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ホラーコメディー

憑いてきた霊に逃げ出させる簡単な方法

作者: 燦々SUN

 ういっす、久しぶり。去年選択の授業で一緒になった時以来? かな?

 まあいいや、それで? 相談って?

 ……ああいや、別に俺はそっち関係に詳しいってわけじゃ……1年の頃色々と経験して、慣れてはいるけどな。まあ話してみろよ。


 ふんふん、あ~あそこの廃屋ね。俺も知ってるわ。行ったことはないけど。

 それで? じゃんけんに負けて。1人で行ってきたわけだ。

 んで、特に何事もなく戻ってきたら、外で待ってた友達に逃げられて。何かと思ったら、1人で行ったはずが帰って来たら2人になってたと。

 ああ~~完全に憑いてきちゃってんなぁ。いやいや、分かるよ? どうせあれだろ? それ以来、外食しようとしたら2人分お冷を用意されたり、注文の時に「お連れ様の分は……」とか言われるようになったんだろ? やっぱりな。


 おいおい、泣くなって。まあ友達にも離れていかれて心細かったんだろうけどさぁ。

 え? ああいや、そんな除霊みたいな大層なもんでもないんだけど……追い返すって言うか、逃げ出させる? うん、まあとりあえず、まずは俺の経験について話そうか。




 あれは俺が大学1年の頃。その日、俺は大学の友達2人と部屋でだべってた。

 本当は4人で集まって麻雀(マージャン)でもやろうって話だったんだが、1人急用で来られなくなってな。仕方なく、男3人で適当にだべってたんだ。

 そうしてたら友達の1人……相田あいだって奴なんだけど、そいつが近くの心霊スポットに肝試しに行こうって言い出してさ。

 正直暇を持て余してたこともあって、俺と、もう1人いた浜崎はまさきもそれに同意して、3人で心霊スポットに行ってきたんだ。


 その心霊スポット自体は、なんてことないトンネルでさ。そう、あそこのでっかいビル建設する時に掘られた、地下の歩行者用通路な。夜中にあそこを通ると、幽霊と遭遇するって噂があったんだよ。

 そんな訳で行ってみたら、まあ夜だったんで暗いし確かに不気味な雰囲気は漂ってたんだけど……別に特に何も起こることなく、向こうまで行ってまた帰って来た。幽霊どころか猫1匹いなかったわ。

 すっかり拍子抜けして、「何もなかったなぁ」とか「電灯の関係で影が幽霊っぽく見えただけじゃね?」みたいなことを話しながら部屋まで戻って来てさ。そこで気付いたんだ。あれ? なんか1人増えてないか? って。

 気付いたら、俺達は3人で行ったはずが4人になってたんだよ。


 不思議とその時は、「ああ、なんか1人憑いてきちゃったんだなぁ」ってことは分かっても、誰が増えてるのかは分からなかったんだ。

 3人で行ったことは覚えてるんだが、他の2人が誰でどんな顔してたかが曖昧で、自分以外の3人が全員、知ってる人のようなそうじゃないような変な感じでさ。

 どうしてもどれが霊? まあ仮に霊とするけど、それなのかが分からなかったからさ。俺言ったんだよ。


「んじゃまあ、とりあえず4人揃ったし、麻雀やるか」って。


 ……え? いや、だって仕方ないだろ? どうしたって見分けが付かなかったんだから。

 それで、麻雀やったら……え? うん、やったよ? マジでマジで。他の3人も賛成したし。

 そんで麻雀やったら南家の奴が1人負けしてさぁ。親が發と中ポンしてんのに、普通に白切るやつ初めて見たわ。いや、正直この時点でお察しって感じだったんだけどな。だって1人だけビックリするぐらい下手だったし。完全に振り込みマシーンと化してたし。絶対俺以外の2人も察してたと思うんだけど、正直いいカモだったから誰も指摘しなかったんだよなぁ。

 結局、半荘終わった時点で10万点くらい負けてたかな? で、ここからが問題なんだけど……そいつ、トイレ休憩挟んだらいつの間にかいなくなってた。まあ分かってたけど、やっぱり南家の奴が霊だったんだよなぁ。


 それから3人で、大負けこいて逃げるとは許せねぇってことでまたあのトンネルに行って……いや、だって次の日の昼食代賭けてたんだぜ? 負け逃げは許されないだろ。

 で、もう一回トンネルに行って戻ってきたんだけど、そしたら…………うん、なんかめっちゃ増えてた。12人くらいになってた。マジで。

 でも、例によってどれが霊なのか分からなかったから、俺言ったわけよ。


「まあとりあえず、こんだけいるなら人狼ゲームでもするか」って。


 ……うん、人狼ゲームやったよ? 人狼3、占い師1、霊媒師1、騎士1で。

 そしたらまさかの人狼側の完勝でさぁ。あっ、結局俺と相田と浜崎の3人が人狼だったんだけど。

 あいつら偽物の占い師に最初っから最後まで騙されてさぁ…… 村人側、1人も人狼見破れねぇでやんの。弱過ぎじゃね? そんで、「じゃあ負けた9人、明日の昼飯俺らの分奢りな」って言った瞬間、やっぱり全員いなくなってたし。 

 なんか釈然としなかったけど、その時点でもう結構いい時間だったからさぁ。仕方なく雑魚寝した。んで、普通に朝に解散した。




 でまあ、それからも遊びのメンツが足りない時は、ちょくちょくトンネルに行って頭数揃えてたよ。

 うん、色々やったよ? でも、あいつら人生ゲームやったら破産しまくるし、格ゲーやったらひたすら壁に向かって技出すし、ババ抜きやったら一度も俺らにババ回って来ないし……結局分かったのは、「霊はゲームがクソ弱い」ってことと、「何か賭けて負けたらすぐ逃げる」ってことだな。

 それが分かってからは、一緒にやっても張り合いがないってことで、霊を遊びに加えることはなくなったなぁ。

 ……とまあ、長々と話したけど、この経験を踏まえた上で俺がお前()に言えることは……


「とりあえず、ここの飲み代賭けてじゃんけんするか? 3人で」

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― 新着の感想 ―
なんでこのトンネル、そんなに幽霊がいるんだろう? たまり場? もしかしなくてもヤバい場所なんじゃ………。
[良い点] 面白かったです!! [気になる点] ちなみに飲み代賭けとかして霊の方が勝ったらどうなるんですかね…
[良い点] 楽しく拝読しました♪ 主人公の飄々とした語りが良いですね。 霊達が可愛いなぁと思いました。 最後も綺麗にまとまっていて面白かったです。 素敵な作品、有り難うございました!
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