1話:転生したら幸せすぎて困る
軽い気持ちで読んで頂ければ!
私の人生は波乱万丈だと言えると思う!ええ、そう断言できます!
ブラック企業に勤めて八年。朝から深夜まで働かせられて身体も精神もボロボロ。ああもう駄目だと思いながらフラフラ歩いていたら、当たり前と言うか…事故に遭った。
うわあ…自分の人生一体何だったわけ?あの鬼畜社長に一発喰らわせたかった。私にもう少し力があればぶん殴っていただろうに。私は「はい」しか言えない気弱な社員だからって舐められていたようだし!「このハゲデブ!お前容姿もそれだし、加えて性格も最悪なのだから女性にモテないんだよ!」って最後に一言ぶつけてやりたかった!!
そう思うとすごく悔しい。どうせ生まれ変わるならば、絶対的な力を持った子に生まれ変わり、世の中を正してやるのに!力さえあれば強気でいられるのに!言いたい事もはっきり言えるだろうにいいいいい!
………って思ったからかな?
生まれ変わった。ええ、前世の記憶ってやつ?を持って。全く別の世界に生まれ変わりました。
どこからどう見ても中世ヨーロッパ風のこの世界。テオード帝国の平民として生まれ変わりました。
身分は平民だけど、なんと私は巨大な魔力を持って生まれ変わったのだ!あまりにも巨大すぎる力のせいで、恐れをなした父と母が私を捨てたってくらいにはね。成程、身分は高くないけれど絶対的な力を持った子という願望はここで現れたってわけだ。
とは言え、この力は私の予想以上に最強で、しかも便利すぎた。
まず、私が欲しい物や望んだ物をイメージするだけでポン!とその場に出現する。前世のような服もイメージすれば出るし、家が欲しいと思えばそれも出る。なんだこれ、魔法って言うより四次元ポケットじゃないかって突っ込みが。だから親なしになったこの身の上でも、特別苦労したことはない。
そして森に出現する動物やら魔物は当然魔法でぶったおしてきた。攻撃・防御・治癒魔法…全てにおいて最強すぎた私は、これまた苦労することなくあっさり使いこなせていたってわけだ。
こんな最強すぎる力を持った私は……世間に出て「下剋上!」的なノリで悪人を倒す真似なんて事はしなかった。
むしろ絶対に周りに知られてはいけないだろうと悟り、一人山奥でひっそりと暮らすことにしたのだ。
だって誰よりも最強の力を持っているなんてことが帝国や他の国に知られて…私の奪い合いになったら困るでしょ!?「お前自意識過剰すぎ~」って笑われてもいい!意識高すぎ望むところ!前世でもこき使われたって言うのに、こっちでも沢山働けって言われると思うと恐ろしや!
世捨て人の如く、ひっそりとした静かな暮らしはすごく充実していた。
一人が棲むのは広すぎる家を構え、中は趣味で整え、自分好みのメイドさんと執事を置いておく。勿論メイドさん達も魔法で創り上げたもの!
メイドさんが猫耳なのは譲れない。お前それ古いと言われようとも譲れない!ゴスロリちっくな服装に猫耳、可愛らしい感じのメイドさんは「ミュウ」と名付ける。
執事はロマンスグレーという言葉がぴったりの、老年のおじいさまだ。でも侮ることなかれ!この執事、いざとなれば戦闘ができるというオプション付き。普段は物静かなおじいさまが、いざとなったら戦士なんて何それ格好良すぎ!名前は「グレー」です。
え?どちらもネーミングセンスないって?ええ、そこは認めますとも。人の名前って難しい。しかもこの世界、前世と違ってヨーロッパ系だし。名付けなんてある意味適当。
そんなこんなで早20年。月日が経つのはあっと言う間。
「やばい…最高だね。この世界最高だ」
こんなのんびりと暮せて本当に幸せ。神様、本当に感謝致します!ありがとうございます!もうここまでダラダラだと働きたくない!と心の中で何度も拝む。前世の辛い日々なんて思い出さないくらいに幸せ。
そんな極上の幸せすぎる生活をしていたある日のこと。
「何かが来ますね。馬に乗って武器を持っているので……騎士団、でしょうか」
「え?棋士団?」
「棋士ではなく、騎士ですよ。お嬢様」
只今グレーと将棋をさしている最中だったから、ついつい「棋士」団なんて口走る。が、普通に考えてみれば「騎士団」だね。
「騎士団って…こんな山奥に?何しに来たのか…」
「恐らく近々開戦予定ということでしたし。その関係でしょうね」
「え!?開戦!?何それ知らない」
「お嬢様は世捨て人ですからね…。知らないのもご無理はありません」
グレーの説明によると、この帝国と隣の国はもうすぐドンパチやるとか何とか。(原因は特別興味ないから聞かなかった)
「この山は国境に近いですからね。戦場になる可能性もございましょう」
「ええ!?勘弁だよ!嫌だよ、私の平和な生活が乱されることはっ!」
「でもお嬢様、十中八九ここは戦場になりそうな勢いですにゃん?」
「…そうなったら流石に私も怒る。戦争やるなら別の場所でやれって怒るわ」
なんて会話をしていた矢先、私の家の扉がノックされた。