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女神様の御使いになりました。私と家族の恋と日常と平和貢献の物語。  作者: 彩音
外伝-アースパラレルワールド-
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外伝17.これから先も私たちは

◇<結衣>

 時は過ぎて私は大学一年生となり、里紗先輩は大学二年生となった。

 二ヶ月程前、受験生だった頃は歴史は繰り返すんじゃないかとびくびくしていたけれど、何事もなく新しい春を迎えることができた。

 後から聞いた話ではこちらの世界のあの男は凶行を行う前に盗みに入った家がたまたま警察官の家族がいる家で、しかもその警察官が非番で家にいたために抵抗虚しく取り押さえられてあえなく刑務所送りとなったらしい。その後その男がどうなったのかは知らない。この世界とアイリスとが結びついているのかどうかも。

 今となったらこちら側が私の居場所。

 大好きな恋人と共に私はこの世界で生きる。




 本日はデート。

 私たちはウィンドショッピングなどを楽しんでいる。

 はしゃいでる先輩が可愛い。私が受験生の間はさり気なく二人の距離を計ってくれて、会う回数なんかも減っていたからね。

 先輩と同じ大学に無事に合格しての久しぶりのデート。倦怠期? 何それ?

 だから私も先輩と同じ気持ち。二重の意味で同じ道を一緒にまた歩けてすっっっごく嬉しい。


「そう言えば結衣ちゃん、今日も恰好可愛いね」

「あ、ありがとうございます。先輩も素敵です」


 褒められて嬉しい。だって先輩に可愛いって言ってもらいたくて選んだ服なのだから。

 白のパーカーとベージュを基調に黒と白と赤のタータンチェック柄のミニスカート、今回のバックはだぼっとした感じの大き目な白のショルダーバック。

 こうして見ると私って白系の服が多いような気がする。

 先輩は薄いピンクのオープンショルダートップス、デニムパンツ、薄い生地で薄いグレーのステンカラーコート。濃い緑のリュックサック。

 春っていう感じがする。それに本来はストレートな亜麻色の髪が今日はゆるふわにウェーブがかかってて可愛い。


 そっと先輩の手を握ってみる。

 握り返してくれて、ついでに人差し指で私の手の甲を摩る先輩に心がくすぐったくなる。

 先輩が私に見せてくれる、伝えてくれる好意。そのすべてが私にとって幸せだと感じる。

 果たして先輩はどうだろうかと顔を伺うと何処かのゆるキャラみたいなほんわかとしたゆるい表情。

 可愛い。この人は何処まで私のことを魅了するんだろうか。何処まで私を先輩の虜にさせたら気か済むんだろう。人を嫌いだという気持ちには上限があるけど、好きだという気持ちには上限なんて無いような気がする。先輩が好き、大好き。私のこの気持ちをどうやったら先輩に伝えられるだろう。


 恋人繋ぎしてみた。頬を染めながら私を見る先輩。


「あんまり外で誘惑しないで欲しいかな。我慢できなくなっちゃいそう」


 その言葉で私まで恥ずかしくなった。でも恋人繋ぎを解こうとする様子はないのでそのまま。

 商店街を抜けて川沿いの道をゆっくりと歩く。

 数人私たちを訝し気な目でいたけれど、そんなのは気にしないし、ならない。今は圧倒的に先輩と二人でいられる幸せのほうが勝ってるから。

 今日は快晴なのでリバーサイドにある公園で楽し気に遊ぶ子供たちの姿がちらほら見られる。

 先輩と歩きながらそれを微笑ましく見ていると先輩が立ち止まる。


「どうしました?」

「結衣ちゃん、子供欲しい?」


 その問いかけは私たちの間には子供が授かれないからっていう意味合いのものだろう。

 IPS細胞とか話もあるけど、実用化には恐らくまだまだ遠い。

 私たちが生きている間に実用化されるか否かってくらいかな。

 正直に言うと子供は欲しい。

 ただし先輩との間に、遺伝子も私と先輩の遺伝子を継いだ子供が欲しい。

 それ以外だったら孤児の子を養子にもらうとかがいいかな。

 でもそれはそれ。これはこれだ。

 私は先輩と二人でいられたらそれでいい。

 だから先輩の問いかけに対する私の応えは。


「欲しいですけど、無理には欲しくないです。里紗先輩とこうやって二人でいるのが幸せで楽しいですから。それで充分です」


 恋人繋ぎを解いて先輩の腕に抱き着いた。

 さり気なく胸を先輩の腕に押し付ける形にすることは忘れない。

 頬擦りしていると先輩の焦った声が聞こえてくる。


「だから外で甘えられると困るよ…。んんん~、もう無理。結衣ちゃんこっち」

「えっ? えっ?」


 体を解かれ、手を掴まれて走り出す。

 先輩の手から熱を感じる。

 それがなんだか可愛くて、嬉しくて強く握ると先輩も強く握り返してくれた。


 川沿い、桜咲く並木道を抜けて到着したのは私たちの母校。

 私立燈華女子高等学校。今日は日曜日なので門は閉ざされている。

 そうでなくてもすでにこの学校の生徒じゃない私たちは立ち入り禁止なんだけど、先輩はここに何をしに来たんだろうか。

 頭の中に疑問符を浮かべていると先輩はとんでもないことを言ってきた。


「侵入するよ」

「はい?」

「じゃあ行こう」

「いやいやいやいや。もし誰かに見つかったら大変なことになりますよ? もしかしたら大学に通報されて停学とかありえますよ? 親にも絶対迷惑掛かりますし」

「大丈夫。この学校には私の親が多額の寄付をしてるから、もし見つかっても口頭注意くらいで済むよ」

「そういう問題じゃ…」

「結衣ちゃん、早く早く」


 ですから先輩…。っていない? 見ると先輩はいつの間にか門をよじ登って学校側に立っていた。


「結衣ちゃんも登ってきて」


 唖然とする。時々突拍子もない行動をする先輩だけど、今回のは一歩間違えば犯罪になる。

 そんな行動をするのはどうなんだろう。理性は私を止めようとするのだけど、別の感情が私を先輩の元へ導こうとする。

 しばし悩んだ末、理性を無視して感情に従うことにした。


「今から行きます」


 校門に手をかけてよじ登る。

 その途中、ふと感じる視線。

 なんだろうと見ると先輩がしゃがんで私の様子を見守っている?


「……薄ピンク」

「見ないでください!!」


 そう言えば今日ミニスカートだった。

 そんな恰好でこんなとこよじ登っていたら見えちゃうに決まってる。

 先輩に抗議するも結局降りるまでずっと見られ続けた。

 バカ……。


「こっちだよー」


 それから手を引かれて着いた場所は学校の庭。

 懐かしい。ここは生徒憩いの庭って言われてて昼休憩とか大勢の生徒で賑わっていた。

 でも今は誰もいない。それがなんとなく異世界に迷い込んでしまったかのようで僅か背筋が寒くなる。

 けれど隣にある確かな温もり。先輩と握られた手のおかげで恐怖心は薄らいで霧散していく。


「桜、結衣ちゃんと見たかったんだ」

「なるほど。それでここに…」


 大好きな先輩。その先輩と見上げる桜。

 私と先輩の横に二人並んでもその樹の幅はそれより太く、高さも私たち二人の身長を足しても頂点までは届くことはない。


「結衣ちゃん」

「はい」

「今なら二人きり…だよ」

「………そう、ですね」


 桜の木の前で先輩と向き合う。

 少し潤んだ瞳、紅色に染まった頬。

 可愛い。どくどくと心臓が高鳴る。


「里紗先輩」

「結衣ちゃん」


 先輩の肩に手を。

 先輩は私の腰に手を回して見つめ合う。

 近づける顔。先輩も同じように近づけて来て私たちは互いに目を閉じる。

 触れ合う唇と唇。離れると先輩が私に告げる。


「結衣ちゃん、貴女に永遠の愛を誓います」

「先輩…。私も先輩に永遠の愛を誓います」

「大学卒業したら、私と結婚してください」

「っ。……はい」


 桜の木に見守られながら誓いの言葉を口にした後、柔らかな風が吹く。

 それにより舞うピンク色の花。私たちのことを祝福してくれているよう。

 私と里紗先輩は微笑み合い、もう一度愛を確かめ合った。

 これから先も私たちは…共に。


Only you can make me happy or cry.

I have got a crush on you.

Me and you. Always.

~~~Happy End.

Only you can make me happy or cry.

私を幸せにできるのも、泣かせられるのもあなただけ

I have got a crush on you.

私はあなたに夢中なの

Me and you. Always.

あなたと私いつまでも

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これにて外伝も完結となります。

ご拝読ありがとうございました。

ところで正史と外伝、皆さまはどちらが真のハッピーエンドだとお感じになりますか?

どちらも一長一短ありますよね。なんて思う今日この頃。作者でした。


ではまたいずれお会いししまょう。

2020/04/30 作者

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