図太い友人と霊道
61.図太い友人と霊道
霊道をご存知でしょうか?
書いた通り霊の通る道。
合わせ鏡をしているとそこに霊道を作ってしまうなどと良く言われます。
これは大学時代に独り暮らしの友人の家に泊まった時の話しです。
サークルの飲み会が終わると、私は千鳥足で友人のアパートに上がり込んだ。
ワンルームの室内に姿鏡があり、それと向かい合う形で机の上の鏡があった。
合わせ鏡だと直ぐに気付いた私でしたが、その時は特に気にしませんでした。合わせ鏡をしているとそこに霊道を作ってしまうと知ったのは、この話しの後でしたし。
友人と順番にシャワーを浴びると、私たちはさっさと寝ることにした。
友人はベッドで、私はその下に布団を敷いて。
丁度私の頭の上と足元で合わせ鏡になっていた。
いよいよ寝ようと部屋の電気を消すと友人が一言呟いた。
「時々うるさい事があるの」
「ん?」
「まぁいいわ、私は気にしないようにしてる。おやすみ」
「ちょっと待ってよ何それ」
「……」
意味不明な言葉を残して、友人は目を瞑った。私も相当に眠気があったので、直ぐに眠りに落ちた。
……ガヤガヤ……ザワザワ……
遠くから何やら人の騒ぐような音がして、私は真夜中に目を覚ました。
なんだと思い耳を澄ましていると、次第にその音は大きくなって。
――――ザワザワザワザワ!!
と私の上を凄いスピードで何かが通過していった。
突然の喧騒に咄嗟に身を起こしすと、私の足元の姿鏡が目の前にあった。
そしてそこに、鏡の前を横切っていく長髪の白装束の女が横切っていった。
「うわぁ!」
声を挙げると友人が目を覚ました。
「なに?」
「お、女の人が鏡の前を……っ」
「また通った?」
「え? またって」
「なんかうちに霊道? 的なのあるらしくて、良く通るの。気にしてないけど」
「わ……私は気にするけど……」
「……。うん、おやすみ」
「ちょっとぉ!」
次の日友人の話しを聞くと、この家に越してきてからそんな事は日常茶飯事らしかった。月に何度かは渋谷のスクランブル交差点の真ん中で寝ている様な錯覚に陥る様な激しいものもあるらしかった。
どうしてこんなアパート出ないの? と聞くと
「訳有り物件て家賃安いのよ」と言っていた。
つまり、こんな現象が起こると知りながら契約したらしい。
私は当然、二度とその友人の家に泊まる事は無かった。




