第十話
本日二話目の投稿です。
気まずい沈黙だけがが流れていく。
リアは軽く息を吸うと、パンッと手をたたいた。
「それじゃあ、ダンジョンに向かいながら自己紹介でもしましょうか!
私はリア。現在のランクはCで、一応ギルドランクは現在トップだよ。わからないことがあったら聞いてね。」
自己紹介を終えて、二人もするようにと目で訴えると、竜人族の方が口を開いた。
「俺はカイン。で、こっちのエルフがレイン。まだ二人とも登録したばっかだからランクはFだけど、VRMMOはいくつかやってる。やったことがないゲームはチュートリアルを受けるべきだってレインがうるさいから一応頼んだ。」
とても威圧的な自己紹介だった。
(多分これNPCだと思われてるんだろうなぁ。言葉をどれだけ理解できるか試されてるのかな…)
「そうだね、チュートリアルは大事…なんだけど、F?Eじゃなくて?適性試験は受けてないの?」
「待ち時間凄かったから先にチュートリアルをやろうかなって。ダメなのか?」
「い、いやぁ駄目じゃないけど前例無かったからね。驚いただけ。」
「そうか」
「良ければ私がついでに見てあげよっか?」
「いいのか?」というカインの問いにリアは「うん」と返す
「というか二人共凄いねぇ。竜人族もエルフもレア中のレアじゃん。特に竜人族なんて10憶分の1の確率だよ?」
リアは緊張をほぐすためにフランクに話しかけた。
それに対しカインは嬉しそうに言葉を返す。
「それは俺も驚いた。事前情報に無かった種族だし種族の恩恵のおかげか攻撃のステータスが高いんだよ。あと俺もレインもスキルに飛翔があって飛べるっぽいんだ。これぞファンタジーって感じ!」
「おい、カイン。あまり情報を話すな。」
「いいだろ?別に減るモノでもねえし、俺たちは教えてもらう立場なんだぜ?」
どうやらレインは秘密主義のようだ。
そうしている間にダンジョンの入口に到着する。
「そうだね。私はどっちでもいいけど、飛べるならその練習もしようか。」
リアの提案に「お!いいのか!?」と、カインが反応する。
「いいよ。私も飛べるし教えてあげる。
それから、パーティー登録をしようか。私のスキルに、パーティーメンバーの能力向上があるの。」
「へぇー。すげぇなそれは。どれくらい上がるんだ?」
「すべての能力値が、それぞれ1.5倍になるよ。本来は教えない方がいいんだけど、さっきちゃんと教えてくれたから特別ね。」
そういいながらパーティー登録を済ませ、リアは収納魔法の中からメタルブーツと鋼の神器(拳)を取り出して装備した。
メタルブーツには[蹴撃攻撃力アップ]と敏捷1.05倍、鋼の神器(拳)は39階層でドロップしたもので、拳術スキルと力1.3倍が付与されていた。
余談だが、39階層まではモンスターと戦わないことを想定して2日かかる。
そしてカインには神樹の剣を、レインには神樹の杖を貸した。初期装備よりも断然強いから効率も上がるのだ。
神樹の剣は、自然の魔力を帯びていて攻撃力が格段に上がる。神樹の杖は、魔法の威力や範囲が大きくなり、魔力も節約できる代物だ。
カインとレインはそれを受け取るとリアの後を追った。
「ずっと気になってたんだけどさ、レインは何をずっと考えてるの?」
ダンジョンに入る前にレインの方へと振り返り疑問を口にする。
「あ、いや、何でもない、です、よ。」
突然指摘され、レインはしどろもどろに答える。
「何でもないわけないでしょ。ずっと様子がおかしいし、中にはモンスターがいるんだからそんなんじゃ入るのは許可出来ないよ?」
「…いや、その、」
「なに?」
「……せっかく種族がついたんだし、話し方とかなりきった方がいいのかなぁ?って…」
そのレインの発言にリアもカインも言葉を失った。
そして噴き出す。
「え、レインずっとそんなこと考えてたのか?笑」
「そんなこととか言うなよ!いいよなぁお前は素で喋っても違和感なくて!」
笑われたレインは真っ赤だ。
「別にリアルのお前を知ってるのは俺だけなんだしやりたいようにやってもいいだろ笑」
それにリアはあざとく悪乗りする。
「何だにゃ?わたしもにゃーって言った方がいいかにゃ?」
そう言ったとき、二人だけでなく周りもシンと静まり返った。
滑ったか?と焦るリアだったが、周りの人の反応にしらけている様子はない。
大丈夫かもしれないと思ったリアは追い打ちをかける。
「だめ、かにゃ?」
もちろん上目遣いである。
周りは死んでいた。完全にリアの勝ちである。
「ま、まぁいいんじゃないでしょうか。私は反対しませんよ。」
「お前敬語キャラになりたかったのか?それならそうと言えばいいのに」
突然敬語キャラになったレインにカインがツッコミを入れる。
「まあまあ、きっと言うのが恥ずかしかったんだにゃ。エルフの敬語はしっくりくるからいいことにゃ。」
リアはやんわりレインをフォローする。
「お前…それどうにかなんねえの?違和感の塊なんだが…」
「いやだにゃ。このキャラで行くって今決まったにゃ。」
「でも…」
「文句言うなら教えてえてやらにゃいにゃ。」
そのリアの言葉にカインは「わかったよ…」と言って諦め、三人は中へと入っていった。
後にこの三人が、あと一人を含めた四強と呼ばれるのは、まだ少し先の話である。
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