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女神様の御使いになりました。私と家族の恋と日常と平和貢献の物語。  作者: 彩音
外伝-アースパラレルワールド-
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外伝04.気乗りしないお誘い

◇<結衣>

 高校への通学路。私は頭の中を整理しながら歩いている。

 もしかしてこの世界は地球の平行世界なんじゃないかっていう疑惑は確信に変わった。

 というのもしれっと私の部屋にVRことヴァーチャルリアリティのゴーグル型ゲーム機が置いてあったのだ。今朝気が付いた。

 フルダイブできるやつ。実際に私が過ごした頃の地球はまだそこまでの技術は確立されていなかった。

 あったのかもしれないけど、少なくとも一般向けにはまだ提供されていなかった。それがここにはある。

 試しに朝ご飯前にゲームにログインしてみた。

 プレイヤーは妖精となって世界を舞うゲーム。

 たまたま見かけた男性な黒い妖精さんと女性な青い妖精さん強すぎだった。

 黒い妖精さんは二刀流で敵をバターみたいに切り裂いていくし、青い妖精さんは十一連撃で敵を圧倒するんだもの。あまりにあれだったから見なかったことにした。うん。

 それに他にも疑惑から確信に変わった理由がある。

 お姉ちゃんの残念率が私が知るお姉ちゃんよりUPしていたこと。

 それと八つ違いだった弟が五つ違いになっていたこと。

 お父さんの勤めてる企業もそう。大企業に一歩届かない感じの中小企業だった筈なのに大企業になってた。

 

(これらの差異は後々何かを私に齎したりするのかな。それともそれはそれって感じなのかな。妙なことが起こらなければいいんだけど…)


 一人で歩く通学路。歩道橋が途中にあるけれど、トラウマになっているのでそこは絶対使わない。

 それよりも少し先までわざわざ歩いて横断歩道の前に立つ。信号が赤から青に変わるのを待ってたら背後から肩を叩かれた。


「おはよう」


 わざわざ振り返らなくても誰だか分かる。敦美だ。

 むしろ振り返ったら人差し指が突き出されてて頬にそれが刺さるよう待機されてるのだ。

 ふっふっふ~。引っかかってあげない。


「む~。引っかからないかぁ」


 ほらね。残念でした~。


「つまんないんですけどー」


 信号が青に変わる。私の隣に来て歩き出す敦美。

 一度首を曲げて私の顔を覗き込んだけど、なんだろう?

 おや? 笑顔になった。


「今日はすっきりした顔してんじゃん。昨日は表情が若干抜け落ちててまじ心配したよ」


 そっか。敦美は見た目ギャルっぽいのに優しいな。

 外見と中身のギャップ。これって偏見かな。ギャルって根は優しい娘が多いって聞くよね。認識改めた方がいいのかも。


「心配してくれてありがと」

「気にすんなし。うちら友達じゃん」

「そうだね」


 自然と笑顔になる。私たちはそれから日常の他愛もない雑談をしつつ学校への道を急いだ。




 金曜日の一限目終了後の休み時間。敦美が私の髪を弄りながらぶつぶつと何か言っている。


「まじ良い匂いするんですけど。結衣ってシャンプー何使ってんの?」


 人に髪を触られるのってなんでこんなに気持ちいいって感じるんだろ。

 とは言っても心を許してる人限定だけどね。それ以外の人に触られるのは嫌。


「何って市販のだよ。山桜の香りのやつ」

「これ山桜かぁ。髪さらさらだし、良い匂いするし、まじ羨ましい。…っとできた」

「褒めてくれてありがとっ。結構嬉しい」

「結構? ここはもっと喜んでいいところっしょ。鏡見る?」

「あははっ。じゃあ凄く嬉しい。見る」


 敦美が弄ってたのは後ろの髪なので自分自身も荷物の中から折り畳み式のコンパクトミラーを取り出す。

 敦美がそれを見て上手く鏡に私の姿が映るよう調整してくれる。

 ハーフアップだ。可愛い。


「可愛い」

「おっ! ナルシスト発言?」

「違うから!」

「冗談冗談」

「もう。せっかく褒めたのに」

「気に入ってくれて良かった。結衣は素材がいいから触り甲斐があって楽しいんだよね~」


 素材ねぇ。おだてるの上手いなぁ。その気になりそうになるよ。

 実際は私なんてゲームで言えばモブだけどね。

 

 敦美。何故遠い目をするのかその理由を述べよ。

 ため息までつかれた。なんでよ!


「結衣さ~。もうちょっと自分の可愛さに気づいた方がいいと思う」

「さっきナルシストをバカにするような発言してなかった? 矛盾してるような」

「私可愛いってちょっと言ってみ?」

「え~~~っ」


 絶対引かれる。分かっていながら何が悲しくてそんなこと言わなければならないのか。

 普段の私ならそう思うところだけど、揶揄ってやろうと思って言われた通りやってみた。


 鏡を見ながら右向いて、次に左向いて。寝ぐせとかはない。顔に汚れとかもついてない。

 前髪をちょっとだけ弄る仕草をしながらここでセリフ。


「うん。今日も可愛い」


 別に大声を出したりしてないのに教室中がざわめいた。

 恥ずかしい。やっぱりやめとけば良かった。顔を両手で覆って机に突っ伏す。


「あ~、うん。結衣はやっぱり鈍感なくらいがいいと思う。…っと先生来た。破壊力まじパネぇ」


 もう二度とやらない。起きて授業の用意をしながら私は固く心にそう決めた。




 時は進んで四限目終了。

 今日も今日とて敦美と机を引っ付けてそこに広げるお弁当。

 いつもならこのまま二人だけれど、今日は招かれざる客がやって来た。


「やっほ~。結衣っち、敦美っち。ちょっといい?」


 瞳につけ睫毛、耳にピアス、唇に紅色の口紅。髪は派手な金髪に染められていてショーツが見えそうな程短いスカートを穿いている。香水臭い。私たちのクラスメイトの一人。名前は矢吹純子。学校一の不良と言う意味ではない別の意味で問題児で、あまりこういう言葉は使いたくないけど淫乱女(ビッチ)と言われている女生徒。噂では七股かけているらしい。日曜日から土曜日まで毎日交代で男の部屋に遊びに行って寝泊まりしてるとか。それで飽きたらポイ捨てしてすぐ新しい彼氏を作ってその彼氏と寝る。学校では【噂】という形ではあるけれど、SNSに彼氏といるところを自慢気に上げているので噂は噂ではなく真実だと誰もが思ってる。勿論私も。だからあまり関わりたくない。というか私たちと気質が全然違って別グループに属している彼女なのにどうしてここに来たのか。


 警戒心を隠すことなくじっと矢吹純子の顔を見る。

 関わりたくないっていう気持ちが顔に出てるだろうに、純子はそんなこと気づいてないかのように自分の用事を語り始めた。


 聞きたくない。お弁当食べよう。うん! ミニハンバーグ美味しい。


「実は合コンの女子の数が足りなくって~。結衣っちと敦美っち参加してくれない?」


 嫌です。合コンなんて興味ありません。自分が男漁りしたいだけって見え見えなのに巻き込まないで欲しい。

 お弁当をつつきつつ敦美を目線だけで見ると彼女は苦笑いしている。

 敦美は彼氏が欲しいとたまに言ってるから満更でもないのかもしれない。

 多分行きたいんだろう。私は大袈裟にため息を吐いて純子に続きを促す。


「それで? なんで私たちを誘いに来たの。自分のグループの子誘えばいいのに」

「だから皆用事があって来れないんだって。それに今度来るメンバーの男に結衣っちの写真送ったら超人気でさ~。あっち盛り上がってるんだよね。そこまでなってるのに連れていけないってなったらあたしのメンツに関わるじゃん。だから結衣っち、お願い参加して」

「何勝手に!!」


 ふざけてる。私に話をする前に写真を送るってどうなのよ。それ以前にいつ撮ったんだ。私は純子に撮影を頼まれたことなんてなかったと記憶してるんだけど。

 憤慨してたらこのことは敦美が私の代わりに聞いてくれた。


「結衣の写真っていつ撮ったん? 勝手に送るのってマナー違反じゃね」

「ああ。授業中こっそり。それはごめん。で来週の土曜日って空いてる?」

「あんたねぇ」

「おっとごめん。電話。彼氏から。ちょっと待ってて」


 スマホを手に純子はバタバタと廊下へ。

 後に遺された私たちは互いに顔を見合わせて私は再び大きくため息、敦美は弁当箱から箸で唐揚げを摘まみつつ私に問うてくる。


「で、どうする?」

「私は行かない」

「だよね。でも結衣と二人じゃないとダメなのかな。うちはちょっと行ってみたいんだよね」


 そんな顔で見ないで欲しい。私が意地悪してるみたいじゃない。

 行きたくない。行きたくないけど、敦美のために折れるしかないのかな。心配かけた借りもあるし。


 心の中で葛藤してたら純子が戻って来た。満面の笑み。何か良いことあったのだろう。聞かないけど。


「結衣っち、敦美っち。決めてくれた?」


 敦美が私を見る。少し残念そうに…。


「あ~、悪いんだけどうちら…」

「いいよ。行くよ」

「えっ?」

「行くよ。合コン。何時に何処へ行けばいいの?」

「結衣、無理しなくても」

「丁度暇だし。でも私に()()しないでね?」


 敦美の驚愕の視線を受けながら受け応えしてお弁当を頬張る。

 行くだけ行って私は会場の隅で壁と一体化してたらいい。そう開き直る。


「そっか」


 嬉しそうな敦美。これで貸し借り無しだからね。


「まじ助かる。じゃあ明日の午後五時にこの学校の近くにあるファミレスで」

「了解」


 楽しそうな二人の声を聴きながら、口の中に大学芋が入ってて声が出せない私は小さく頷いて了承の意を示した。

良いですよね。ク〇シエのい〇髪。いい匂いで女性らしさが…。

えっと外伝も今日で四話目ですが、この物語を読んでくださっている大切な読者の皆様の心の琴線に少しでも触れるものがありますでしょうか…?

そういったものをお届けできていれば嬉しいです。

もしよろしければブックマークや評価、感想などいただけると作者が小躍りして喜びます。

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