際はリアの泊まっている宿の部屋と同じくらいの広さだが…
一階層から休みなしに走ってきたからか二人は相当疲弊していた。
その二人に回復薬を飲ませてし先に進む準備を始める。
準備中のリアにガルスは問いかけた。
「嬢ちゃんはなんでそんな張りつめてんだ?」
それはガルスだけでなく、他の二人も気になっていたこと。
リアは無意識だが、かなり気を張っていた。
「二人はまだ六階層までしか攻略してないにゃ。
もし、昨日みたいなイレギュラーな事態になった時、みゃーは守り切れる自信がにゃいのにゃ。」
それがリアのどうしても不安になる理由。
ここに来るまでに二人のレベルは上がったが、それでもモンスターの方が圧倒的に強いのに変わりはない。昨日リア達がイレギュラーを経験していなければ、まだ緊張はマシであっただろう。リアには二人を守れる強さと余裕があった。
だが、昨日のそれで余裕は潰えた。
本来ならば有り得ない二十階層においての格上。モンスターの大量発生。
もしかしたら、リアが抗いようのない程の格上が来ていたかもしれない。そう思うと、ぞっとせざるをえなかった。
これまで、階層に対してのモンスターのレベルは強くて階層数プラス五程度だった。
二倍以上なんて油断してはひとたまりもないだろう。
デスペナだけで済むと思えばそこまで深刻に思えないだろうが、リアは死の恐怖を知っている。また戻れると知っていても、死という存在が迫る絶望は変わりはしないのだから。
「気持ちは分かるが固くなりすぎると逆に動けねぇし二人を不安にさせる原因になってるぜ」
「昨日?そういえば宿に来るのも遅かったが、なんかあったのか?」
リアはガルスに指摘されて押し黙ったままで、カインの疑問に答えるそぶりもしなかった。
「別に言っても脅しにならねぇと思うぜ?それに言わない方が逆に不安だろ。
ガルスに賛同して二人が頷く。
リアは深く息を吐いて、ぽつぽつと話し始めた。
「昨日の、二十階層での出来事にゃ。___
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「ふーん。んで、次にいつ、どの階層で起こるかもわからないから気を抜けないと?」
「そ、そういう事にゃ。」
リアの話を聞いたカインは、少し怒ったようにそう聞いた。
レインも同じ様子である。
「あのなぁ、確かに俺達は強くなりてぇからお前について行ってる。そこはリアもわかってるだろ?」
リアは無言で頷いた。
「でもな、別にお守りしてもらいてぇわけじゃねえ。」
その言葉に、リアはハッとして顔を上げる。
言い訳をするつもりはないが、悪気はない。ただ、役に立ちたい一心で、盲目的に護ろうとしていただけなのだ。おせっかいにも、自分が護らなくてはいけないと無意識に行動していた。
「俺たちがお前にとって頼りねえお荷物かもしれねぇ。だけど、俺らは護ってもらってぬるま湯につかりながら強くなろうと思うほど腑抜けたつもりなど毛頭ない。
ただお前の傍が一番勉強になるからついていこうと決めたんだ。護られるぐらいなら俺らはもうお前に組んでもらおうとは思わねえ。勘違いしないでくれ。」
「ご、めん、、」
謝った時、リアは泣いていた。
泣くつもりなどなかった。だが、自分の根本的な考えの間違いに気づいて、申し訳なく思って、嫌われてしまったのではないかと思った時、勝手に涙が零れ落ちたのだ。
慌てて誤魔化そうとするが、漏れ出た涙は止まらない。
その様子に一番動揺したのはカインだ。泣かせるほど強く言うつもりはなく、わかってもらいたかっただけなのだから。
「いやっ、責めるつもりでいった訳じゃ無くてだな…。」
「ごめんなさい。」
「謝るなって…俺も言い方が悪かった。」
カインは必死に伝えるが、リアに聞いている様子はない。
「お荷物だにゃんて、そんなつもりはなかったのにゃ。ただ頼られて嬉しくて、力になりたいって思ってただけなのにゃ、」
リアは嗚咽を漏らしながら言葉を紡ぐ。
「だから、みゃーと組みたくないにゃんて言わないでにゃ…嬉しくてはしゃぎすぎただけにゃ、ちゃんと、ちゃんと直すから。捨てないでほしいにゃ…」
消え入りそうな声で必死に懇願するリアを見て、ガルスとレインからカインへと冷たい視線が注がれる。
カインは頭をかきむしり、乱暴に、それでいて優しくリアの肩を掴んで、大声で叫んだ。
「別に捨てるなんて一言も言ってねぇよ!」
「でも、みゃーとはもう組まないって」
そう言いうと、リアの目から更に涙がこぼれ出す。
「そういう意味じゃねえ!」
カインは声を張り上げた。
「他にどういう、」
「俺らの事が負担にさせるくれぇなら迷惑だろうから頼らねえって意味だ!ってかよ、俺の方が弱いんだから捨てられるとしたら俺らだろ!?」
「…」
リアは黙り込んで考えるそぶりをする。もう涙は止まっていた。
カインは更に続ける。
「本当にピンチの時はありがたいけどさ、俺らだって多少は自分の身を護れるし、護る練習をしとかねえとリアの手が離せない時にピンチになったら俺らは死ぬのを待つことしかできなくなるんだ。
ダンジョン内なら死んでもやり直せる。だから心配すんな。
今はまだ教わることしかできねぇけど、それでもリアとは対等でいたいんだよ。」
カインの言葉に、リアは何度も頷くだけだった。
だが、顔は既に笑っていた。
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