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第二の人生はゲーム世界で  作者: 一 咲也
転生先はオンラインゲーム
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閑話 episodeガルス

本日二話目の投稿です。

独白なので主観視点です。

初めは、あまり気の乗らない、出稼ぎついでの旅行のつもりだった。

そりゃあそうだ。王都にいる方がずっといい。

今の時期戦争の気配なんて全くなくて、下っ端の俺は安全な街の見回りだった。

平和ボケして同僚と酒を飲んでは家族に叱られて。下っ端の巡回兵なんて給料はほとんど無いに等しい。

だからだろう。久々に家に帰れば、金を持って帰って来いと叱られ、締め出された。

俺は愚かだった。そして、愚か者だという事に気づいてすらいなかった。

働いて稼いだ金は全て自分で使い切り、家では親のすねをかじって居候をしていた。

久々の休暇だってのに家に入れてもらえず、金もないから飯も食えなかった。

それはただの気まぐれだった。

王都から少し離れた所にある冒険者の街と言われる場所へ行ってみようと思ったのだ。

王都から出たことなんてなかった俺は、僅かな好奇心に従って行くことにした。


そこは、俺の見たことないものばかりがある場所だった。

ステータスを見る魔道具は一度見たことがあったが、それを自分の見たいタイミングで見れるようにした腕輪なんて聞いたことがなかった。

腕輪の機能には他にアイテムボックスという聞いたこともない魔法も付けられていた。

それがなんと無料で配布されるのだ。

頭が壊れている。そう思った俺は正常だったように思う。

適性試験とやらでは、騎士クラスのやつと戦わさせられて、結局俺はそこで気を失った。

あたりまえだ。飲まず食わずでここまで歩いて来て、その直後に全力で戦ったのだから。

その日は結局、飯を食わしてもらった。と言っても、稼いで返せと言われたのだが。

久々に食べた飯は美味かった。


ダンジョンっていう俺にとって未知の場所に行った時。初めは死ぬほど悪寒がした。

今まで感じたことのない緊張感に飲み込まれて、吐き出すかと思った。

驚いたことに、今までどんなに頑張って訓練に参加しても、なかなか成長を感じられなかったのだが、モンスターっていう魔物と酷似した奴を倒すごとに強くなれる実感があった。

とんでもねぇ場所だって考えは今も変わらねぇ。

ダンジョンで、確かに俺は強くなったんだ。その実感がいけなかったんだろう。

その日、四階層で背後からホブゴブリンにやられた。

死を覚悟なんてしてなくて、ここは大丈夫だからって油断してたんだろう。

腕輪を付けている限り、ダンジョン内で死んでも実際に死ぬことはねぇって聞いてたけど、それでも死ぬのは怖かった。

_あぁ、俺はまだまだ弱いんだ。

今までの自負心も消えて、過去の堕落していた自分を悔やんだ。

街に戻ったら一週間ダンジョンには潜れない。

休暇も終わるし、王都に戻ったら真面目にやろう。ここは俺の場所じゃねぇんだ。


気がつくと森の中にある池の近くで眠っていた。

街に戻っていないことに驚いたが、死んでねぇって安心感が強かった。


「気が付きました?」


そう言って俺を覗き込む獣人の少女。

この子は誰だ?俺は…俺に何があったんだ?


「倒れていたのでここまで運びました。どこか痛いところなどございませんか?」


その言葉に焦って飛び起きた。


「っ!!そうだ!ホブゴブリンの群れに襲われて!!」


焦って見渡すが、周りには少女以外の気配を感じない。

そうか、俺は目に前にいる少女に救われたんだな。


「ありがとう。ほんとうに助かった。」

「いえ、私は保護しただけで他に何もしていませんよ。」


お礼を言っても少女は謙遜して、ただ俺を心配していた。


「いや、でも死にかけたのは確かだ。なんてお礼したらいいか…」

「困った時はお互い様なので大丈夫ですよ」


少女は助けた対価を求めずに、そんなことを言う。

不思議な子だ。それがその少女に対しての最初の印象だった。


「しかしよぉ…」


渋る俺に少女は困ったように眉を下げてこんな提案をしてきた。


「じゃあ、明日よければ一緒に潜りませんか?今日は私戻るので。」


それは俺にとって得にはなっても、少女へのお礼になるとは思えなかった。

_多分ほんとうに気にしてねぇんだろうな

これ以上渋っても迷惑になると判断してそれを承諾した。


「おう。そんなことでいいならいいぜ。俺も今日は戻るし一緒に帰らねぇか?」


ついでに帰りも誘った。

その時は、多分一人じゃねえんだって思いたかったんだと思う。

あれから嬢ちゃんと潜るのが楽しくて、何度も巡回を休ませてもらって嬢ちゃんに会いに行った。


恐らく今回行ったらしばらく行けなくなるだろう。

一度の期間に休みすぎたのもそうだが、レベルが上がったことにより評価され、騎士団の見習い兵に昇格したんだ。しばらくは訓練漬けであっちに行けなくなるのは明白だ。

だから、だから俺を変えてくれた嬢ちゃんについて来て欲しい。

嬢ちゃんがいれば俺は変われる。

彼女は、それを許容してくれるだろうか。


一方的な俺の言葉は、なかなか伝える勇気が出て来ない。

それを余計に言いづらくしたのは彼女の言葉。


「あ、それとにゃ、みゃーと一緒に潜る仲間ができたのにゃ。まだ弱っちいけど、伸びしろがあって楽しいのにゃ。もしタイミングが合えば紹介したいが、いいかにゃ?」


それを聞いた時、一瞬息が止まった。呼吸の仕方がわからなくなった。

あぁ、嬢ちゃんも居場所を見つけちまったんだな。

そう思うと切なくて、それでも嬉しいと思ってしまった。切ないという気持ちを、初めて知った。


あれから何度か話そうと試みても、何も言えない。そんな俺に、彼女は何も聞かなかった。

彼女なりの気遣いなのだろう。


なぁ、嬢ちゃん。一緒に来て欲しいって伝えたら、嬢ちゃんはどんな顔をするんだ?

嬢ちゃんにとって、俺は特別になれてたか?

しばらく来れないと伝えたら、嬢ちゃんはさみしがってくれるかい?


そんなことを思いながら、俺は再び言葉を飲み込んだ。

一人称と三人称、どちらが読みやすいのだろうか…


読んでくださりありがとうございます。

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