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女神様の御使いになりました。私と家族の恋と日常と平和貢献の物語。  作者: 彩音
外伝番外編-続アースパラレルワールド-
57/62

外伝番外編01.楽しい旅行 その1

完結させましたが書きたいことができたのでもう少しだけ続きます!

よろしくお願いします。

◆<里紗>

 夏。クーラーの効いた家の外では日本の夏の風物詩の一つである蝉たちがけたたましく鳴き声を上げている。

 ハッキリ言って煩い。蝉が鳴くのは確か交尾の相手を求めてるからじゃなかったっけ?

 そう考えるとなんかイライラする。こっちの気も知らないでって思ってしまう。

 現在私はやさぐれているのだ。というのも恋人であり、婚約者でもある結衣ちゃんに一ヶ月以上も会っていないせい。

 その理由は私自身にあり、私が彼女のことを思ってこの一年間は不要不急の時以外はあまり会わないようにしようって彼女に提案したから。

 だって結衣ちゃんは高校三年生で今年は大学受験の年。私と同じ大学に通えるよう頑張っている彼女には今年だけは私ではなく勉強を最優先にしてもらいたいと思ったのだ。

 大学一年生と高校三年生。学年の違いで学校という空間で会えなくなってから早数ヶ月。

 思いの外結衣ちゃんがいない学校という空間は寂しい。大学で友人と呼べる存在もできたけど、やはり私にとって一番の癒しであり、大好きな存在である結衣ちゃんが欠けているとどうしても物足りなく思ってしまう。

 こんなことを考えているなんて友人たちには失礼に当たると言うことは分かってはいるのだけれど…。

 そんなだから結衣ちゃんには何が何でも私と同じ大学に合格してもらって、また一緒に刻を過ごしたいのだ。

 とは言ったものの…。


「結衣ちゃん、結衣ちゃん結衣ちゃん結衣ちゃん」


 限界だ。結衣ちゃん成分が足りなくて死んでしまいそう。

 このままだと近いうちに完全枯渇して私は干上がってしまうだろう。

 そうなる前に結衣ちゃん成分を補給したい。

 私を呼ぶ声が聴きたい、私といて楽しいっていう笑顔が見たい、柔らかくて良い匂いのする体を抱き締めたい、唇に唇を重ねたい。結衣ちゃんに会いたい――――。

 

「う~~~っ」


 多分、今なら見つめるだけで鬼でも殺せそうな目をしていると思う。

 そんな目で私は自室のワークデスクの隅に置かれているスマホを見る。

 手を伸ばせば届く距離。それさえあればすぐにでも会いたくて堪らない結衣ちゃんに連絡を取ることができる。

 

「む~~~っ」


 必死にその誘惑と戦う。

 今ここでスマホを取ってしまえば私は戻れなくなってしまうだろう。

 これを機に何かにつけて結衣ちゃんと連絡を取ろうとするかもしれない。

 自分が言い出した不要不急の時以外は会わないでおこうっていう約束を自分から破りまくることになるかもしれない。

 

 なんて思いながら何か理由があればいいのにって未練たらしく思ってる私はダメ人間だと思う。

 理由があれば結衣ちゃんと連絡が取れる。堂々と会うことができる。

 その理由が思いつかないので他人が何か理由を作ってくれないかな~、なんて馬鹿げたことを考えていた時、スマホが急に鳴りだし、私は驚いて体を急に傾けたことで椅子も一緒に傾き、椅子と一緒に床に転げ落ちてしまった。


「痛っ」


 それでもスマホをしっかり握っているのは我ながら流石だと思う。

 椅子を立て直しつつ誰からの電話だろうと確認すると私の大学の友人。

『結衣ちゃんからだったら良かったのに』なんてまたしても友人に失礼なことを考えてしまうのは最早病気かもしれない。そんな自分自身に呆れつつ電話に出る。

 その電話は私に吉報を齎すものだった。




「結衣ちゃん」

 

 その日の夕方。私は駅前で結衣ちゃんと待ち合わせて落ち合った。

 私を見かけて嬉しそうに私の元へ駆けてくる結衣ちゃんが可愛い。

 今日の彼女の服装は黒色の薄いブラウスに白のサロペット、黒の帽子と黒のリュックサック。

 対する私は白色のお腹が少し見える短めな半袖カットソーとハーフデニムパンツ、黒のショルダーバック。

 

「ごめんなさい。待たせましたか?」

「大丈夫だよ。私も今来たところ」


 いかにも恋人同士っていう会話をしてから私たちは目的地に向けて出発する。

 バス亭でバスに乗り、到着までの間結衣ちゃんの手にそっと自分の手を重ねる。


 結衣ちゃんはそれで私に微笑みを返してくれた。

 心に喜びが広がる。会いたくて会いたくて仕方なかった恋人。

 ここがバスの中じゃなかったら私は結衣ちゃんを抱き締めてキスしていただろう。

 人目があるのが悔やまれる。後で絶対何処かで結衣ちゃんとキスをしようって心に決めた。

 

 やがてバスは目的地前に到着する。

 地元A市から出て来てやってきたのは北の大地最大の繁華街S市。

 今回はここで結衣ちゃんとデートなのだ。


「先輩、まず何処に行くんですか?」

「ん~、やっぱり最初から水着見に行こうかなって。あんまり時間もないし」

「はい。旅行楽しみですね」

「うんうん」


 結衣ちゃんと手を繋いで歩く。

 大学の友人からの電話は今週末に旅行に行かないかという誘いの電話だった。

 場所は本州で泊まるところは部屋に温泉付きのホテルで更に近くには大きなプールがあるところ。

 聞くところによると友人の一人が地元の商店街の一角で行われていたクジで一等を当てたのだとか。

 ただそれが四名様だったので私に声を掛けたとのこと。

 向こうは二名だからまず私に参加の有無を聞いてきて私は参加することにした。

 そして誰か他に誘える人いたら誘ってってことで私は一も二もなく結衣ちゃんを誘ったのだ。

 友人に感謝。それまで物足りないとか酷いことばっかり思ってて本当にごめんなさい。

 おかげで干上がる前に結衣ちゃんと会う理由ができた。

 それだけでも嬉しいのに、水着イベントに加えお風呂イベントまで堪能できるという。

 楽しみすぎる。図らずもニヤニヤしていたらそれに気づいた結衣ちゃんに笑われた。


「先輩、楽しそうですね」

「うっ…。ごめんね、つい」

「ふふっ。私も楽しみだから気持ち分かります」

「結衣ちゃん…」


 なんていい娘なんだろう。気持ち悪い顔してた筈。その私を気遣ってくれるなんて。

 今すぐ抱き締めたい、キスしたい。キスして蕩けさせてそのままお持ち帰りしてしまいたい。

 

「先輩、着きましたよ」


 そんな邪な思考で脳内を埋め尽くされていた私を余所に結衣ちゃんはしっかり私を水着売り場まで連れて来てくれていたらしい。

 ハッ! と我に返って結衣ちゃんを見て、それから水着売り場を見る。

 色とりどりでいろんな様相の水着たち。早速水着売り場を回ろうとする結衣ちゃんに私は一声釘を刺した。


「ビキニにしようね」

「うっ…」


 私の言葉で喉に魚の小骨が刺さったかのような呻き声を出す結衣ちゃん。

 危なかった。やっぱり彼女はビキニ以外の水着を選ぶつもりだったんだね。

 そんなの私がつまらないよ。結衣ちゃんにはビキニを着て欲しい。着るべきだ。着なきゃいけない。

 私は結衣ちゃんを連れてビキニコーナーへと赴く。彼女は「私みたいな子供体形の女子にビキニなんて似合わないのに」とか言っていたけど無視した。


「どれにする?」

「えっと……」


 目の前の水着を一着一着取っては何故か呻いている結衣ちゃん。

「布が少ない」とか文句を言っているけれど、隠すべきところは隠せるようになってるんだからいいじゃないかって私は思う。


「う~ん。……あ!」


 そのうち結衣ちゃんはビキニコーナーの一角で立ち止まった。


「いいのあったの?」

「はい。この中ならいいかなって」

「どれどれ」


 そこはタンキニっていうタンクトップとビキニを合わせたような水着が売ってる場所。

 ちょっとだけ布面積多め。結衣ちゃんがどんな基準で選んだか分かる。

 これは彼女自身に選ばせていたらダメだ。私はそう判断して即座に彼女に提案をつきつけた。


「結衣ちゃん、私が選んであげる」

「えっ…。でも先輩絶対布が少ないの選びますよね?」

「うん。じゃああっち行こうか。そういうの売ってるし」

「先輩。私、まだ了解してないですよ!!」

「私、結衣ちゃんがビキニ着てるの見たいなぁ。お願い」

「もう…。そんなこと言われたら文句言えないじゃないですか」


 ちょろい。ちょろすぎて逆に心配になる。変な虫につき纏われたりとかするようになったりしなければいいけど。私がしっかり見張ってないといけないなって改めて心にそう思った。


「これとこれとこれと。それからこれも。あ、この紐のもいいかも。結衣ちゃん、全部試着してみて」

「あの…。幾つか裸と変わらないものがあるっていうか、これ着てたら変態だと思われますよ?」

「うん、大丈夫。試着だけしてもらうつもりだから。流石にそんな水着着た結衣ちゃんを外に出すわけにはいかないよ」

「試着も恥ずかしいんですけど…」

「結衣ちゃん、お願い」

「…分かりました」

「やった。試着手伝うね」


 言うと同時に結衣ちゃんを試着室へ押し込む。

 二人だと狭いがそういうことができないわけではないので問題ない。


「最初はこれかな」

「せ、先輩。目が怖いです。せんぱーーーーーーーーい」


 私はいろんな結衣ちゃんを堪能した。

 ここ数ヶ月の時間の中で一番楽しいひと時だった。




「疲れました……」


 帰りのバスの中、私の肩に凭れかかってぐったりしている結衣ちゃんが言う。

 彼女が疲れた原因は私。なのに私に凭れかかるなんて説得力と言うか、危機感と言うか、そういうものが足りてないような気がする。

 でも幸せなのでそんな意地悪なことは言わない。

 代わりにきょろきょろと周りを見て、それから結衣ちゃんの足元に目を落としつつ言葉を告げる。


「結衣ちゃん、お金落としちゃったみたいなんだけどちょっと見てくれる?」

「えっ」


 素直に首を下げる結衣ちゃん。

 

「何処ですか?」

 

 私も首を下げて彼女を見る。


「ほら、こっちここここ」

「先輩の側ですね。えっと…」


 彼女と視線が重なる。

 その瞬間、私は彼女の唇を奪った。


「っ!」


 驚いて顔を上げた結衣ちゃんの顔は真っ赤。

 まさかバスの中でそんなことされるとは思わなかったのだろう。

 耳まで紅色に染めて彼女は私に抗議してくる。


「もう。誰かに見られたらどうするんですか?」

「ちゃんと確認したから大丈夫だよ」

「でも」

「結衣ちゃんは私とキスするの嫌だった?」

「そんなことないですけど…」

「じゃあ良かった?」

「はい」

「ふふっ、可愛い」


 自分の応えに照れる彼女が可愛い。

 私は結衣ちゃんの手を取り、今度はその手にキスをした。


「大好きだよ。結衣ちゃん」

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