病棟夜勤
78.病棟夜勤
看護師の私が病棟で夜勤をしていた時にあった話です。
夜中の二時くらいに、患者さんの掛布団が汚染したので、一階のリネン室まで取りに行かなければならなくなったのです。
うちは精神科なので、夜間はどこの病棟も閉鎖されて出入り口の鍵が締まるので、一人静かな階段を一階まで降りていきました。
私は霊感だとかは無いのですが、一階のリネン室まで行くのはなんと無く嫌でした。何故ならリネン室の横は霊安室で、亡くなった患者などはそこの部屋に運び込まれるのです。
静まり返った暗闇を、私は進んでいきました。
ビクビクしながらもようやくリネン室まで辿り着くと、暗い廊下の電気をつけて掛布団を棚から下ろした。
掛布団を持って駆け足でリネン室を出て階段に向かうと、途中にあるエレベーターがチンと音をたてて振り返った。
原則スタッフはエレベーターの使用が出来ないし、病棟の出入り口は閉鎖されているのでおかしいと思ったのですが、エレベーターは一階に辿り着いて扉をあけました。
開いた扉からは、誰も乗っていない車椅子がひとりでにカラカラと音を鳴らして降りてきたのです。
私は絶叫して病棟に戻り、先輩看護師に今あったことを話した。
ひとしきり私の話しを聞くと先輩は「あぁ、武田さんだね」と言いました。
どういう事か聞いてみると、何年か前に夜間に閉鎖された病棟を抜け出した車椅子の武田さんが、エレベーターに乗って一階に降りた所で転倒して、その場で亡くなっていた事があったらしい。
それ以来夜勤をするスタッフの間で時折こういう話しがあるそうだ。
武田さんは自分が亡くなった事に気が付かずに、今でも車椅子でエレベーターを降りているのだとか。




