白いもや
66.白いもや
ある日の深夜に、俺たちはとある深夜トンネルに出向いた事があった。
そこは峠道の先の山の上にあるトンネルで、街灯もない道を車で進んでいた。
六人だったので二台に別れて行動する事になって、俺は前の車の助手席に乗っていた。
程無くするといびつな形のトンネルが現れた。俺たちは車の中でわいわいと騒ぎながらトンネルに入っていった。
五分もすると別に何事もなくトンネルの反対側に抜け出した。
何だか盛り下がった感じでそのまま一本道を下っていった。
しかししばらくすると、後続車に乗った友人から電話があった。俺がそれに応じると後ろの友人が随分と慌てた様子で
「ちょ! 停まれ! 停まれって何か居る!」
というのです。どういう事か聞きながら運転席の友人を見ると、眠いのかボーっとしていました。
「上! 車の上に何か居るんだって! 白いもやみたいなのがお前たちの車の上に乗っかってるんだよ!」
急に恐ろしくなった俺は運転席の友人に事情を話した。
「何か車の上に居るらしいで停めろ!」
「……えっ?」
すると運転席の友人はハッとした様に瞬いてブレーキを踏みました。そのあまりの急ブレーキにシートベルトが胸に深く食い込んだ。
「ごめん……なんか、あれ?」
慌てた様子の運転席の友人を横目に、急ブレーキをして停車した先を垣間見ると、かなり激しいヘアピンカーブになっていた事に気が付きました。
時速は優に七十キロは出ていたので、あのまま行けば曲がりきれなかった事は明白でした。
「ごめん……その、トンネル抜けてからの記憶が全然無いんだけど、俺何してた?」
運転席の友人がキョトンとしてそんな事を話していた。
後続についていた友人に聞くと、トンネルを抜けてから俺たちの車に白いもやがずっとかかっていたらしい。おかしいなとは思いながらも見ていると、全く減速せずに峠道に入っていくものだから慌てて電話をした、との事でした。
ちなみに白いもやは車が停車すると同時にスッといなくなったそうです。
ここは以前から事故の多発する場所らしいのですが、その原因はこの急過ぎるカーブのせいだけでは無いんじゃないかと思いました。




