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女神様の御使いになりました。私と家族の恋と日常と平和貢献の物語。  作者: 彩音
外伝-アースパラレルワールド-
48/62

外伝09.デート その2

◇<結衣>

 レストラン街に移動してきた。

 こういうところってどうしてこう、値段が高いんだろう。

 言い出しておいてなんだけど、別の場所に行ったほうが良かったかもしれない。

 値段が気になる。後、なによりも食べたいものがない。


「結衣ちゃん、食べるもの決まった?」

「里紗先輩はどうですか?」

「う~ん、しいて言うならお好み焼き?」

「どうして疑問形なんですか? 食べたことないとかです?」

「うん。見たことはあるんだけどね。食べたことはないから食べてみたい。あ! でも結衣ちゃんが他のが良かったら別に他のでも」

「いいですよ、お好み焼きで。私にばかりそんなに気を使わないでください。里紗先輩も自分のやりたいこと、食べたいこと言ってください。その…デートって二人で決めるものじゃないですか。だから」


 最後の方またしても小声になってしまった。

 けど里紗先輩が私の頭を撫で始めたということは聞こえてたってことだろう。


「はぁ、もうもう可愛い。お持ち帰りしたい」


 大声でそういうことを言うのはどうかと。

 でも今回先輩に火をつけたのは私なのでここは羞恥に耐えます。



 私は広島風お好み焼きのそば豚玉。

 里紗先輩は同じく広島風お好み焼きのカキ入りそばエビ玉を頼んだ。


 ソースの香ばしい香りがする。

 ここは座敷とカウンター席があり、カウンタ―席の場合はお店の人が焼いてくれるが座敷の場合は自分たちで焼かなければいけない。そういうルール。カウンター席を選んだ私たちはお好み焼きが焼きあがるまでスマホなどを弄って時間を潰す。

 すぐ隣にいるのに里紗先輩からSNSが来た。

 開いてみると【今日の結衣ちゃん本当に可愛くてドキドキする】っていう内容。これをどういう顔して入力しているのか。先輩の顔色を伺う。真顔だった。真顔で恥ずかしいことを堂々と入力していた。

 またSNSが届く。【結婚する?】。


「うっ………っっっっっ」


 心臓に悪い。私はスマホをバックにしまい込んだ。デート中は封印します。


 スマホをしまい込んだことで里紗先輩がこちらをじーーっと見てくる。

 視線を合わせるのが怖い。のでひたすら前を向いてお好み焼きが焼けるところを見る。

 視線で私の顔に穴が開きそう。羞恥な時間を過ごしているうち、私のお好み焼きが焼きあがった。


「へい、お待ち」

「ありがとうございます」

「そっちのお嬢さんはもう少し待ってくれな」

「はーい」


 鉄板の上。なので冷めることはない。

 里紗先輩のが焼きあがるまで待とうとしたら先に食べていいよと言われた。


「いただきます」


 ヘラを使って食べる。久しぶりに食べた広島風お好み焼き。

 お〇ふくソース美味しい。やっぱりこれだよね。

 私が1/3程食べ終えたところで先輩のお好み焼きも焼きあがった。

「いただきます」を言っておっかなびっくり私の見よう見真似でヘラを使い、お好み焼きを食べやすい大きさに切って口に運んでいく。

 お気に召したらしい。ふうふう冷まして次々お好み焼きを口に運ぶ里紗先輩。その姿が微笑ましくて、なんだか可愛い。

 豚玉とカキ入りエビ玉をシェアしあって食べたりもした。

 どっちも美味しかった。ごちそうさまでした。



 次に来たのは映画館。

 観たのは乙女ゲームの世界に悪役令嬢として転生した女の子が卒業を一ヶ月前に控えたその日、前世の記憶を取り戻してそれまでの自身の行いを悔い、ヒロインと仲良くするようにするっていう何処かで聞いたことがあるような内容のアニメだった。何処で聞いたかは忘れたけれど。

 映画終了。ショッピングモールから出て町を歩き始める。

 今日も変わらず地元の商店街の宣伝がスピーカーで放送されているのが妙に落ち着く。

 変わらないっていいよね。ここはずっとこのままであって欲しいと私は思う。

 

 てくてく歩いて着いた場所はある意味思い入れのある場所。

 エスカレーターで四階まで登ってすぐの場所。アニ〇イト。


 里紗先輩はさっきのアニメグッズを探し始める。

 今日分かったことがまた一つ。里紗先輩は意外とミーハー。

 微笑ましく眺めていたら里紗先輩が聞き捨てならないことを呟いた。


「そう言えば樹木くんもアニメになってるんだよ」


 二人で幾つかグッズを買った。

 一人頭大体二千円から三千円分くらい。

 また幾つか交換してアニメ〇トの前にあるベンチに座って少し休憩。


「結衣ちゃん」

「はい?」

「樹木くんに嵌ってない?」

「里紗先輩と同じの持ってるんだなぁって思うとなんだか樹木くんが可愛いかもって思えてきたのでそれで…」

「それって…」

「はい?」

「ううん、なんでもない」

「そうですか」


 何が言いたかったんだろう。

 すぐにグッズを漁り始めたってことは大したことじゃなかったのかな。

 

「ん~」


 っと手と手の指を絡めて腕ごと上に上げて伸び。

 手を降ろすとグッズを漁り終えた先輩と手が触れ合う。


「わっ。ごめんなさい」


 またいつかのようにすぐ離れようとしたら手を取られ捕まえられた。


「里紗先輩?」

「帰したくないなぁ」

「えっ?」

「結衣ちゃんをお持ち帰りしたい。もう~、結衣ちゃんが可愛いからいけないんだよ?」

「そう言われ…ても?」


 困る…のかな。それより里紗先輩急にどうしたんだろう。

 ん~、一日楽しかったってことだよね? だから祭りの後みたいな気持ちになってるってことでいいよね?

 元気づけてあげないと。里紗先輩は凹んでるより元気な方が可愛いから。


「里紗先輩」

「なぁに? 結衣ちゃん」

「まだ今日は終わってないですよ? 次何処行きます? 私まだまだ付き合いますよ」

「いいの?」

「はい。だから元気出してください。里紗先輩は元気な方が可愛いですよ」

「そういうところ!!」

「はい?」

「はぁ…。無自覚天然怖い」

「ん?」

「なんでもない。じゃあ行こう。結衣ちゃん」

「はい」


 先輩が私の手を握ったまま立ち上がる。

 この後私たちは商店街を見て回り、その後バスに乗ってちょっと遠出。

 激安の殿堂なお店で買い物したり、その周りを観光するなどした。


 楽しかった時間も本当に終わり。

 そろそろ「また学校でね」とお別れの時間。


「う~~~っ」


 また里紗先輩の元気が萎んでいく。

 でも我が儘を言わないのはお互い明日からまた学校だって思ってるからだろうか。

 デート楽しかった。最初はケチがついたけど、後は先輩といろんなとこ行けて私は嬉しかった。

 二人きりでっていうのが特にいいよね。今度は私から誘ってみようかな。


 あ!そうだ。


「里紗先輩」

「ん~~~?」

「自宅まで送らせてもらっていいですか? 家に無事に帰るまでがデートです。なんて」


 気取ってみようかと思ったけど、どう考えても似合わないのでおどけてみせる。

 先輩は目を見開き、少しの間逡巡した後、私の手を取って私に告げた。


「私が送っていくよ。結衣ちゃんの家も知りたいし」

「えっ? ですが…」

「ほら、また朝みたいなことになったら目も当てられないし。私が結衣ちゃんを守る」

「でも…」

「お願い。結衣ちゃんを送りたいの。正直に言うと少しでも長くいたいの。だから、ね?」


 そう言われたら断れない。

 我が儘言って欲しいって言ったの私だし、里紗先輩の家と私の家はそんなに距離が離れてるってわけでもないし、大体私より先輩の方が強いのも確かだ。先輩の言う通り先輩を送り届けた後で私に何かあったら里紗先輩は一生後悔することになるだろう。そんなことさせるくらいならここで我が儘言わず甘えた方がいい。


「お願いします」


 言うと里紗先輩は途端に笑顔になる。

 可愛い。私の手の指に自分の指を絡めて里紗先輩は歩き出す。


「じゃあ行こう」


 待って。これって恋人繋ぎだよね。私が意識し過ぎなの?

 いや、でもこれってそういう人同士がするものだよね。


「里紗先輩?」

「結衣ちゃん、荷物持ってあげる。貸して」

「これってこ――。……いえ、そこまでしてもらうわけには」

「いいからいから。私に格好つけさせて」

「うっ…」


 そう言って私にウィンクする里紗先輩に私の心臓がドキッと高鳴った。

 無言で荷物を手渡し、歩いているうちにふと気づく。

 先輩は私をずっと歩道側に歩かせて自分は道路側を歩いている。

 本当に私のことを守ろうとしてる。


 思えば今日一日ずっとそうだった。思い返してみて間違いない。

 意識したら体の熱が上がって来る。心臓の鼓動が早くなる。

 格好良すぎだよ。里紗先輩。私は家に帰るまで先輩の顔をまともに見ることができなかった。




 気が付いたら家に着いていた。

 ずっと里紗先輩のことを考えていて危うく通り過ぎるところだった。

 気が付いて良かった。先輩にお礼を告げて私はぺこりと頭を下げる。


「送ってくださってありがとうございました」

「ううん、ところでここが結衣ちゃん家?」

「はい。庶民の家です」

 

 二人で家を眺める。

 少しして視線を戻そうとすると頬に感じる柔らかくて温かいもの。

 すぐにはそれが何か分からなかった。

 けど、里紗先輩が私から離れたのを見て、それが何か気が付いてしまった。


「キ…キキキ…ス?」

「今日は楽しかった。結衣ちゃん、また明日学校で」


 私が呆然としている間に里紗先輩は走り去る。

 私はそれを見送った後、その場にへたり込んで家族や近所に聞こえないくらいの声量で奇声を上げた。


「あばばばばばばばばばっっっっ」

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