大笑いする人
59.大笑いする人
仕事帰りに電車に乗り込むと、同じ車両に変な奴がいた。
帰宅ラッシュで込み合う車両の中で
「ワーーッハッハッハワーーハハハ!」
と激しく笑い続けている奴が居る。始めは学生かなにかだと思ったが、シンとした車両で男は延々と同じように笑っていた。
車両は込み合っていてどんな奴かはわからない。俺の他にその声が気になる奴はいないのか、俺の周りの乗客たちは皆うつ向いたままだった。
時折電車に変な奴が居るのはよくあることなので、俺は気にせずそのまま電車に乗り続けた。
二駅、三駅先にいっても、男は疲れを知らぬ様に笑い続けていた。聞いているこっちが疲れてしまう位だった。
次第に乗客が減ってきたので座席に座ると、俺は疲れに任せて眠る事にした。
「アーーーッハハハ! アーーーハハハ!」
けたたましい笑い声も気にせずに俺は眠った。
次に気が付くと、
「アハアハアハ! アーーーッ!」
とまだ笑い声が聞こえた。俺と同じ終電までの乗客かと思い車両を見渡すと、俺の他には誰もいなかった。
ゾッとすると電車がトンネルに入った。蒼白として正面を見直すと、暗いトンネルの中なので窓から自分の姿が反射して見えた。
俺の隣の座席には白装束を着た髪の長い女が座っていた。
破裂しそうな程に顔を紅潮させて、隣の俺に向かって大きな口を開けていたのだ。




