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03.リーシャ・エシュアル

 自動人形(オートマタ)機械人形(ゴーレム)との違いはその形状と材料。

 自動人形(オートマタ)が人間に近い形状で材料は鉄や木材。

 機械人形(ゴーレム)は某有名RPGに出てくるあの形状。材料は石や泥や鉄といったもの。

 

 その他に魔力人形(マナマータ)というものがある。

 それはこのユグドラシルダンジョンでだけ作ることが可能なアーティファクト。

 形状は人間に近いものであることは同じ。だが材料が魔獣の皮を筆頭に骨部にミスリル、心臓部に魔石、脳部にも魔石が必要になる。後は作成者の血液。それを受けると魔石が反応して人間と似たような成分でありながらそれよりも圧倒的に丈夫な外身と内臓を空気中に漂う魔素(エーテル)を勝手に集めて作り出すのだ。それぞれの器官の働きまで忠実に再現して。

 ここまで再現度が高いと詳しく調べない限りは実は人間ではなく魔力人形(マナマータ)であるとは分からないだろう。


◇<ユイ>

 シルアに頼んで材料を揃え、私に似せて魔力人形(マナマータ)を作成した私はDPを使用してその魔力人形(マナマータ)と本体の人格と感覚を結合(リンク)魔力人形(マナマータ)が見聞きしたもの、触れたものは本体にその感覚が伝わるようにした。

 ついでにそれでもまだまだ有り余ってるDPを使って魔力人形(マナマータ)の体を強化もした。

 様々な魔法を使用可能に。身体能力をこの世界に住む人間・亜人より若干高めに。

 これはシルアの意見を聞きながら設定したのだけど、この時の私はシルアが私に言った設定が実は私が思っているよりも高めにされていることなんて知る由もなかった。


「できた」

『おめでとうございます。マスター』

「ありがとう。じゃあちょっとアイリスを見てくるね」

『はい、いってらっしゃいませ』


 魔力人形(マナマータ)が動いている間本体は休眠。

 完全無防備になるのでシルアに管理を頼んだ。

 コアの中に取り込んでるの見たけど大丈夫だよね?

 多分大丈夫。大丈夫大丈夫。

 魔力人形(マナマータ)の体の具合を一通り確認して不具合など感じなかったので私はてくてくとこの空間の外へと歩き出す。

 辿り着く世界樹へ引き戻される境界線。

 ドキドキしながらそこをまたぐ。

 なんなく通り抜けることができた。

 

「よしっ!」


 目論見通り。

 後は張り切って外へ。

 暫く行くと揺らぐ空間。

 第六感のようなものでついにアイリスに出たのだと理解する。

 

「わっ! 空がエメラルドグリーン」


 やっぱり異世界だ。

 地球やユグドラシルダンジョンのコバルトブルーとは異なる空。

 違和感が拭えないけど、まぁいつか慣れるよね。


「ん~、どっちに行けば人に会えるかな」


 気持ちを切り替えて探索開始。

 そこら辺に落ちていた木の枝を拾って倒れた方向へ進む。

 完全運任せで歩き、三十分ほど経った頃、出会ったのが第一アイリス人ことリーシャ・エシュアル。後の私の運命の人だった。



---

「そう言えば初めて会った時はいきなり弓で射られたなぁ」

「うっ。だって仕方ないじゃない。ハイエルフの領域(テリトリー)に人間が不法侵入してるって思ったんだから」

「…怒ってる顔も可愛かった」

「………バカッ」

---



◇<ユイ>

「そこの人間止まれ」


 ハイエルフの領域(テリトリー)

 その時の私はそんなことなんて知りもせず突然聞こえてきた警告の声にちゃんと立ち止まったのだけど、リーシャは容赦なく矢を射ってきた。

 頬を掠め、後ろに飛んで行った矢にぞっとしたことは今でも覚えている。

 例え魔力人形(マナマータ)でも心臓の代わりの魔石を砕かれたりでもしたら死ぬ。壊れる。

 魔力人形(マナマータ)が死んだら魔力人形(マナマータ)と感覚を結合(リンク)している本体も死ぬ。

 アイリスに出て来て早々に死。

 慌てた私はどうにか命だけは助けてもらおうと再び矢を番えてこちらを狙っている狩人に助けて欲しいと意思表示するように両手を挙げた。

 私は抵抗するつもりはありません。武器なんて持ってません。

 地球でそういう意味を現すその意思表示がアイリスでも通じるかは分からなかったけど、この時の私は兎に角生き残ることに必死だったのだ。


「お願い。撃たないで」


 私は駆け引きとかができない。

 難しいことを考えることも苦手で思ったまま行動することが多い。

 だからまんまの命乞いをした。

 それがどうやら今回は功をなしたらしい。

 警戒はしているものの狩人から若干殺意が消えた。


「ここはハイエルフの領域(テリトリー)だって知っててきたのかしら?」

「ハイエルフ?」


 言われて狩人を見てみるとそう言えば耳が長い。

 ほんと齧ってて良かった。ファンタジー物。ハイエルフ、まさか本物を目にすることができるなんて感動。

 そう認識すると私は命の危機なことも忘れて目の前の狩人・ハイエルフに見惚れていた。


「…質問に応えなさい」

「……! ごめんなさい。知りません。本当に知りませんでした」

「……その顔、嘘は言ってないみたいね。だったらどうしてここにいたのかしら?」

「それは…えっと…」

「それは?」

「そう、迷子です。迷子」

「迷子?」

「はい」


 ハイエルフの彼女が呆れた表情を見せる。

 そんな顔も可愛いのは反則ではないだろうか。

 友達になれないかなーなんて考えていると彼女は弓を降ろしてこちらに近づいてきた。


「貴女名前は?」


 唐突に名前を聞かれて返事に詰まる。

 なんで急に? とも思ったがハイエルフの彼女の顔を見ていると他意はないっぽいと感じ質問に応える。


「七瀬結衣です」

「ナナセ? 変わった名前ね」

「あ! そっか。家名が後になるんだっけ。ユイが名前です。ユイ・ナナセ」

「ユイ。私はリーシャ・エシュアルよ。家名があるってことは貴女は貴族の令嬢なのかしら?」

「えっと」


 私は根っからの庶民だ。

 今は前世となった地球で生きてた頃も今世アイリスでも庶民。

 貴族じゃないし、今後も関わるつもりなんてない。

 というか貴族なんているんだ…。

 ハイエルフの彼女の恰好から言ってもこの世界の文明は中世程度と予測。

 地球と同じくらい年を取った星なのに文明の進みは遅れてるっぽい?


「私は庶民です」

「でも貴女、家名もあるし何よりその身なり。どう見ても令嬢にしか見えないわ」

「実はここだけの話なんですけど」


 私は女神イリス様の使者であることを正直にハイエルフの彼女に伝えた。

 突然荒唐無稽なことを言われたので微妙な顔になるハイエルフ。

 この世界に厨二病という概念があれば私はきっとそう思われたに違いない。

 こんな話信じろっていう方が無理だ。

 ハイエルフの彼女の反応は正しい。

 私が当事者じゃなくこんな話ふられたら「貴女頭大丈夫?」って聞くだろうから。うん。


「本気で言ってるの?」

「やっぱり信じられませんよね」

「当然ね。なんなら証拠を見せてみて」


 ハイエルフの彼女としては適当に言ったつもりだったのだろう。

 でも私はこれ幸いと証拠を見せることにした。


「じゃあ証拠を見せるので着いてきてください」

「着いて来てって何処へよ? まさか油断させて私を奴隷商人に売り渡すつもりじゃないわよね?」


 奴隷制度あるのか。やだなぁ。そんなの無くなってしまえばいいのに。


「そんなことしません。…と言っても信じられないですよね。じゃあもし私が少しでも妙な素振りを見せたらその背中の弓か太ももに隠してる短剣で私を殺してください」

「…気づいてたのね」

「まぁ。目線がちらちらそっちにいってたりしたので」

「ふ~ん。また警戒し直したほうがよさそうになってきたわね」

「うっ…。本当に何もしませんよ~」

「まぁいいわ。何処に行くか知らないけど、案内して」

「分かりました」


 こうして私はハイエルフの彼女を世界樹の私の家に招待するため歩き出した。

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