心霊映像
87.心霊映像
録画した心霊番組を友人と観ていた。
心霊映像に出てくるオーブはただの虫や埃にしか思えないし、不可解な声は周囲の物音のこじつけだと思う。それに写り込んだ霊の姿は合成だ。
くだらないと感じながらも友人と酒を飲みながらそんな番組を観ていると、廃病院を探索する若者たちの映像の途中で
「こっちにおいで」
と妙にハッキリと聞こえて俺は鼻で笑った。けれど、隣で胡座をかいた友人を見ると無反応で、テレビの中でもそのシーンをリプレイしたり、ギャラリーたちのリアクションがある訳でもなかった。
「ちょっと待てよ、変な声したよな」と笑いながら友人に語りかけると「は?」と怪訝な表情を返してきた。
「だからー」と言ってテーブルの上のリモコンを巻き戻して、例のシーンから再生した。
「いや、何処にそんな声入ってる? 怖がらせんなよ」
友人が言うように、俺の聞いた女の声はもう聞こえなかった。気のせいだと思おうとしたが、あの妙にハッキリとした声音が脳裏にへばりついたままだった。
なんと無く居心地の悪くなった俺は、立ち上がってトイレに向かった。
リビングを出て暗い廊下を進んでいくと、突き当たりにトイレが見える。
すると暗い廊下の先で、トイレの前で右に折れている廊下の先から――――
「こっちにおいで」
と先程のテレビの中から聞こえたのと同じ女の声が、すぐそこの廊下の曲がり角からハッキリと発せられた。
ビクリとして走ってリビングに引き返して友人に今の話しをすると、「もーわかったからー!」といって信用して貰えなかった。
しかし確かに聞こえたのだ、テレビの中でしたのと同じ声が。




