表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
95/160

井戸

   95.井戸




 幼い頃、田舎のお婆ちゃんの家の裏山で、つくし採りをしていて、気が付いたら山奥に迷い込んだ事があった。


 鬱蒼とした山林の合間に少し開けた平地が見えて、私はとりあえずそこに向かった。その時はまだ自分が遭難しかけている事にも気が付かず、陽気にしていたと覚えている。


 そこには、朽ちて傾いた廃屋が一件と、古い井戸がぽっかりと口を開けていた。


 古い石造りの井戸に近付いて中を覗き混んでみると、深淵のような円形の暗闇が何処までも続いている。


 怖くなって顔を引っ込めてその場を離れかけると、微かに「たすけて」と聞こえてきた。


 凄く迷ったが、幼いながらに正義観の達者だったらしい私は、もしあそこに人が落ちてしまったのなら、誰かに教えてあげなくちゃ、と感じて怖いのを我慢しながらソロソロと井戸に近付いていった。


 拳を握りしめ、再び思いきって井戸の暗闇に顔を覗かせると。


 先程まで漆黒のように真っ暗だった井戸の奥に、真っ白い顔が見えた。


 そしてそれは不可解な事に、井戸の円形いっぱいの巨大な顔面で、遠く離れているのにすぐそこにある様に感じた。


 青白い巨大な顔面が、私に向かって大きな口を開けて


「アハハハハハハハ!!」


 と甲高い声を上げた。井戸の奥から無数に反響したその笑い声が恐ろしくて、私は一目散に山を駆け降りた。




 おじいちゃんに事情を話して、その井戸を捜してもらったが、それは二度とは見つからなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【実話怪談を収集しています。心霊、呪い、呪物、妖怪、宇宙人、神、伝承、因習、説明の付かない不思議な体験など、お心当たりある方は「X」のDMから「渦目のらりく」までお気軽にご連絡下さい】 *採用されたお話は物語としての体裁を整えてから投稿致します。怪談師としても活動しているので、YouTubeやイベントなどでもお話させて頂く事もあるかと思います。 どうにもならない呪物なども承ります。またその際は呪物に関するエピソードをお聞かせ下さい。 尚著作権等はこちらに帰属するものとして了承出来る方のみお問い合わせよろしくお願いします。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ