密入国者
67.密入国者
とても霊感の強い友人から聞いた話しなんです。
その友人――佳代はある長期連休中に、何を思い立ったか一人でフランスへ二泊三日の旅行に出掛けました。
一人での海外旅行に四苦八苦しながらも、悠々自適に楽しんだそうです。
最終日、名残惜しい気持ちで空港に向かって歩いている時でした。突然に寒気が佳代を襲い、そして通り過ぎて行ったそうです。
何か嫌な物を感じとった佳代は、急ぎ足で空港に向かいました。
しかし何処か妙な感じが続いたそうです。誰かに見られているというかつけられているかの様な嫌な感じが。
空港に着いた佳代は、さっさと手続きを済ませてトランクケースを預けて飛行機に乗りました。
荷物を預けてからは妙な感覚は消え去って、あの変な感覚は忘れて楽しかったフランス旅行に思いを馳せていました。
仮眠をとって、やがて日本に到着した。飛行機から降りて自分のトランクケースを受け取ると、またもやあの感覚がやって来たのです。
まさかこのトランクケースに何かあるの?
そう思った佳代は、その場でトランクケースを開いて中を垣間見たのです。
「キャアッ!」
大きな声を出して、周りの視線を集めてしまった佳代は、顔を赤くして会釈をすると、足早にその場を立ち去りました。
トランクケースを開くと、その中に鼻筋の高く目のぱっちりとした禿げたフランス風の男が、すっぽりと中に収まっていたようで、トランクケースを開くとフワーと飛び去っていったのだとか。
私はその話しを聞くと、密入国者だと言って笑ったのですが、佳代は「笑い事じゃない! 本当怖かったんだから!」と怒っていました。




