見知らぬお婆さんと少年
71.見知らぬお婆さんと少年
私には少し霊感があり、何か見えることや、金縛りにあう事がそれなりにあるんです。
今から話すのは、三日間もの間連続して遭遇した金縛りの事。
ある日の真夜中。ふと目が覚めると、独特の空気がピーンと張り詰める感じがしてきました。
私はいつものその感覚を感じながら、また金縛りにあうのか、と呑気に考えていたんです。
「……うっ」
仰向けになった自分の腹部の辺りに、何か重みを感じて思わず目を開けた。
「…………」
「…………」
仰向けに眠る私の顔を覗き混む様にして、右側に見知らぬお婆さん。左側に小学校低学年位の少年が正座していました。
目を閉じる事も叶わずただそれを眺めていると、二人はとても悲しそうな表情でもって、私のお腹をグイグイと押していた。
この人たちは何が伝えたいのだろうと冷静に思案していると、お婆さんと少年の後方から、フラフラとした足取りで小肥りの中年男性が近付いて来ていた。
そこで私は金縛りから解放され、先程まで見えていた物も消え去ってしまった。
一体何だったのだろうと思いながらも、あまり気にすることもなく私は眠りにつきました。
しかし翌日、翌々日と真夜中に目が覚めて同じ金縛りにあうのです。
翌朝、何だかむしゃくしゃした様な気持ちで目覚めると、習慣のようにテレビを点けた。
テレビの奥のニュース番組で、祖母とその孫の少年が何者かに殺されたという事件の犯人が捕まったとの報道をしていた。
私は昨晩のことを思い出して、身を乗り出してテレビを覗き込んだ。
「……えっ!」
頭にフードを被った加害者の男は、私が金縛りにあっている時にお婆さんと少年の後方から歩いてくる男そのままだった。
以後、同じような金縛りにあうことは無くなった。
あのお婆さんと少年は、私に犯人の事を知らせようとしたのだろうか……。
しかし、何故見ず知らずの私の元を訪れたのかが、今でもわからない。




