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番外編04.魔獣ハンターユナ その2

◇<ユイ>

 その後登録は無事にしてもらえることになった。

 驚かれた理由は私の予想通りに子供だと思われたことと、私の容姿がとてもハンターをやるような人じゃないって思ったかららしい。

「年齢は成人済みですし、これでも魔法に関しては自信があるんですよ」と彼女の前で右手の平の上に氷魔法で氷を出現させ、風魔法でそれを浮かせて犬の彫刻を作り上げると納得してくれた。

 

「なるほど。魔術師様だったんですね」

「そんなところです」

「それでは登録作業に入りますね。書類に必要事項を記入してもらいたいんですが、文字は書けますか? もし書けないようでしたら代筆いたしますが」

「大丈夫です。ささっと書きますね」


 受付嬢さんから書類を受け取り必要箇所を埋めていく。

 名前については本名じゃないとダメなのか聞いたところ、「大きな声では言えませんが偽名の方もそこそこいらっしゃいます。ハンターを生業とする方はいろいろと事情がある方が多いので」という返事が戻ってきたので有難く私も偽名を使うことにした。

 ユイ・ナナセ。名前と苗字を合わせてユナ。単純明快な偽名。

 書き終えて不備がないか確かめて受付嬢さんに書類を渡そうとしたところ、自分が書いた文字を見てふとこんなことを考えた。


 アイリスの文字で書いてあるなって。

 今までもこの文字で授業とかしてたのにこの時どうして改めてそんなこと考えたのかは分からない。

 まぁそういうこともあるよね。

 アイリスの言語は東と西で大まかに分かれてる。

 地球は日本語や英語やフランス語など多種多様な言語があるのに対しアイリスは東アイリス語と西アイリス語の二つだけ。私たちが住んでいるセレイア大陸は西に属するため私たちが普段会話や書類に用いているのは西アイリス語ということになる。

 私は日本語は勿論として、他に英語を少々話して書けるくらいだったのにいつの間にアイリス語なんて覚えたんだろう? って今更気になったのだ。

 多分イリス様が転生する時に言語理解能力を授けてくれたんだと思うけどね。

 ありがとうございます。イリス様。おかげで助かってます。

 心の中でイリス様に祈りを捧げていると受付嬢さんがこちらを訝し気な目で見ていた。


「どうかされましたか?」

「いえ。なんでもありません。…あ! これ書けました」

「はい、確かに。…ユナ様」

「はい」

「ユナ様も御使い様に憧れてこの名前なんですか?」

「と言いますと?」

「ここだけの話ですが、女性のハンターさんは御使い様からお名前をいただく方が多いんです。そのままユイという名前をお使いになっていらっしゃる方もいます」

「へぇ」


 私はそれを聞いて首を斜め後ろに向けた。

 幾人かの女性ハンター。あの中に私の名前を使ってる人がいる。…と。


「ユナ様?」

「いえ、御使い様ってそんなに憧れますかね?」

「それはもう。何と言ってもイリス様の義理の妹様ですから。その方が私たちと同じ世界に生きて歩いていらっしゃるのですよ。憧れて敬うのは当たり前だと思います」

「そ、そうですか…」


 義理の妹。もう完全にこの世界の人たちに根付いてる。

 軽い頭痛が。どうしてこうなった…。


「ユナ様、ハンターギルドの諸注意などお伝えしたほうがいいですか?」


 っといけないいけない。若干自分の世界にトリップしかけていた。

 受付嬢さん、ナイスです。おかげで戻ってこれました。


「よろしくお願いします」

「はい。ではお話しますね。ユナ様には間もなくハンターの証であるペンダントをお渡しすることになっています。そのペンダントにはユナ様の情報が書き込まれていきます。ちなみにお渡しの際、ユナ様に魔力をペンダントに帯びさせていただきます。それによりそのペンダントはユナ様本人しか扱えないものとなります。これは盗難防止のための処置です。情報としてはユナ様の名前と登録ギルド、ハンターランク、受けた依頼の数、成功数、失敗数が登録されます。それから依頼を受けてギルドに戻ってこられた際にきちんと受けた依頼を自身がこなしたかどうか判断するという役割もあります。赤に光ればなんらかのずるをしたので失敗。青に光れば依頼達成という感じですね。ユナ様はずるなんてするようなことはないと思いますが、念のためお伝えしておきます。それとペンダントに書き込まれた情報は何処のギルドでも見ることができます」


 ふむふむ。そんなことできるんだ。この辺りは地球の技術より凄いなぁ。


「ちなみに盗難防止って具体的にはどうなるんですか?」

「はい、ユナ様の元から持ち去ろうとすればペンダントから警告音が鳴って盗難されようとしていることを知らせてくれます。半径十*メトル以上離れてもこの音が鳴りますのでペンダントは常に身に着けていただくか傍に置いていただくかしてください。ただそんなペンダントも持ち出す方法が無いわけでもありません。ユナ様の命が尽きればペンダントは効力を失います。つまりですね…」

 

 なるほど。依頼で命を失うことの他に同業者に命を奪われることもある。

 それを気を付けてくださいって受付嬢さんは言いたいんだね。

 私が理解して頷くと受付嬢さんも同じく頷いて次の説明が始まる。


「では、次はギルドランクの説明をしますね。ランクはアイアンから始まり、ブロンズ、シルバー、ゴールド、サファイア、ルビー、ダイヤモンドと上がっていきます。ランクが上がるのは依頼の成功数、失敗数を考慮して基本的には私たち受付嬢が判断してギルドマスターに進言し、認められたら上がります」

「ふむふむ。なるほど」

「ちなみに依頼は同ランクのものを受けていただくことをギルドは推奨していますが、一つ上のランクのものを受けていただくことも可能です。ですが死亡率が高いのでお勧めはしません。近々ハンターギルドのギルドマスターの中でも特に上役が揃うハンターギルド幹部会を開いてそれを不可にしようという動きもあります。自分の実力の背丈に見合った依頼を受けるようにしてください」

「分かりました」

「諸注意はこれくらいになりますが、何か質問などありますか? なければペンダントをお渡ししますね」

 

 そう言って席を立とうとする受付嬢さんを引き留める。

 質問あるよ。どうしても聞いておきたいことがある。


「質問があります」

「あ、はい。どのようなことでしょうか?」


 受付嬢さんがカウンター前の椅子に座りなおす。

 それを見届けてから私は質問を投げかける。


「貴女に私の専属の受付嬢さんになってもらうことはできますか?」

「それは」


 受付嬢さんの目が白黒してる。

 隣のお局様も何故か同じ顔してる。


「可能です。一応そうなった際のメリットとデメリットをお話しておきますね。

 メリットとしては私に来た良い依頼をユナ様に即座に受けていただくことが可能なこと。

 デメリットは私にはそのような依頼は来ないこと。それから専属となりますと、この町のハンターギルドをユナ様がご利用の際は他のカウンターが使用不可能で私のカウンターだけ利用可能ということになります。私が休みの時か辞める時は別ですけど、ですので私が専属の受付嬢になってもユナ様にデメリットは多くあってもメリットはありません」

「貴女にメリットは?」

「それはあります。ユナ様が活躍して下ったら私の拍が付きますし、給金が上がります」

「デメリットは?」

「良くも悪くもユナ様に左右されるということでしょうか」

「正直だね」

「あっ…。も、申し訳ございません」


 受付嬢さんが慌てて立ち上がって頭を下げる。

 いいよいいよ。というより気に入っちゃった。

 専属になってもらおう。


「是非専属契約をお願いします」

「私でよろしいんですか? 後悔しますよ?」

「しません。貴女にも後悔させません。お名前をお聞きしても?」

「ユナ様って意外と自信家なんですね。少し意外です。私はナタリー・ランベールと言います。これからよろしくお願いします」

「こちらこそよろしくお願いします。ナタリーさん」


 ぺこぺことお互いに頭を下げて握手を交わして本当に登録終了。

 最後にペンダントをナタリーさんから受け取る。

 細い銀のチェーンに雫型のトップがついたもの。

 今はそのトップはアイアンだけど、ランクを上げていくとこれがブロンズ、シルバーと変わっていくらしい。

 変えることができるのはこの町のハンターギルド・ギルドマスターか副マスター。

 魔法で変えるんだってさ。オーパーツだね このペンダント。

 早速首にぶら下げる。ナタリーさんが「よくお似合いです」なんてお世辞を言ってくれた。

 ありがとう。よし! 無理を言って専属になってくれたナタリーさんのためにもハンター活動頑張ろう。

*メートル(m) 1mは100cm 地球と同じです。

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