ポスター
82.ポスター
友人宅で三人とホームパーティーを開いたときに、スマートフォンで動画を幾つか撮影したのです。
女三人でシルクハットを被ったり鼻眼鏡をしたりしながらはしゃいでいる映像や、ケーキを出してきてみんなでろうそくを吹き消したりする映像があって、その映像の中では不可解な事はなかったのです。
けれど、どう考えても撮った覚えのないシーンから始まる。もう一つの映像が私のスマートフォンには記録されていたのです。
それは唐突に始まり、友人宅で談笑する私たちを撮影していた。ゆっくりと水平に移動していって正面の二人を映して、最後に私の後頭部が写り込んだ。
その映像は私の背後から撮影されたのです。そして三人しかいない室内で誰が私たち三人を映したのでしょう。
後日その映像に気が付いて、私は友人の一人にそれを見せた。すると、その友人がその映像を見ながら
「ここ! ここで止めて! 違うもう少し前!」と言うのです。
正面の友人二人を映しながら、カメラが左にスライドしていくその一瞬だけ、映像が線を入れた様に乱れるのですが、友人が止めてと言っているのはそのシーンでした。
談笑する二人。カメラが左にスライドしていって、映像が乱れる瞬間に私は映像を止めました。
私たちの談笑するテーブルから左の後方の壁に、幼い女の子の微笑するポスターがあるのですが、映像の乱れたその一瞬。口元で緩く笑んでいたはずのその幼い女の子の口元が、耳まで裂けたようになって、目も弧を描く様に弓形に細くなり、悪魔のような表情になっていたのです。
私がスマートフォンを投げ出しそうになると、友人は「次は……この辺り」と続けて映像を巻き戻した。
映像を制止すると次の瞬間、「キャアアアア!」と二人で絶叫した。
巻き戻した映像には、ここにはいない家主の方の友人の表情が、先程のポスターと同じように悪魔のような表情になっていたのです。
私たちは相談した結果、家主の方の友人にはこの話をしないことに決めた。引っ越したばかりのアパートで怖がらせてもいけないと思って。
けれど遂この間、その友人が私にポツリポツリとこんな話しを漏らすのです。
「あそこの部屋に誰かが居るの」
私は気のせいだと笑い飛ばして、深くは追及しなかった。友人の表情は今日も浮かないままだ。




