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女神様の御使いになりました。私と家族の恋と日常と平和貢献の物語。  作者: 彩音
外伝番外編-続アースパラレルワールド-
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外伝番外編04.楽しい旅行 その4

◆<里紗>

 夕方。夕食前にプールでの疲れを癒すべく結衣ちゃんと一緒に温泉に入ってひと心地。

 ホテルの浴衣に着替え、ぼんやりとしていると運ばれてくる夕食。

 昨日はカニ尽くしだったけど今日はお肉尽くし。何のお肉か聞いてみたら「鹿肉です」と返事が戻って来た。

 夏の鹿肉は美味しいって何かの百合漫画で見たことがあるような気がする。

 特に雄鹿だったかな。確か繁殖期を前に草をいっぱい食べて栄養を蓄えるから美味しいのだと解説がされてた覚えがある。


「夏の雄鹿は美味しいんだよ」

「そうなんですか! 楽しみです」


 本で齧った知識を結衣ちゃんに披露してみた。

 最初はそんなことも知ってて先輩って凄い! みたいに結衣ちゃんが私を見てくれたらいいな。なんて思っていたけど、いざそうなってみると、なんというか居心地が悪い。あまり尊敬したっていう目で見ないで欲しい。所詮は上辺だけのミーハー知識。ちょっとつつかれるとすぐにボロが出るのだから。

 段々とその視線に耐えられなくなってきて目線を緩やかに逸らしてしまった。

 と私の隣に来て腰を下ろす結衣ちゃん。

 ほんのりと温泉特有の匂いがその体からしてきて、なんというかそそられる。

 これが男性であれば力強さみたいなものを感じるのだけど、女性だと柔らかさと言うか、女らしさ? 色っぽさを感じる。それはきっと私だけではない筈。


「先輩」


 結衣ちゃんが私の手に自分の手を重ねてくる。

"ドキッ"として視線を戻すと彼女は軽く笑みながら私を見ている。


「結衣ちゃん?」

「キスしてもいいですか?」


 どうしたのだろう? 発情? 迫って来る結衣ちゃんの顔。

 私が彼女からのキスを拒む筈もなく、目を閉じて愛情の行為を受け入れる。

 フレンチキス。少しして離れると結衣ちゃんは愛おしそうに自分の唇に手をやり、その手をもう片方の手に触れさせた。


「結衣ちゃん、どうしたの?」

「あっ…。その、先輩から漂う香りがこう…艶めかしいというか、ごめんなさい」


 それを聞いて結衣ちゃんの行動に合点がいった。

 やっぱり私だけではなかった。結衣ちゃんも同じだった。


「ああ、結衣ちゃんも同じこと考えてたのね」

「…! ということは里紗先輩もですか?」

「うん。だから今度は私からキスしてもいい?」

「はい!! 嬉しいです」

「結衣ちゃん」


 愛おしい。この気持ちは好きなんて陳腐な言葉じゃ全然足りない。

 心にあるのはそれ以上の感情。これこそ言葉にならないくらい結衣ちゃんを想ってる。というのだと思う。

 彼女の華奢な体を抱き締める。

 ますます溢れてくる結衣ちゃんへの想い。

 しばし見つめ合って、それからゆっくりと結衣ちゃんに顔を近づけていく。

 結衣ちゃんはじっと私を見てる。後少しで唇と唇が触れうところまで来たら彼女は目を閉じる。


「んっ……」


 最初はフレンチキス。そのうち気分が高揚してきてディープなキスに変更。

 舌と舌を絡ませ、ついでに結衣ちゃんが着ている浴衣の中に右手を忍ばせる。

 結衣ちゃんは"びくっ"と身じろぎはしたものの私から逃げる様子はない。

 ただ最初よりも濃く頬が紅色に染まってきてる。

 体も心なしか火照ってる。

 堪らなくなってこのまま押し倒そうとしたら結衣ちゃんが私から離れてやんわりと拒否をした。


「これ以上はダメです。ご飯も冷めちゃいますし、それにこの後詩織先輩たちと約束もありますし、なのでここまでということで」


 蛇の生殺しだ! その気にさせておいて拒絶するなんて結衣ちゃんには人の血が通ってないんだろうか。

 ご飯とかどうでもいい。二人との約束もすっぽかして結衣ちゃんとイチャイチャしたい。

 欲望の赴くまま結衣ちゃんに迫る。結衣ちゃんは私からの押しに弱い。なので強引に迫れば受け入れてもらえるだろうと思ったけど振り上げた手で頭を叩かれてしまった。


「痛いっ」

「ダメです!」

「結衣ちゃん、酷い!! 蛇の生殺しだよ?」

「我慢してください。……深夜に二人共元気だったら続きしていいですから」

「ほんと? 言質取ったよ。約束破ったらお尻百叩きね」

「二人共元気だったらですよ!? 例えば私が眠気に負けるようだったら無しですからね」

「あ~あ~、聞こえな~い」

「子供ですか!!」

「子供でいいよーだ。あ~、もう、ご飯食べようか」

「はぁ…。はい」


 バカなことをしてたせいでご飯は少し冷めていた。

 それでも充分に美味しかった。結衣ちゃんと食べさせっこしたからだと思う。

 そうして食事を終えて夜。




 私たちの部屋に詩織と実子の二人が来てる。

 四人揃ったところで楽しんでいるのはトランプやウノ、リバーシなどといったアナログ遊び。

 人生ゲームもあって私たちは現在その人生ゲーム中。

 これがただの人生ゲームではない。マスの内容を書き換えてみない? って詩織が言い出したことから私たちは悪ノリして嬉々として内容を幾つか書き換えた。夜のテンションは怖い。なのでこの人生ゲームは地獄の人生ゲーム。元のマスの内容そのままのところであればいいけど、そうじゃないところに止まればとんでもない目に遭う。

 例えば言い出しっぺの詩織なんて額にマジックで第三の目を書かれて楽しいことになってるし、私は先程スクワット百回なんていう最悪なものを引き当てて皆が見守る前でそれをすることになった。運動は苦手ではないけど、昼間にあれだけ遊んだ後だと結構辛い。百回やり終えた後で明日は筋肉痛だろうなぁってそう悟った。

 

「次は結衣ちゃんだね」

「う、うん…」


 ルーレットがコロコロ回る。結衣ちゃんの分身たる駒は私の後ろにいるため私と同じスクワット百回のマスに止まる確率もあるからか結衣ちゃんは戦々恐々。運動が苦手な彼女からしたら絶対に止まって欲しくないマスだろう。仕方ないからもしも結衣ちゃんがそれを引き当ててしまった時は私が変わろうと思う。筋肉痛が何だ! 結衣ちゃんのためと思えば頑張れる。ルーレットが止まる。結衣ちゃんが引き当てたのは別のマスだった。


「えっと、好きな人の好きなところを十個述べよ。ふんふん」


 結衣ちゃんが私を見る。体を寄せてきながら彼女は私の好きなところを述べていく。


「一つ目、その綺麗で可愛い顔が好き。

 二つ目、私に優しい瞳を向けてくれるのが好き、微笑んでくれるのが好き。

 三つ目、キスしてくれるのが好き、愛情をいっぱいくれるのが好き。

 四つ目、先輩の声が好き、その声で私を呼んでくれるのが、好きだって言ってくれるのが堪らなく好き。

 五つ目、私をちゃんと叱ってくれるのが好き、私を先輩のところへ導いてくれるのが好き。

 六つ目、私を守ってくれるのが好き、自分は道路側を歩いて私は歩道側を歩かせる。そういうところが好き。

 七つ目、普段はしっかり者なのに私の前だと何処か抜けた感じになるその性格が可愛くて好き。

 八つ目、寝顔が好き。私を抱き枕にして幸せそうに眠ってる先輩の顔が好き。

 九つ目、私を求めてくるときの必死さが好き、いつもの凛々しい先輩がいなくなって――――」

「結衣ちゃん、ちょっと待って!!」

「里紗、邪魔したらダメだよ。後一つなのに」

「そうにゃ」

「でもこれ…」


 何かの拷問に感じるんだけど。恥ずかい。頬が熱い。結衣ちゃんはそんな私を見て笑ってる。


「十個目、照れてる先輩が好き、先輩の全部が好きです」

「っっっ」


 トドメ刺された。頭から湯気が出そう。再起不能になりかけてる私を余所にゲームは進む。

 続いては実子。彼女はある意味とんでもないところに駒を止めた。


「ふむふむ。惚気を一つ話すにゃね」

「惚気かぁ。さっきの里紗よりはマシだね」

「そうかなぁ」


 私は思う。そこは惚気と書いてあるだけで規制が無いのだ。

 つまり何処まで話すかは実子に委ねられている。

 詩織も同じ目に遭えばいい。私はほくそ笑む。

 少し間を置いてから実子が惚気を始めた。


「そうにゃね。私は実子っていう名前で語尾もにゃが着くから人からは猫っぽいって良く言われるけど実は詩織の方がネコで詩織は私の下によくいるにゃ」

「ちょっと待ったーーーーー!!」

「何にゃ?」

「実子、それはちょっと恥ずかしいっていうか、気まずくなるから辞めて欲しいっていうか…。辞めよ? ねっ?」

「…でそんな時の詩織がこれがまた可愛いのにゃ。例えば――――」

「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」


 実子の惚気は赤裸々だった。さっきの私以上にダメージを負った詩織は撃沈。

 聞かされた私たちも羞恥心でいっぱいになり、ゲーム続行不能でこの場はここでお開きとなった。



 二人が部屋に戻ってから後。


「結衣ちゃん」

「はい」

「私、今日は凄く疲れたから夕食前のあの話無かったことにしていいかな?」

「奇遇ですね。私もです。特に心が疲れ果てたので早く寝たいです」

「そうだね。じゃあ早く寝よう。抱き枕にはなってくれるよね?」

「はい」


 可愛い結衣ちゃんを抱き締めて、私は深い眠りに落ちた。




 翌日も夕方までは前日と同じような感じで過ごして夕方以降は四人でお土産を買ったり、卓球したり、今度は詩織たちの部屋に集まっての雑談。

 楽しかった日々はあっという間に過ぎて帰宅の日がやって来た。


「結衣ちゃん、忘れ物はない?」

「大丈夫です」

「じゃあ行こうか」

「はい!」


 ホテルをチェックアウト。今日一日はここに来るまでと同じように一日移動の日。

 バスに乗って、電車に乗って、飛行機に乗る頃には皆疲れて眠ってしまった。

 私の肩の上に結衣ちゃんの頭。起こさないように軽く撫でていると幸せそうに微笑む結衣ちゃんが私の心を締め付ける。

 

 ――――結衣ちゃんと出会ってから人生が幸せ過ぎて怖い。


 私にとって結衣ちゃんは大切で大きな存在。言い切れる。後にも先にもこれが最初で最後の恋。


「結衣ちゃん、これからも傍にいてね」


 私は彼女にそう願った後、自分の頭を結衣ちゃんの頭に乗せるようにして目を閉じ、皆と同じく眠りについた。

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